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【神アカシ篇】(1項目)
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昼休み。
「何してるの?」
ため息まじりに僕が言う。
若頭が学園の至る所にお札を貼りまくっていた。
「見て解らぬのか?
主は本当に阿呆ゾヨな! 結界を張っておるゾヨ!」
そのせいで風紀委員にめちゃくちゃ迷惑がられている。
「今回は何のスクープも撮れまへんでしたのぅ」
気がつくと後ろに、報道部部長が立っていた。
パソコン部部長が傍にいないことに少し安堵した。
「ごめんね。夜の校舎で張り込みまでさせてたのに」
もしかしたら、また何か有力な情報が得られるかと待機してもらっていたけど、何の成果も得られなかった。
「かまわんけん。
それよりでんが、あれから風紀委員の奴らが、変な文句つけに来なくなりましてな。
カイチョさんのお蔭でっせ! ありがとさん!」
「はは。まあ、僕の言うことには風紀委員も逆らえないからね」
「ゴッドファーザーよ!
女とイチャついてる暇があったら、とっとと作業を終わらせぬか!」
若頭がお札を貼りながら睨みをきかせていた。
「別にイチャついてなんかないよ」
「主の幼なじみの風紀委員のあの女に、言いつけてやってもよいゾ!」
「はあ!? なんでここでアリスが出て来るの!?」
僕はピーンと感を働かせる。
「ははん……。
若頭ってば、僕のことが羨ましいのか。
自分は会話できる女子が一人もいないもんねぇ」
若頭は更に怒った形相でギャーギャーと絡んできた。
僕と若頭は顔を異常に近づけた状態で口論となっていた。
――カシャ!
「スクープは撮れんかったけど、
代わりに、エエ生写真ゲットでっせ~♪」
報道部部長がこちらに向かってカメラのシャッターを切った。
「えっ? 生写真て、僕たちの?」
「おふたりの写真は飛ぶように売れるんでっせ♪」
「なんて迷惑な……。今すぐ削除するゾヨ!」
売れる? 僕たちの写真が? いつの間に……。
「生写真?なら一人ずつ写ってたほうがいいんじゃないの?」
若頭は純日本人なのに、亜麻色の長い髪をしていて顔もかなりの美形だ。
だから僕は必要ないと思うんだけど。
「これはこれで、とてもエエんでっせ♪」
まったくよく解らない。
「ほにゃらば、エエものも撮れたし、あたしはこの辺でおいとま~♪」
はっ、速い……。
笑いながら、一瞬にして走り去る報道部部長。
……仕方がない。
僕と若頭は、夜の魔術師を捕まえるべく罠を張ることにした。
もちろん今度は、学園内に生徒も教職員も誰一人残っていない状態とする。僕と若頭のふたりだけだ。
僕は細い糸を張る。
普通の人間には、見えなくて触れることもできない。
退魔用の特別製だ。
若頭は相変わらずあの少年を悪霊だと言うが、僕にはもっとタチの悪いものに思えた。
ただの人間でないことは確かだろうけど。
それに――。
【お兄ちゃん】……。
あの言葉が胸に引っかかる。
単純に、僕が年上のお兄さんだからそう呼んだのか。
それとも――。
僕をお兄ちゃんと呼ぶのは修道院にいる弟と妹たちだけだ。
もちろん、あんな少年が修道院にいるはずもない。
窓の外を眺めて思った。
たしか、今日は満月だったな。
……そして、しばらくして夜のとばりが落ちた。
静寂を破って、リンと学園内に音が響いた。
見えない糸に鈴を付けて学園中に張り巡らせておいた。
それに掛かった、夜の魔術師が侵入してきた合図だ。
さらに一度入ったら出られないように強力な結界を張ってある。
姿は見えないが、僕と若頭はチリンチリンと音のするほうを追っていく。
音は上へ上へと向かっている。
どうやら、むこうも罠に気が付いて逃げ回っているようだ。
このまま進んでも、もう……そこに逃げ場なんて無いのに。
僕たちは、立ち入り禁止の紐を切って、屋上へと続く扉を開いた。
そこに、立ち尽くす少年の姿があった。
仮面の下からでも分かるほど、ギョロリとこちらに目を向ける。
不気味なほど巨大な満月に照らされて、暗闇の中で碧光りするように、ぼんやりと浮かび上がっていた。
……ついに、夜の魔術師を追い詰めたのだ……。
「何してるの?」
ため息まじりに僕が言う。
若頭が学園の至る所にお札を貼りまくっていた。
「見て解らぬのか?
主は本当に阿呆ゾヨな! 結界を張っておるゾヨ!」
そのせいで風紀委員にめちゃくちゃ迷惑がられている。
「今回は何のスクープも撮れまへんでしたのぅ」
気がつくと後ろに、報道部部長が立っていた。
パソコン部部長が傍にいないことに少し安堵した。
「ごめんね。夜の校舎で張り込みまでさせてたのに」
もしかしたら、また何か有力な情報が得られるかと待機してもらっていたけど、何の成果も得られなかった。
「かまわんけん。
それよりでんが、あれから風紀委員の奴らが、変な文句つけに来なくなりましてな。
カイチョさんのお蔭でっせ! ありがとさん!」
「はは。まあ、僕の言うことには風紀委員も逆らえないからね」
「ゴッドファーザーよ!
女とイチャついてる暇があったら、とっとと作業を終わらせぬか!」
若頭がお札を貼りながら睨みをきかせていた。
「別にイチャついてなんかないよ」
「主の幼なじみの風紀委員のあの女に、言いつけてやってもよいゾ!」
「はあ!? なんでここでアリスが出て来るの!?」
僕はピーンと感を働かせる。
「ははん……。
若頭ってば、僕のことが羨ましいのか。
自分は会話できる女子が一人もいないもんねぇ」
若頭は更に怒った形相でギャーギャーと絡んできた。
僕と若頭は顔を異常に近づけた状態で口論となっていた。
――カシャ!
「スクープは撮れんかったけど、
代わりに、エエ生写真ゲットでっせ~♪」
報道部部長がこちらに向かってカメラのシャッターを切った。
「えっ? 生写真て、僕たちの?」
「おふたりの写真は飛ぶように売れるんでっせ♪」
「なんて迷惑な……。今すぐ削除するゾヨ!」
売れる? 僕たちの写真が? いつの間に……。
「生写真?なら一人ずつ写ってたほうがいいんじゃないの?」
若頭は純日本人なのに、亜麻色の長い髪をしていて顔もかなりの美形だ。
だから僕は必要ないと思うんだけど。
「これはこれで、とてもエエんでっせ♪」
まったくよく解らない。
「ほにゃらば、エエものも撮れたし、あたしはこの辺でおいとま~♪」
はっ、速い……。
笑いながら、一瞬にして走り去る報道部部長。
……仕方がない。
僕と若頭は、夜の魔術師を捕まえるべく罠を張ることにした。
もちろん今度は、学園内に生徒も教職員も誰一人残っていない状態とする。僕と若頭のふたりだけだ。
僕は細い糸を張る。
普通の人間には、見えなくて触れることもできない。
退魔用の特別製だ。
若頭は相変わらずあの少年を悪霊だと言うが、僕にはもっとタチの悪いものに思えた。
ただの人間でないことは確かだろうけど。
それに――。
【お兄ちゃん】……。
あの言葉が胸に引っかかる。
単純に、僕が年上のお兄さんだからそう呼んだのか。
それとも――。
僕をお兄ちゃんと呼ぶのは修道院にいる弟と妹たちだけだ。
もちろん、あんな少年が修道院にいるはずもない。
窓の外を眺めて思った。
たしか、今日は満月だったな。
……そして、しばらくして夜のとばりが落ちた。
静寂を破って、リンと学園内に音が響いた。
見えない糸に鈴を付けて学園中に張り巡らせておいた。
それに掛かった、夜の魔術師が侵入してきた合図だ。
さらに一度入ったら出られないように強力な結界を張ってある。
姿は見えないが、僕と若頭はチリンチリンと音のするほうを追っていく。
音は上へ上へと向かっている。
どうやら、むこうも罠に気が付いて逃げ回っているようだ。
このまま進んでも、もう……そこに逃げ場なんて無いのに。
僕たちは、立ち入り禁止の紐を切って、屋上へと続く扉を開いた。
そこに、立ち尽くす少年の姿があった。
仮面の下からでも分かるほど、ギョロリとこちらに目を向ける。
不気味なほど巨大な満月に照らされて、暗闇の中で碧光りするように、ぼんやりと浮かび上がっていた。
……ついに、夜の魔術師を追い詰めたのだ……。
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