◆闇騎士◆(ナイトメシア)~兎王子と人形姫の不思議な鏡迷宮~

卯月美羽(うさぎ・みゅう)

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【星ワタリ篇】~第1章~(題2部)

夢現最終時

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ナイトの体が暗闇の中を落ちていく。

祈るように瞳を閉じる。
その瞳から涙が溢れて、宙に浮いていく……。

「ミュウ様、貴女のことが大好きです……」

だから幸せになってほしい。
生きていてほしい。
ここではない真実の世界を。

そのためには、ワタクシは消えなくてはならないのだ……。

それなのに――。

ミュウ様とずっと一緒にいたいと思ってしまう。
自分だけのお姫様にしたいと思ってしまう。
この世界に閉じ込めて、誰にも邪魔されないようにしたいと願ってしまう……。

おそらく、このまま落ちて行っても死ぬことは出来ないだろう。

ワタクシがどこへ行ったとしても、きっとミュウ様は追いかけてきてしまうから。
こんな夢に惑わされないでほしいのに。

ワタクシのことを嫌いにすらなってくれないというのなら、
もう、この街の下の世界にいる、住人たちに託すしかない……。

とは言っても結局は、この街の延長線上にしか過ぎないが。

この世界はどこまで行っても、もう。
あの紅い本の示すとおり、”煉獄”なのだから――。



◆◆◆◆◆◆



しばらくの静寂の中――。

街の巨大な壁の上に、少女が降り立った。
黒いゴシック調のドレスを翻して、濃いピンク色のツインテールが風に揺れる。

もうひとりの自分だとミュウの前に姿を現した、あの少女だった。

「あの人のココロを感じる……」

少女は暗闇の底を見つめながら呟いた。

「この下界のどこかに、貴方はいる……。
待っていて。 必ず貴方を見つけてみせるから――」

言うと少女は両手を広げて、壁の上から足を放して、暗闇の中を落ちて行った。
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