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[1]高砂・飛遊午
ー12ー:君たちの声が大き過ぎてね。ついつい耳に入っちゃたのさ
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「生きてますか?センパイ」
ベルタに対峙したままミツナリが訊ねてきた。「どういうつもりだ?」
「何です?」一旦ソネをキャサリンの元まで後退させた。
長い睫毛に覆われたソネの目は、ミツナリ同様に思惑が掴めない。
「テメェ、今頃ノコノコやって来やがって、どういうつもりだって訊いているんだよッ!?」
骸骨フェイスのキャサリンがソネを睨み付ける。
しばしの沈黙を置いてミツナリが口を開いた。
「その台詞、そっくりそのまま先輩にお返ししますよ」
「あぁ!?」怪訝な声。
「何故、能力も解らない相手の前に姿を晒しているんです?空防機という“噛ませ”をぶつけて相手の能力を探れば良いものを、自ら空防機を追い払った挙句ベルタにとっ捕まるなんてヘマをやらかしておいて。折角助けてあげたんだから、礼の1つくらい言ってくれても良いじゃありませんか」
事実助けられてはいるが、それでも感情はなおも沸き立つ。
キャサリンの馬上槍を握る手に力が込められた。長柄を握り潰さんとするほどの力が。
「テメェ・・。空防の連中を“噛ませ”と言いやがったな。俺も、その“噛ませ犬”の頭数に入れていたんだろ!俺をダシに使いやがって」
「そんなぁ。先輩をダシに使うなんて。言い掛かりですよぉ。まっ、結果的に“そうなっちゃった”事実は認めちゃいますがね。おかげでベルタのデータも取れましたし、ヤツの唯一の火器も潰す事が出来て結果オーライではありませんかね。この状況」
悪びれもすることなくミツナリは堂々と言い切って見せた。
それは手柄を取った者が正義だと言わんばかりに。
負けられない!ミツナリにも、ベルタのマスターにも。
ベルタに目線を戻す。
「!?」
何と、ベルタが両腕に付けていたサバイバルナイフを手に、こちらに構えて見せているではないか!
「アイツ、もうヤケクソになってますね。あれで向かってくる気なんでしょうか?」
ミツナリは余裕を見せている。
そんな彼を目の当たりにしてヒデヨシの闘志に火が付いた。
(コイツにだけは絶対負けられねぇ!)
ベルタとの同調を確認し終えた高砂・飛遊午は、ツメと呼ばれるサバイバルナイフを構えて静かに「参る」と告げ―。
「なあ、ベルタはん」
これからという時にルーティがベルタに声を掛けてきた。
「ウチ、一日に一回だけやけど、口から火の玉吐けるんです。このチカラ、今使えませんやろか?」
突然の申し出にヒューゴは言葉を失った。
(コイツ・・何ちゅう恐ろしい能力を持っているんだ?)
「ルーティ、残念ながらそれは君の固有の身体的能力であって今の私の体では再現できない。魔力を用いた能力ならば再現できたのだが」
「そうですか・・」落胆して大人しく引き下がった。
彼女のそんな姿を見ていると気分が沈む…。
いや、ここは是非とも上げていきたい。
「ベルタさん、俺からも質問が」
「聞こう」
「この戦い、勝利条件は相手を完全破壊する事だけなのですか?相手を殺さずに倒す方法はありませんか?」
思いもしなかったヒューゴの問いに、ルーティは「ハッ」と顔を上げて。
「相手を殺さんで勝つ方法やて?」
「では、私から勝利条件を説明致します」
ココミがコホンッと咳払いひとつして説明を始めた。
「テイクスを仕掛けた騎体が、仕掛けた相手の騎体から500km以上距離を開くと“撤退”と見なされてアンデスィデは終了。チェスの駒は動かなかった事になります。棋譜では動いたと表記されますが、赤色で元の場所が記入されます」
「あのね、ココミちゃん。私たち駒を取られた側なんだけど」
クレハの言葉に頷くとココミは続けた。
「ええ、解っています。つまりは、攻撃を受けた私たち白側には撤退は許されていません。これがルールなのです。で―。」
「だけど、ベルタのマスターの質問は“相手を殺さずに決着をつけられるか?”だよね?」
“ですが”と次に繋げる前にライクが話に割って入ってきた。
「あなた!私たちの通信に聞き耳を立てていたのね!?」
クレハが問い詰めるも、ライクはしれっとしたまま。
「距離が近いし、君たちの声が大き過ぎてね。ついつい耳に入っちゃたのさ」
向き直ると、ライクがココミに代わってルール説明を始めた。
「盤上戦騎同士の戦いは必ずしも相手を完膚無きまで叩き潰す必要は無い!つまりは相手に総ダメージの60%以上を与えてやればいいのさ。戦闘不能状態に陥らせること。ただし!それは容易な事ではないよ~」
高揚を隠せないルール説明に、ソネのマスター、ミツナリも乗ってきた。
「まっ、そういう事だ。やれるものならやってみ―!?」
“やってみな”と言い切って見せる前に、彼の眼は大きく見開かれた!
ベルタに対峙したままミツナリが訊ねてきた。「どういうつもりだ?」
「何です?」一旦ソネをキャサリンの元まで後退させた。
長い睫毛に覆われたソネの目は、ミツナリ同様に思惑が掴めない。
「テメェ、今頃ノコノコやって来やがって、どういうつもりだって訊いているんだよッ!?」
骸骨フェイスのキャサリンがソネを睨み付ける。
しばしの沈黙を置いてミツナリが口を開いた。
「その台詞、そっくりそのまま先輩にお返ししますよ」
「あぁ!?」怪訝な声。
「何故、能力も解らない相手の前に姿を晒しているんです?空防機という“噛ませ”をぶつけて相手の能力を探れば良いものを、自ら空防機を追い払った挙句ベルタにとっ捕まるなんてヘマをやらかしておいて。折角助けてあげたんだから、礼の1つくらい言ってくれても良いじゃありませんか」
事実助けられてはいるが、それでも感情はなおも沸き立つ。
キャサリンの馬上槍を握る手に力が込められた。長柄を握り潰さんとするほどの力が。
「テメェ・・。空防の連中を“噛ませ”と言いやがったな。俺も、その“噛ませ犬”の頭数に入れていたんだろ!俺をダシに使いやがって」
「そんなぁ。先輩をダシに使うなんて。言い掛かりですよぉ。まっ、結果的に“そうなっちゃった”事実は認めちゃいますがね。おかげでベルタのデータも取れましたし、ヤツの唯一の火器も潰す事が出来て結果オーライではありませんかね。この状況」
悪びれもすることなくミツナリは堂々と言い切って見せた。
それは手柄を取った者が正義だと言わんばかりに。
負けられない!ミツナリにも、ベルタのマスターにも。
ベルタに目線を戻す。
「!?」
何と、ベルタが両腕に付けていたサバイバルナイフを手に、こちらに構えて見せているではないか!
「アイツ、もうヤケクソになってますね。あれで向かってくる気なんでしょうか?」
ミツナリは余裕を見せている。
そんな彼を目の当たりにしてヒデヨシの闘志に火が付いた。
(コイツにだけは絶対負けられねぇ!)
ベルタとの同調を確認し終えた高砂・飛遊午は、ツメと呼ばれるサバイバルナイフを構えて静かに「参る」と告げ―。
「なあ、ベルタはん」
これからという時にルーティがベルタに声を掛けてきた。
「ウチ、一日に一回だけやけど、口から火の玉吐けるんです。このチカラ、今使えませんやろか?」
突然の申し出にヒューゴは言葉を失った。
(コイツ・・何ちゅう恐ろしい能力を持っているんだ?)
「ルーティ、残念ながらそれは君の固有の身体的能力であって今の私の体では再現できない。魔力を用いた能力ならば再現できたのだが」
「そうですか・・」落胆して大人しく引き下がった。
彼女のそんな姿を見ていると気分が沈む…。
いや、ここは是非とも上げていきたい。
「ベルタさん、俺からも質問が」
「聞こう」
「この戦い、勝利条件は相手を完全破壊する事だけなのですか?相手を殺さずに倒す方法はありませんか?」
思いもしなかったヒューゴの問いに、ルーティは「ハッ」と顔を上げて。
「相手を殺さんで勝つ方法やて?」
「では、私から勝利条件を説明致します」
ココミがコホンッと咳払いひとつして説明を始めた。
「テイクスを仕掛けた騎体が、仕掛けた相手の騎体から500km以上距離を開くと“撤退”と見なされてアンデスィデは終了。チェスの駒は動かなかった事になります。棋譜では動いたと表記されますが、赤色で元の場所が記入されます」
「あのね、ココミちゃん。私たち駒を取られた側なんだけど」
クレハの言葉に頷くとココミは続けた。
「ええ、解っています。つまりは、攻撃を受けた私たち白側には撤退は許されていません。これがルールなのです。で―。」
「だけど、ベルタのマスターの質問は“相手を殺さずに決着をつけられるか?”だよね?」
“ですが”と次に繋げる前にライクが話に割って入ってきた。
「あなた!私たちの通信に聞き耳を立てていたのね!?」
クレハが問い詰めるも、ライクはしれっとしたまま。
「距離が近いし、君たちの声が大き過ぎてね。ついつい耳に入っちゃたのさ」
向き直ると、ライクがココミに代わってルール説明を始めた。
「盤上戦騎同士の戦いは必ずしも相手を完膚無きまで叩き潰す必要は無い!つまりは相手に総ダメージの60%以上を与えてやればいいのさ。戦闘不能状態に陥らせること。ただし!それは容易な事ではないよ~」
高揚を隠せないルール説明に、ソネのマスター、ミツナリも乗ってきた。
「まっ、そういう事だ。やれるものならやってみ―!?」
“やってみな”と言い切って見せる前に、彼の眼は大きく見開かれた!
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