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【神アカシ篇】(1項目)
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もしも、どんな願いでもたったひとつだけ叶えられるとしたら、貴方は何を望みますか?
それとも何も祈りませんか?
◆◆◆◆◆◆
「トキワちゃーん! 早く起きないと遅刻しちゃうよー?」
部屋のドアをノックする音。
僕、【輝神時翔】(カガミ・トキワ)はいつものように幼馴染の【白鐘亜梨子】(しろがね・アリス)の声で起こされた。
「……大丈夫だよ、まだ目覚まし鳴ってないし。
昨日遅くまでバイトして、徹夜もしたから……。眠い……」
「目覚まし鳴ってないって、何時にセットしたの? もうけっこうかなりヤバイ時間だよ?」
「――え?」
眼鏡をかけてから、目覚まし時計をわしづかむ。すでにアラームは止められていた。
飛び起きると、歴代の記録を塗り替える速さで身支度を整えた。
僕は幼い頃に両親を亡くして、ムーンチャイルドと呼ばれる修道院で暮らしている。
礼拝堂に出ると他の子たちはもう学園へ行ってしまっていた。
「トキワちゃん、髪の毛寝ぐせついてる!
スカーフもぐちゃぐちゃ! ちょっとこっち向いてっ」
アリスの家はここからすぐ近所にある。
幼稚園児の頃からずっと一緒にすごしてきた。
実のところ小さい頃は気が弱くて泣き虫で、
恥ずかしながらイジメられているのをよくアリスに守ってもらっていた。
そのせいか今でも頭が上がらない。
「べつに毎日起こしに来なくてもいいのに……」
「だって毎日起こしに来ないと毎日遅刻するでしょ!
トキワちゃんにはボクがついてないとダメなんだからっ」
アリスは女の子なのに自分のことをボクと言う。
正義感が強くて、学園では風紀委員に所属している。
けど、頭に付けたでっかいリボンと白黒ボーダーのニーソックスは絶対に規則違反だと思う。
なのに人懐っこい性格だからか、学園公認で許されている。
なんでなのか全然わからない。
あと昔からの癖なのか、何かと僕の世話を焼きたがる。
「わかってるの? トキワちゃんはあの学園の希望の星なんだよ!」
「大丈夫だよ。 学園ではそれなりの対応してるから」
「そういうことじゃなくって……」
アリスを無視して進む、廊下でシスターと擦れ違った。
手に二人分の食事を持っている。
「シスター、それって……」
「ええ、ミュウちゃん部屋にいなかったから、またナイトくんのところだと思うの。
朝ご飯、持って行ってあげようと思いまして」
僕は地下室へと続く階段へ視線を送った。
「シスター、僕が留守の間はあのふたりのこと、よろしくお願いしますね」
シスターは優しく微笑んでうなずいた。
「行ってらっしゃいませ」
「トキワちゃーん! 待ってよお……。
いくらボクが女子の中で足が速いっていっても、トキワちゃんには敵わないよう……」
「しょうがないなぁ」
「えっ? ひゃああっ!」
アリスの手を引いて、僕は桜並木の道を走っていく。
高等部、三年目の春。
そっと自分の胸元に指で触れる。
まだそこには、あの日に神父さまがくれた十字架がある。
そのことに、ホッと胸を撫で下ろした。
それとも何も祈りませんか?
◆◆◆◆◆◆
「トキワちゃーん! 早く起きないと遅刻しちゃうよー?」
部屋のドアをノックする音。
僕、【輝神時翔】(カガミ・トキワ)はいつものように幼馴染の【白鐘亜梨子】(しろがね・アリス)の声で起こされた。
「……大丈夫だよ、まだ目覚まし鳴ってないし。
昨日遅くまでバイトして、徹夜もしたから……。眠い……」
「目覚まし鳴ってないって、何時にセットしたの? もうけっこうかなりヤバイ時間だよ?」
「――え?」
眼鏡をかけてから、目覚まし時計をわしづかむ。すでにアラームは止められていた。
飛び起きると、歴代の記録を塗り替える速さで身支度を整えた。
僕は幼い頃に両親を亡くして、ムーンチャイルドと呼ばれる修道院で暮らしている。
礼拝堂に出ると他の子たちはもう学園へ行ってしまっていた。
「トキワちゃん、髪の毛寝ぐせついてる!
スカーフもぐちゃぐちゃ! ちょっとこっち向いてっ」
アリスの家はここからすぐ近所にある。
幼稚園児の頃からずっと一緒にすごしてきた。
実のところ小さい頃は気が弱くて泣き虫で、
恥ずかしながらイジメられているのをよくアリスに守ってもらっていた。
そのせいか今でも頭が上がらない。
「べつに毎日起こしに来なくてもいいのに……」
「だって毎日起こしに来ないと毎日遅刻するでしょ!
トキワちゃんにはボクがついてないとダメなんだからっ」
アリスは女の子なのに自分のことをボクと言う。
正義感が強くて、学園では風紀委員に所属している。
けど、頭に付けたでっかいリボンと白黒ボーダーのニーソックスは絶対に規則違反だと思う。
なのに人懐っこい性格だからか、学園公認で許されている。
なんでなのか全然わからない。
あと昔からの癖なのか、何かと僕の世話を焼きたがる。
「わかってるの? トキワちゃんはあの学園の希望の星なんだよ!」
「大丈夫だよ。 学園ではそれなりの対応してるから」
「そういうことじゃなくって……」
アリスを無視して進む、廊下でシスターと擦れ違った。
手に二人分の食事を持っている。
「シスター、それって……」
「ええ、ミュウちゃん部屋にいなかったから、またナイトくんのところだと思うの。
朝ご飯、持って行ってあげようと思いまして」
僕は地下室へと続く階段へ視線を送った。
「シスター、僕が留守の間はあのふたりのこと、よろしくお願いしますね」
シスターは優しく微笑んでうなずいた。
「行ってらっしゃいませ」
「トキワちゃーん! 待ってよお……。
いくらボクが女子の中で足が速いっていっても、トキワちゃんには敵わないよう……」
「しょうがないなぁ」
「えっ? ひゃああっ!」
アリスの手を引いて、僕は桜並木の道を走っていく。
高等部、三年目の春。
そっと自分の胸元に指で触れる。
まだそこには、あの日に神父さまがくれた十字架がある。
そのことに、ホッと胸を撫で下ろした。
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