◆闇騎士◆(ナイトメシア)~兎王子と人形姫の不思議な鏡迷宮~

卯月美羽(うさぎ・みゅう)

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【星ワタリ篇】~第1章~(題1部)

夢七夜

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――気が付くと何時の間にか部屋の中は、真っ赤な霧に包まれていた……。

「キヒヒィ……」

紅装束の仮面の男が不気味に笑う。

「なっ……誰なのですか!?貴方はっ! 勝手に人の家に上がり込んで~~っ。
ちゃんと玄関のベル鳴らしたのデスかっ!?」

ナイトが杖を振り回してプンプンッと激怒する、隣りでメアリがズリッと肩を落とした。

ああ……ナイト、お前本当はすっごい馬鹿なのか?
あきらかに今はそういう問題じゃないだろ……w;。

「……勝手にって、イヤだなァ。
ボクはキミたちに呼び出されて此処に来たんだヨ?」

「呼び出されたって、何が――」

ナイトが自分の足元を見る。
そこにはあの棺型の鞄が開かれて、無数のサイコロが散らばって置かれていた。

「キミはその【パラ・ダイス】を投げてゲームを始めてしまった……。
そしてその案内役としてボクが呼び出された……」

「げぇっ! なんだコレぇ!?」

メアリが鞄を覗き込む。

双六のボードの上にナイトそっくりの指人形の玩具がのっていた。

…………。

ナイトは散りばめられた幾千もの賽の中から、ひとつだけ黒い六角形の紅数字のダイスを手に取った。

「楽園――」

誰にも聞き取れないくらいの擦れた声で、ナイトは呟いた……。

「ねェ……キミの名前をおしえてヨ……」

尋ねる仮面の男に、一瞬だけ間を置いてからナイトは瞳を鋭くして口を開いた。

「人に物を尋ねる時は、まず自分が名乗ってから尋ねるというのが礼儀、
というものではないのデスか?」

「キヒヒ……そっか、そうだったよねェ……」

男はまるでそう言われることを解っていたかのように、笑う。

「ボクは死神、ファントム……」

「死神!? オイ、まさかこの鞄の呪いか!?
俺たちの魂を奪いに来たとかじゃ――」

「キミの名前はァ……?」

死神・ファントムはメアリを無視してナイトに詰め寄る。

ナイトの背丈に合わせるように腰をまげて、仮面が頬に触れそうなほどに異常に顔を近づけてくる。
首を傾げて、不気味な狂気さを感じる。

それでもナイトは微塵も驚くような素振りを見せず、

「ワタクシは、ナイト」

胸に手を添え、前を見据えて名前をかかげ、

「リ・ナイト・リトルロードネヴァーと申します……。
ボンジュール、死神さん」

ほんの少しだけ強い眼差しで、微笑みを浮かべながら丁寧に挨拶をして見せた。

「……ナイト?」

死神がピクリッと反応する。

一瞬、空間にビシッとヒビが入ったかのような錯覚を感じる。

「そう……やっぱりキミ……、ナイトなんだネ……」

まるで全てを知っているかのように、分かっているかのように、見つけたかのように。

言われるとナイトはにっこりと微笑んでから、再び死神を睨んだ。
そして今度はこちらから問い掛けた。

「貴方の望みは、なんですか?」

「……望みィ?……キヒヒ……目的ならひとつだけ、あるヨォ……。 そのコ……」

言いながら部屋の隅でおびえていたミュウに目線を向ける。

「ボクの目的はそのコの魂を奪うこと……ダヨ?」

――!?

「っ貴様!?」

「……そうですか」

叫ぶメアリの声をナイトが遮った。

!?

「ついに見つかってしまったのですね……死神さんのおでましデスか……」

呟くように続ける。

「だが……」

まるで待ち構えていたかのように、その時がきたかのように、

「お前ごときがこのワタクシに、かなうと思うな」

ナイトは挑戦的で重圧感のある、恐ろしい笑みを浮かべた。

「キヒヒ……怖い怖い……」

死神もその宣戦布告を受け取るかのように答えた。

メアリは訳が解らず、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた――。
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