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【星ワタリ篇】~第1章~(題1部)
夢五夜
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「……で、どうする?」
リビング。血塗られた箱を前にメアリは呟いた。
「どうするもこうするも、開けてみるしかないでしょう?
住所は此処で間違いありませんし、それともこのまま放って置くつもりで?」
隣りにナイトとミュウもいる。
メアリとナイトは元の人型へと姿を戻していた。
「ナイト……」
ナイトの腕にしがみ付くミュウ。
その手が震えていることに、ナイトはすぐに気が付いた。
そっと、ミュウの手を優しく握りながら、
「大丈夫ですよ、きっとただの悪戯です」
郵便物など新聞配達が来るくらいで、この何年も届いたことがなかった。
そう言いながら内心まさかとは思うが、何かミュウの両親に係わることかもしれない……。
少しだけ嫌な予感がした。
「チッ……大体、何が【真実の世界】だ。
名前くらいちゃんと書けってハナシ――」
メアリが愚痴をこぼす。
と、……クリスマスツリーの電灯が、ブゥーンと少しだけ音を立てたかと思うと、チカッチカッと部屋の明かりが付いた。
「おや?停電、復旧したようですね」
外の様子を窺おうとしたその時、
「うわ……っ!?」
メアリが声を上げた。
「――!!」
ナイトが振り向くと、メアリの手から血のような紅い液体が滴り落ちていた。
「切ったのですか!?」
「……いや、これは俺の血じゃない」
よく見ると、箱がグシャグシャに潰れていて大量の紅い手形が付いていた。
「…………」
ミュウは青ざめて、何も言わずに震えながらナイトにしがみ付いた。
…………。
「……これは、たちの悪い悪戯ですねぇ」
ナイトはふたりには分からないように、少しだけ眉を顰めた……。
「早く開けなさい。 もし爆弾か何かだったら危険デス」
手の汚れを落として来たメアリ。
ナイトとミュウはちゃっかりと箱から離れた場所へと距離を置く。
「……俺に開けろ、と?」
メアリは引きつりながらため息をつきつつ、箱に手を掛けた。
――――。
「――なんなんだ? コレ」
箱の中には、ゴシック調の十字架の装飾が施された柩型の黒い鞄が入っていた。
「……随分と悪趣味デスね。 ワタクシの好みに合いません」
「いや、それはいいとしてw;」
メアリが鞄を揺すってみる。 カラカラと音がした。
「中に何か入ってるな」
「だからさっさと開けなさい。 行動が遅すぎデス、この糞下僕が!」
「ああっ!?(怒)」
――こいつ!!いつか必ずひねり潰してくれる!!この【悪魔メアリード様】の名にかけて!!
そう心の奥で誓いながら、メアリは鞄を開けた。
「……ん?」
ころんっと、黒をベースに紅い点数字の入ったサイコロが一つだけ出てきた。
メアリがそれを拾う。
「……双六ゲーム、ですかね?」
ナイトが横から鞄を覗き込む。
スタートとゴールの文字だけがやたらと不気味に紅く浮かんで見え、後は迷路のようにボードが巻き散らされている。
どこかチェス版を思わせるようなデザインで、鞄自体がゲームの台になっている構造のようだった。
「でもこれ、オカシイですね。 肝心のボードに文章が何も書いてありません。
ピンもありませんし、これではゲームが出来ません」
「……やっぱり、いたずらなのかなぁ?」
ナイトの後ろからビクビクしながらひょこっと顔をのぞかせるミュウ。
「でも誰がこんな物……」
ミュウとメアリは顔を見合わせた。
…………。
「ふぅ~~ん。 な~んだ☆つまらない」
沈黙を破るように言いながらナイトは、メアリの持っていたサイコロを摘まみ、
「お、おい……」
ポイッと鞄の上に投げ捨てた。
…………。
……サイコロの目は【一】を指していた。
リビング。血塗られた箱を前にメアリは呟いた。
「どうするもこうするも、開けてみるしかないでしょう?
住所は此処で間違いありませんし、それともこのまま放って置くつもりで?」
隣りにナイトとミュウもいる。
メアリとナイトは元の人型へと姿を戻していた。
「ナイト……」
ナイトの腕にしがみ付くミュウ。
その手が震えていることに、ナイトはすぐに気が付いた。
そっと、ミュウの手を優しく握りながら、
「大丈夫ですよ、きっとただの悪戯です」
郵便物など新聞配達が来るくらいで、この何年も届いたことがなかった。
そう言いながら内心まさかとは思うが、何かミュウの両親に係わることかもしれない……。
少しだけ嫌な予感がした。
「チッ……大体、何が【真実の世界】だ。
名前くらいちゃんと書けってハナシ――」
メアリが愚痴をこぼす。
と、……クリスマスツリーの電灯が、ブゥーンと少しだけ音を立てたかと思うと、チカッチカッと部屋の明かりが付いた。
「おや?停電、復旧したようですね」
外の様子を窺おうとしたその時、
「うわ……っ!?」
メアリが声を上げた。
「――!!」
ナイトが振り向くと、メアリの手から血のような紅い液体が滴り落ちていた。
「切ったのですか!?」
「……いや、これは俺の血じゃない」
よく見ると、箱がグシャグシャに潰れていて大量の紅い手形が付いていた。
「…………」
ミュウは青ざめて、何も言わずに震えながらナイトにしがみ付いた。
…………。
「……これは、たちの悪い悪戯ですねぇ」
ナイトはふたりには分からないように、少しだけ眉を顰めた……。
「早く開けなさい。 もし爆弾か何かだったら危険デス」
手の汚れを落として来たメアリ。
ナイトとミュウはちゃっかりと箱から離れた場所へと距離を置く。
「……俺に開けろ、と?」
メアリは引きつりながらため息をつきつつ、箱に手を掛けた。
――――。
「――なんなんだ? コレ」
箱の中には、ゴシック調の十字架の装飾が施された柩型の黒い鞄が入っていた。
「……随分と悪趣味デスね。 ワタクシの好みに合いません」
「いや、それはいいとしてw;」
メアリが鞄を揺すってみる。 カラカラと音がした。
「中に何か入ってるな」
「だからさっさと開けなさい。 行動が遅すぎデス、この糞下僕が!」
「ああっ!?(怒)」
――こいつ!!いつか必ずひねり潰してくれる!!この【悪魔メアリード様】の名にかけて!!
そう心の奥で誓いながら、メアリは鞄を開けた。
「……ん?」
ころんっと、黒をベースに紅い点数字の入ったサイコロが一つだけ出てきた。
メアリがそれを拾う。
「……双六ゲーム、ですかね?」
ナイトが横から鞄を覗き込む。
スタートとゴールの文字だけがやたらと不気味に紅く浮かんで見え、後は迷路のようにボードが巻き散らされている。
どこかチェス版を思わせるようなデザインで、鞄自体がゲームの台になっている構造のようだった。
「でもこれ、オカシイですね。 肝心のボードに文章が何も書いてありません。
ピンもありませんし、これではゲームが出来ません」
「……やっぱり、いたずらなのかなぁ?」
ナイトの後ろからビクビクしながらひょこっと顔をのぞかせるミュウ。
「でも誰がこんな物……」
ミュウとメアリは顔を見合わせた。
…………。
「ふぅ~~ん。 な~んだ☆つまらない」
沈黙を破るように言いながらナイトは、メアリの持っていたサイコロを摘まみ、
「お、おい……」
ポイッと鞄の上に投げ捨てた。
…………。
……サイコロの目は【一】を指していた。
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