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【星ワタリ篇】~第1章~(題1部)
夢一夜
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幼い頃、おとなたちに言われた。
「けして、あの壁に近づいてはいけないよ。呪い殺されてしまうからね」
それが怖くてずっと言いつけを守ってきた。
けれどある日突然、両親がいなくなった。
パニックになった子供たちは、街に残っているおとなたちに尋ねた。
近々この辺りで戦争が起こるらしい。
子供たちの親は自分たちを捨てて、街を出てどこか遠くへ逃げたそうだ。
ショックだった。
「だからといって、街の外を見ようともしてはいけないよ。呪い殺されてしまうからね」
この街は四方八方を巨大な壁で覆われている。まるで何かを包み隠すように。
だから子供たちは街の外が、どうなっているのかを見たことがない。
「この街から出て行ってはいけないよ。呪い殺されてしまうからね」
自分たちを捨てて逃げた親たちよりも、街に残ってくれているおとなたちを信じた。
――いいや。分かっていたのだ。
自分たちは、この街から出たら死んでしまうことに。
何故なら自分たちは人間ではない、ただの幻だからだ。
街のおとなたちだって同じだ。ここからは出られないのだ。
ああそうだ、自分たちには最初から親なんて存在しなかったのだ。
全ては【ナイトメシア様】が創造した、作り物だったのだ。
そう、この街はただの幻……。
【ネオ・ネヴァーランド】――。
◆◆◆◆◆◆
少年の名は【リ・ナイト・リトルロードネヴァー】。
少女の名は【ミュウ・ストロベリーフィールド】。
ふたりはネオ・ネヴァーランドで暮らしている。
一緒の家で暮らしているが血は繋がっていない。
遠い親戚ということになっている。
……とりあえず、そういうことになっている。
本当のことを話しても誰も信じてはくれないだろうし、妙な噂がたつのも御免だから、周りの人には【秘密】にしている。
「はいっ、ミュウちゃん、ナイトくん。 今月分のお給料♪」
ふたりは、喫茶店【ミザリィ・ロンド】で雑用係のバイトをしている。
アンティーク調で飾られた店内。
そこのマスター、アンジェラから茶封筒を受け取った。
「……えと、ありがとうございますです」
頭にうさみみを付けた長いツインテールの髪の少女、ミュウはぎこちなくふかぶかとお辞儀をした。
「なんだか先月より薄くないですか? コレ。
不況だからデスかぁ?」
茶封筒をつまんでわざとらしく宙でヒラヒラさせる、金髪の少年ナイト。
左脚が不自由なため、片腕には杖を装着している。
「失礼ねぇ! 雑用係のくせにナマイキ言うんじゃないわよ!
……接客に周ってくれるっていうなら増やしてあげてもいいんだけどぉ?」
マスター・アンジェラは小指を立てて体をくねらせた。
店員たちは他にもいて、上流階級の貴族の屋敷に使えるメイドや執事を少しゴージャスにしたようなコスチュームに身を包んでいる。
「NOn!冗談! 人に頭を下げられる仕事ならまだしも、こちらが頭を下げるだなんてこのワタクシには耐えられない!」
「あら、あんた達ふたりがうちの制服着て接客したら、この店も繁盛まちがいなしなのにぃ~。うふふ♪」
アンジェラは男である。
別名、オカマのマスターと呼ばれている。
「まぁ冗談はさておき、明日は感謝祭だから早々と店閉まい♪
アタシ、夜になったら【ムーン・チャイルド】の子供たちにプレゼント配る仕事が待ってるのよ」
「ムーン・チャイルド……。
戦争孤児の子供たちが暮らしている教会ですね。
……へえ、マスターもたまには良いことをするのですね」
「たまに、は余計よ!」
「そういえば、ミュウ様も――」
「……うん」
ミュウは少しだけうつむいた。
「きっと、こんな体の弱い子がいたら足手まといになる。
だから、おとうさんとおかあさんミュウのこと捨てて逃げたの……かな。
……お家と遺産があったから孤児院に入らなくて済んだんだけど」
……。
「……湿っぽい話は無しにして、せっかく冬休みも取ってあげたんだから!
今日はおもいっきり遊んで来なさい!」
アンジェラはその場を和ませるように笑った。
「……ナイト」
「ミュウ様……」
ふたりは顔を見合わせた。
「行こっかあ」
「ハイッ!」
ミュウとナイトは手を取り合い、やわらかい陽差しの中を駆け出して行った。
「けして、あの壁に近づいてはいけないよ。呪い殺されてしまうからね」
それが怖くてずっと言いつけを守ってきた。
けれどある日突然、両親がいなくなった。
パニックになった子供たちは、街に残っているおとなたちに尋ねた。
近々この辺りで戦争が起こるらしい。
子供たちの親は自分たちを捨てて、街を出てどこか遠くへ逃げたそうだ。
ショックだった。
「だからといって、街の外を見ようともしてはいけないよ。呪い殺されてしまうからね」
この街は四方八方を巨大な壁で覆われている。まるで何かを包み隠すように。
だから子供たちは街の外が、どうなっているのかを見たことがない。
「この街から出て行ってはいけないよ。呪い殺されてしまうからね」
自分たちを捨てて逃げた親たちよりも、街に残ってくれているおとなたちを信じた。
――いいや。分かっていたのだ。
自分たちは、この街から出たら死んでしまうことに。
何故なら自分たちは人間ではない、ただの幻だからだ。
街のおとなたちだって同じだ。ここからは出られないのだ。
ああそうだ、自分たちには最初から親なんて存在しなかったのだ。
全ては【ナイトメシア様】が創造した、作り物だったのだ。
そう、この街はただの幻……。
【ネオ・ネヴァーランド】――。
◆◆◆◆◆◆
少年の名は【リ・ナイト・リトルロードネヴァー】。
少女の名は【ミュウ・ストロベリーフィールド】。
ふたりはネオ・ネヴァーランドで暮らしている。
一緒の家で暮らしているが血は繋がっていない。
遠い親戚ということになっている。
……とりあえず、そういうことになっている。
本当のことを話しても誰も信じてはくれないだろうし、妙な噂がたつのも御免だから、周りの人には【秘密】にしている。
「はいっ、ミュウちゃん、ナイトくん。 今月分のお給料♪」
ふたりは、喫茶店【ミザリィ・ロンド】で雑用係のバイトをしている。
アンティーク調で飾られた店内。
そこのマスター、アンジェラから茶封筒を受け取った。
「……えと、ありがとうございますです」
頭にうさみみを付けた長いツインテールの髪の少女、ミュウはぎこちなくふかぶかとお辞儀をした。
「なんだか先月より薄くないですか? コレ。
不況だからデスかぁ?」
茶封筒をつまんでわざとらしく宙でヒラヒラさせる、金髪の少年ナイト。
左脚が不自由なため、片腕には杖を装着している。
「失礼ねぇ! 雑用係のくせにナマイキ言うんじゃないわよ!
……接客に周ってくれるっていうなら増やしてあげてもいいんだけどぉ?」
マスター・アンジェラは小指を立てて体をくねらせた。
店員たちは他にもいて、上流階級の貴族の屋敷に使えるメイドや執事を少しゴージャスにしたようなコスチュームに身を包んでいる。
「NOn!冗談! 人に頭を下げられる仕事ならまだしも、こちらが頭を下げるだなんてこのワタクシには耐えられない!」
「あら、あんた達ふたりがうちの制服着て接客したら、この店も繁盛まちがいなしなのにぃ~。うふふ♪」
アンジェラは男である。
別名、オカマのマスターと呼ばれている。
「まぁ冗談はさておき、明日は感謝祭だから早々と店閉まい♪
アタシ、夜になったら【ムーン・チャイルド】の子供たちにプレゼント配る仕事が待ってるのよ」
「ムーン・チャイルド……。
戦争孤児の子供たちが暮らしている教会ですね。
……へえ、マスターもたまには良いことをするのですね」
「たまに、は余計よ!」
「そういえば、ミュウ様も――」
「……うん」
ミュウは少しだけうつむいた。
「きっと、こんな体の弱い子がいたら足手まといになる。
だから、おとうさんとおかあさんミュウのこと捨てて逃げたの……かな。
……お家と遺産があったから孤児院に入らなくて済んだんだけど」
……。
「……湿っぽい話は無しにして、せっかく冬休みも取ってあげたんだから!
今日はおもいっきり遊んで来なさい!」
アンジェラはその場を和ませるように笑った。
「……ナイト」
「ミュウ様……」
ふたりは顔を見合わせた。
「行こっかあ」
「ハイッ!」
ミュウとナイトは手を取り合い、やわらかい陽差しの中を駆け出して行った。
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