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【星ワタリ篇】~第1章~(題1部)
夢六夜
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リビングであれから暫く時間が経った。
だが何も起こる様子がない。
もう夜も遅いため、三人はひとまずそれぞれの自室に戻り休むことにした。
……薄暗い部屋の中……。
ミュウは独り部屋のベッドで腰を掛けている。
窓から月明かりが優しく照らしている。
いつも洋服の胸元に付けているブローチを手に持っていた。
中には写真が入っている。
「……あのね、今日はとてもこわいことがあったよ」
独り、写真に向かって話し掛ける。
「……でもだいじょうぶだよ」
写真には、【誰か】が写っている。
「だって、【ナイト】が、わたしを守ってくれるから……」
暗くて顔はよく見えないが、ミュウは微笑んでいるようだった。
「ね……?」
ミュウはブローチの蓋を、バチンッと思い切り閉じた。
宝石の部分に少しだけヒビが入った。
…………。
一枚のドアを隔てたその向こう側に、
口元を笑ませた、ナイトが立っていた……。
――――。
ミュウは気が付くと真っ白な空間にいた。
目の前に鏡がある。
美しい芸術品のような装飾の施された、高く広く何メートルもありそうなとても巨大な鏡だ。
キラリと光ると、目の前に見知らぬ少女が写った。
ゴシック調の黒いドレスに身を包み、
濃いピンク色の長いツインテールはウサギの耳を思わせる結び方をしている。
ミュウは後ろを振り向くが、何も無い。
前に向き直って、今度は鏡にペタペタと手で触れる。
少女は確かに鏡の中からこちらを見ている。
「こ、こんにちは……?」
ミュウは小首をかしげながら挨拶をしてみる。
「気をつけて……」
「え?」
少女はとても美しい紫色の瞳をしていた。
「これから沢山沢山、ふたりのことを邪魔しにやって来る……。決して惑わされないで。
そうじゃないと王子様とは一緒にいられなくなってしまう」
少女の瞳から目がそらせない。
「それだけ伝えに来たの」
少女は悲しげに微笑むと、姿が段々と薄くなっていく。
「ま、まって! あなたは誰なの!?」
直ぐに視界が真っ白になってしまった。
――――。
『ミュウ様!!』
誰かの呼ぶ声が聞こえて、ミュウは目を覚ました……。
…………。
気が付くと自分の部屋……。
いつの間にかミュウはベッドの上で眠ってしまっていたらしい。
服が汗で濡れて瞳からは涙が溢れていた。
「……ミュウ様、大丈夫ですか?」
見るとすぐ傍にナイトが居た。
ミュウの手を握っている。
「ナイト……?」
「すごくうなされていましたよ、怖い夢でも見たのですか?」
ナイトの手は、とても温かかった……。
「うん……でも、だいじょうぶ……。
ナイトが、ここにいるから……」
……少しだけ、嘘をついてしまった……。
本当はちょっぴり不安だった。
……その手が震えていることに、もしかするとナイトは気が付いていたのかもしれない。
すると、突然バタバタと廊下を走る足音が聞こえてきて、激しく部屋のドアを開けた。
「っおい! 大変だ!!」
寝起きなのか、シルクハットを外して手に持ちながら髪がやや乱れたメアリ。
「なんなのですか? 騒がしいですね」
「いいから外を見ろ!!」
「一体何が――」 言いながら、窓の外に目をやると、
「……!?」
辺り一面漆黒の闇に包まれて、小さかった家が地上が見えないほどの巨大な城塞へと変わっていた……。
「これは……!?」
思わず窓から身を乗り出す。
……手で掴んだ部分の窓枠が朽ちてパラパラと音を立てて崩れ落ち、終わりの無いような暗い底へと消えていった。
…………。
「キヒヒヒヒヒヒ……」
「――!?」
突然、部屋の中から不気味な笑い声が聞こえてきた。
……振り返るとそこには、
「……呼んだァ?」
紅黒いローブを身にまとい、不気味な仮面を付けた深紅の髪をした見知らぬ青年が、ぼんやりと幻のように立っていた――。
だが何も起こる様子がない。
もう夜も遅いため、三人はひとまずそれぞれの自室に戻り休むことにした。
……薄暗い部屋の中……。
ミュウは独り部屋のベッドで腰を掛けている。
窓から月明かりが優しく照らしている。
いつも洋服の胸元に付けているブローチを手に持っていた。
中には写真が入っている。
「……あのね、今日はとてもこわいことがあったよ」
独り、写真に向かって話し掛ける。
「……でもだいじょうぶだよ」
写真には、【誰か】が写っている。
「だって、【ナイト】が、わたしを守ってくれるから……」
暗くて顔はよく見えないが、ミュウは微笑んでいるようだった。
「ね……?」
ミュウはブローチの蓋を、バチンッと思い切り閉じた。
宝石の部分に少しだけヒビが入った。
…………。
一枚のドアを隔てたその向こう側に、
口元を笑ませた、ナイトが立っていた……。
――――。
ミュウは気が付くと真っ白な空間にいた。
目の前に鏡がある。
美しい芸術品のような装飾の施された、高く広く何メートルもありそうなとても巨大な鏡だ。
キラリと光ると、目の前に見知らぬ少女が写った。
ゴシック調の黒いドレスに身を包み、
濃いピンク色の長いツインテールはウサギの耳を思わせる結び方をしている。
ミュウは後ろを振り向くが、何も無い。
前に向き直って、今度は鏡にペタペタと手で触れる。
少女は確かに鏡の中からこちらを見ている。
「こ、こんにちは……?」
ミュウは小首をかしげながら挨拶をしてみる。
「気をつけて……」
「え?」
少女はとても美しい紫色の瞳をしていた。
「これから沢山沢山、ふたりのことを邪魔しにやって来る……。決して惑わされないで。
そうじゃないと王子様とは一緒にいられなくなってしまう」
少女の瞳から目がそらせない。
「それだけ伝えに来たの」
少女は悲しげに微笑むと、姿が段々と薄くなっていく。
「ま、まって! あなたは誰なの!?」
直ぐに視界が真っ白になってしまった。
――――。
『ミュウ様!!』
誰かの呼ぶ声が聞こえて、ミュウは目を覚ました……。
…………。
気が付くと自分の部屋……。
いつの間にかミュウはベッドの上で眠ってしまっていたらしい。
服が汗で濡れて瞳からは涙が溢れていた。
「……ミュウ様、大丈夫ですか?」
見るとすぐ傍にナイトが居た。
ミュウの手を握っている。
「ナイト……?」
「すごくうなされていましたよ、怖い夢でも見たのですか?」
ナイトの手は、とても温かかった……。
「うん……でも、だいじょうぶ……。
ナイトが、ここにいるから……」
……少しだけ、嘘をついてしまった……。
本当はちょっぴり不安だった。
……その手が震えていることに、もしかするとナイトは気が付いていたのかもしれない。
すると、突然バタバタと廊下を走る足音が聞こえてきて、激しく部屋のドアを開けた。
「っおい! 大変だ!!」
寝起きなのか、シルクハットを外して手に持ちながら髪がやや乱れたメアリ。
「なんなのですか? 騒がしいですね」
「いいから外を見ろ!!」
「一体何が――」 言いながら、窓の外に目をやると、
「……!?」
辺り一面漆黒の闇に包まれて、小さかった家が地上が見えないほどの巨大な城塞へと変わっていた……。
「これは……!?」
思わず窓から身を乗り出す。
……手で掴んだ部分の窓枠が朽ちてパラパラと音を立てて崩れ落ち、終わりの無いような暗い底へと消えていった。
…………。
「キヒヒヒヒヒヒ……」
「――!?」
突然、部屋の中から不気味な笑い声が聞こえてきた。
……振り返るとそこには、
「……呼んだァ?」
紅黒いローブを身にまとい、不気味な仮面を付けた深紅の髪をした見知らぬ青年が、ぼんやりと幻のように立っていた――。
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