43 / 59
【星ワタリ篇】~第1章~(題2部)
夢現十四時
しおりを挟む
「みっ、みみっ、みい~っ!」
ハートさんがナイトの頭上で羽をパタパタ鳴らして、心配そうに飛び回っていた。
「五月蠅いイキモノですねぇ~」
横たわったまま、ため息まじりに、瞳だけをギョロリと光らせるナイト。
「最後の晩餐に、食材にしてしまうというのも手デスねぇ~」
「みっ、みび~っ!! みぎゃび~~っっ!!」
涙をこぼして、ぷるぷる震えながら逃げ惑うハートさん。
「ご安心なさい。
貴女はマズそうデスので、こちらからご遠慮しておきます。
メアリの非常食にでもなって置きなさい」
「みっ……」
飛び回るのを止め、ナイトの胸の上に止まるハートさん。
再び、心配そうな瞳を向けた。
「こんな訳のわからない生物が、ワタクシの最期の話し相手になるとは……」
瞳から、じんわり涙が滲んで目の前が霞む。
と、そこに……。
遠くから小さな足音が聞こえてきた。
だんだん近くなってくるのを感じる。
「ナイト!」
息を切らせた、ミュウの姿が目の前に在った。
「――ミュウ……様。 どうして……」
「ごめんね。ナイト。
ほんとうはぜんぶ、最初から知ってたの」
ゆっくりと歩み寄り、
ミュウが真っすぐにナイトを見つめる。
「何度はなれていっても、
何度でもミュウが拾ってあげる」
吸い込まれるようなその瞳から、目が逸らせない。
「ナイトになら殺されてもかまわないよ」
ミュウは微笑んでいた。
「だってミュウはもう、ナイトがいないと生きていけないのだもん」
まるで幼い少女のような、愛らしい無邪気な瞳をナイトに向ける。
「――だから」
その頬はほんのりと、ナイトの大好きな苺の色のように染まっていた。
「一緒に許されない世界を創っていこうよ」
言うと、ミュウはナイトにくちづけをした……。
――。
すると、淡い光が放った。
ナイトの穴の開いた体が塞がっていく。
ぼろぼろだった所も完全に治癒していた。
ナイトは喜びの涙を流してしまった。
「貴女が、ワタクシのことを求めてくれるのなら」
ミュウの手を取り、ひざまずいて笑顔を見せた。
「その望み、貴女の御心のままに――」
「みっ♪」
ハートさんがふたりを見つめて喜びの声で鳴いた。
ナイトとミュウは手を繋いで歩いていく。
目的も無く、ただゆっくりと。
いつものふたりに戻れたというのに、どこか心の中に物悲しさが消えて無くならなかった。
この街はもう駄目だろう、ということが解っていたから。
「ミュウ様。この街の伝説を覚えていますか?」
ナイトが指で示す。
「うん……」
戦争からこの街を守るために造られたという、四方を囲む巨大な壁。
この街からけして出てはいけないという大昔の言い伝え。
ふたりはあの壁の向こうの世界を知らない。
ふたりにとって今まで、この街が世界の全てだったから。
幸せのためにはもう、この街の掟を破るしかない。
ふたりは歩みはじめる。
希望を信じて。あの壁の向こう側へ。
途中の高台から街が見渡せた。
だが、機械人形たちが恐ろしいほどの数で蔓延り、
炎が燃え盛っているのが見えた。
それでもふたりは諦めなかった。
あの壁を乗り越えれば明るい世界が広がっているかもしれない。
しかし、その先でふたりが目にしたものは……。
ハートさんがナイトの頭上で羽をパタパタ鳴らして、心配そうに飛び回っていた。
「五月蠅いイキモノですねぇ~」
横たわったまま、ため息まじりに、瞳だけをギョロリと光らせるナイト。
「最後の晩餐に、食材にしてしまうというのも手デスねぇ~」
「みっ、みび~っ!! みぎゃび~~っっ!!」
涙をこぼして、ぷるぷる震えながら逃げ惑うハートさん。
「ご安心なさい。
貴女はマズそうデスので、こちらからご遠慮しておきます。
メアリの非常食にでもなって置きなさい」
「みっ……」
飛び回るのを止め、ナイトの胸の上に止まるハートさん。
再び、心配そうな瞳を向けた。
「こんな訳のわからない生物が、ワタクシの最期の話し相手になるとは……」
瞳から、じんわり涙が滲んで目の前が霞む。
と、そこに……。
遠くから小さな足音が聞こえてきた。
だんだん近くなってくるのを感じる。
「ナイト!」
息を切らせた、ミュウの姿が目の前に在った。
「――ミュウ……様。 どうして……」
「ごめんね。ナイト。
ほんとうはぜんぶ、最初から知ってたの」
ゆっくりと歩み寄り、
ミュウが真っすぐにナイトを見つめる。
「何度はなれていっても、
何度でもミュウが拾ってあげる」
吸い込まれるようなその瞳から、目が逸らせない。
「ナイトになら殺されてもかまわないよ」
ミュウは微笑んでいた。
「だってミュウはもう、ナイトがいないと生きていけないのだもん」
まるで幼い少女のような、愛らしい無邪気な瞳をナイトに向ける。
「――だから」
その頬はほんのりと、ナイトの大好きな苺の色のように染まっていた。
「一緒に許されない世界を創っていこうよ」
言うと、ミュウはナイトにくちづけをした……。
――。
すると、淡い光が放った。
ナイトの穴の開いた体が塞がっていく。
ぼろぼろだった所も完全に治癒していた。
ナイトは喜びの涙を流してしまった。
「貴女が、ワタクシのことを求めてくれるのなら」
ミュウの手を取り、ひざまずいて笑顔を見せた。
「その望み、貴女の御心のままに――」
「みっ♪」
ハートさんがふたりを見つめて喜びの声で鳴いた。
ナイトとミュウは手を繋いで歩いていく。
目的も無く、ただゆっくりと。
いつものふたりに戻れたというのに、どこか心の中に物悲しさが消えて無くならなかった。
この街はもう駄目だろう、ということが解っていたから。
「ミュウ様。この街の伝説を覚えていますか?」
ナイトが指で示す。
「うん……」
戦争からこの街を守るために造られたという、四方を囲む巨大な壁。
この街からけして出てはいけないという大昔の言い伝え。
ふたりはあの壁の向こうの世界を知らない。
ふたりにとって今まで、この街が世界の全てだったから。
幸せのためにはもう、この街の掟を破るしかない。
ふたりは歩みはじめる。
希望を信じて。あの壁の向こう側へ。
途中の高台から街が見渡せた。
だが、機械人形たちが恐ろしいほどの数で蔓延り、
炎が燃え盛っているのが見えた。
それでもふたりは諦めなかった。
あの壁を乗り越えれば明るい世界が広がっているかもしれない。
しかし、その先でふたりが目にしたものは……。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる