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元々勇者なんて器ではないのだ。
虫がいれば驚くし、戦いたくなんてないし、どんどん鍛え上げられ筋骨隆々になっていく身体を見て涙を流してきた。小柄で細くて可愛い、そんな女性像に強い憧れを抱いていたのにドンドンと離れて行ってしまう。
「筋トレを継続できるなんてすごいなぁ……。アンドレアなら絶対大丈夫だね」
そう屈託のない笑顔で言われると、嫌味ではないと分かっていてもどうしても傷ついてしまう。
だって、それは自分の目指す先と対極の評価だからだ。
(なんでも願いを叶えてくれるって言ったって、私の身長が縮ませることだって、細身にさせることだって、女性に変えることだって不可能なのに……。馬鹿みたい)
ただ一つの身体の特徴だけで『勇者の生まれ代わりだ!』なんて祭り上げられて、ちょっとしたことで持ち上げられたり、少しの失敗で叩かれたり。もう懲り懲りだ。
「話があります」
一度感情の堰が切れてしまうとどうにも止められなかった。王への自室へと自ら出向いて話を付けに行く。
といっても、勿論『勇者として生きるのは辞めます』なんてことを言い出しはしない。
「どうしたのだ、アンドレア。何か不自由でもあったか?」
王としてはこの国に出来るだけ被害を出さずに魔王を倒したい。だからこそ最小限の英雄のパーティーを組んで魔王を討伐させたい。だからこそアンドレアを大事に囲うし、彼に害をなすものは場内から排除してきた。
そんなことはアンドレアにも分かっている。なんなら、王子たちより過剰に箱入りさせられていたとさえ思う。
「いえ。……明日、城を立ち雪の森の偵察に向かおうかと考えています。王城の手前まで行き、帰ってきます。もし半年経っても戻らなかった場合は死んだと思ってください」
ここ『ジャステック』の最南端に王城は存在している。魔王城が立っているのは、最北の『雪の森』を抜けた先。南北でかなり離れている。
その為、雪の森の手前にある『ノースト』の街に行くだけでも1ヶ月はかかるのだ。雪の森はそもそも突破事例が少ないが、半年かかったという話や1年はかかったという話もある。
「しかし、まだ他のメンバーを選出できていない」
「いえ、被害は最小限の方がいいでしょう。私だけで向かいます。その代わり、何か目印になるような石か何かを用意してください。それを定期的に置き、目印になるようにします」
王は納得していないようだ。
要は行ってしまえば自殺行為だ。凶悪な魔物たちも住んでいる。過去に100人単位で兵士を派遣したことがあるようだが、帰って来たのは数人だけ。しかも途中で帰ってきてしまい碌なデータもない。
「ここで私が雪の森を突破し帰ってくることができれば、得られる情報だって多いはずです。お願いします、国王」
そう言い深々と頭を下げれば、国王は渋い顔で首を縦に振った。
虫がいれば驚くし、戦いたくなんてないし、どんどん鍛え上げられ筋骨隆々になっていく身体を見て涙を流してきた。小柄で細くて可愛い、そんな女性像に強い憧れを抱いていたのにドンドンと離れて行ってしまう。
「筋トレを継続できるなんてすごいなぁ……。アンドレアなら絶対大丈夫だね」
そう屈託のない笑顔で言われると、嫌味ではないと分かっていてもどうしても傷ついてしまう。
だって、それは自分の目指す先と対極の評価だからだ。
(なんでも願いを叶えてくれるって言ったって、私の身長が縮ませることだって、細身にさせることだって、女性に変えることだって不可能なのに……。馬鹿みたい)
ただ一つの身体の特徴だけで『勇者の生まれ代わりだ!』なんて祭り上げられて、ちょっとしたことで持ち上げられたり、少しの失敗で叩かれたり。もう懲り懲りだ。
「話があります」
一度感情の堰が切れてしまうとどうにも止められなかった。王への自室へと自ら出向いて話を付けに行く。
といっても、勿論『勇者として生きるのは辞めます』なんてことを言い出しはしない。
「どうしたのだ、アンドレア。何か不自由でもあったか?」
王としてはこの国に出来るだけ被害を出さずに魔王を倒したい。だからこそ最小限の英雄のパーティーを組んで魔王を討伐させたい。だからこそアンドレアを大事に囲うし、彼に害をなすものは場内から排除してきた。
そんなことはアンドレアにも分かっている。なんなら、王子たちより過剰に箱入りさせられていたとさえ思う。
「いえ。……明日、城を立ち雪の森の偵察に向かおうかと考えています。王城の手前まで行き、帰ってきます。もし半年経っても戻らなかった場合は死んだと思ってください」
ここ『ジャステック』の最南端に王城は存在している。魔王城が立っているのは、最北の『雪の森』を抜けた先。南北でかなり離れている。
その為、雪の森の手前にある『ノースト』の街に行くだけでも1ヶ月はかかるのだ。雪の森はそもそも突破事例が少ないが、半年かかったという話や1年はかかったという話もある。
「しかし、まだ他のメンバーを選出できていない」
「いえ、被害は最小限の方がいいでしょう。私だけで向かいます。その代わり、何か目印になるような石か何かを用意してください。それを定期的に置き、目印になるようにします」
王は納得していないようだ。
要は行ってしまえば自殺行為だ。凶悪な魔物たちも住んでいる。過去に100人単位で兵士を派遣したことがあるようだが、帰って来たのは数人だけ。しかも途中で帰ってきてしまい碌なデータもない。
「ここで私が雪の森を突破し帰ってくることができれば、得られる情報だって多いはずです。お願いします、国王」
そう言い深々と頭を下げれば、国王は渋い顔で首を縦に振った。
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