◆闇騎士◆(ナイトメシア)~兎王子と人形姫の不思議な鏡迷宮~

卯月美羽(うさぎ・みゅう)

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【星ワタリ篇】~第1章~(題2部)

夢現十一時

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街中には未だ機械人形たちが沢山徘徊していた。
メアリが倒しても次から次へと、どこからともなく現れていた。

昨日までは、綺麗なイルミネーションで飾られた大きなクリスマスツリーであったはずの大木の中。
木々で覆い隠された太い枝の上に、メアリは身を隠していた。

ここからなら街全体が見渡せる。
おまけに木々で隠されて機械人形たちからは見つからない。
だが、それだけだ。

「くそっ。 埒が明かない」

ナイトとミュウと合流したいが、ここから動けば見つかってしまう。
かと言ってこのままここにいては何もできない。

ナイトメア・メイズの鞄も、紅い本もメアリが持ってきてしまっている。

何か手はないのかと、考えていると紅い本が白く光りを放った。
見ると2ページ目に新しく、先ほど起きた出来事が綴られていた。

『彷徨エル哀レナ兎タチハ、物語ヲ進メテ行ク。

真実ヲ露ワニシタ怒レル街ノ住人タチノ手ニヨッテ、黒イ兎ハ独リ暗闇ヲ歩キ始メル』

「マジで気味が悪いな……」

げんなりとした顔で、適当に見なかったことにした。

ふと、思った。
賽を投げて綴られた文章のその後は、本当に白紙なのだろうか。

ペラペラとページをめくっていくが、やはり何も書かれていない。
諦めて本を閉じようとした。が……。

最後のページに、文章が浮かび上がっていることに気がついた。
驚いて目を止める。

”ハッピーエンド”

今までの筆記体とは明らかに違っている。
柔らかくて暖かさを感じる、優しい言葉。

それはメアリの知らないはずの、世界の、文字だった。

――。

それを目にした瞬間、頭に激痛が走った。
思わず声を漏らして頭を抱えた。

知らないはずの文字が、なぜ読めるのか?

――いや、本当はよく知っているからだ。

”あのふたり”の幸せを願って、祈りを込めて書いたのだ……。

「うわああああああああああーー!!」

頭の中を失くしていた記憶がよみがえっていく。

――――。

産まれてから今までの半生が走馬灯のように駆け巡る。

今まで自分のことを悪魔だと信じてやまなかった。
けれどそれはきっと植え付けられたか、そう思い込んでしまっていたのだ。
……一体なぜ?

ならば、どうして自分はこんな所にいるのだろうか。

――――。

思い出した。
思い出してしまった。
世界の【全て】を――。

最後のページを見つめながら呟いた。

「これは、俺が書いたんだ――」
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