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軌跡~【メアリ・ロード】~黒兎
最終羽
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空。快晴。太陽の光が眩しい。
屋根の上で寝転びながら、俺は少しだけ昔の夢をみていたようだ。
「あわわっ……フガフガッ」
下から変な声が聞こえてきた。
まだ眠気が覚めず、ぼんやりしている体を起こす。
声のしたほうに目をやると、バルコニーに布団のお化け出現。
だらりと垂れた毛布の下から小さな足が2本生えている。
ヨロヨロ~と歩き出し手擦りにもたれかかった。
と、思いきやそのまま手擦りを越えてふらりっと下へずり落ちそうになる。
俺は急いで手を伸ばす。
布団がべろんっとめくれて、そのお化けの正体があらわになる。
ミュウだ。
「ふわらぁ~、ありがとうメアリ~」
「まったく、布団と一緒に飛び降り自殺でもする気か?」
屋根の上から降り、俺はミュウの小さな体を布団ごと抱きかかえる。
「ああっ!
ワタクシの許可なくミュウ様に触れないでくださいよ!
この色魔!」
洗濯物を干していたナイトが横から罵声を浴びせてくる。
「あんっ!?
じゃあお前ミュウを助けられたのかよ?
そんな中学生みたいな体しやがって」
「ちゅ……!?」
「ふたりとも~、ケンカしちゃダメなんだよ~」
「ふ……今日のところはミュウ様に免じて許してやりましょう」
あきらかに引きつっている。
絶対に助けられなかったに違いない。
「だいたい貴方は力仕事担当なのデスから、布団は貴方が干しなさい!」
「……殴っていいか?」
命令されるのは気にいらないが、危なっかしくて見ていられないから手伝ってやることにした。
「じゃあミュウは洗濯物干すの手伝うね」
「――って、ちょ、まて! ソレ俺のトランクス……」
「ふえ? メアリのパンティー大きいね~」
「愚かなメアリ。
触られたくないのなら、とっとと自分で干して置けば良いのデス」
物干し竿を見ると丁重にもミュウの洗濯物の隣りに、キチンとナイトの洗濯物が干されていた。
なんだか気に入らない。
「……首絞めていいか?」
「おーこわい! 遠慮しておきます」
「あははははは♪」
俺が怒る。
ナイトが嘲笑う。
ミュウが笑う。
これが今の俺達のいつもの風景。
……しばらく此処で過ごしていて気が付いたことがある……。
俺の呪いを解くには、女は俺のことを愛していて俺もその女を愛していなければならないのだ。
俺はあの時、ミュウを救いたいと思った。
ただ強くそう願った。
誰かを想う気持ち――。
愛とはほど遠いかもしれない。
……けれど、きっとそれが引き金となったのだ。
不完全な気持ちだから、不完全なまま呪いが解けた。
つまり、お互いが愛し合いキスをすればもとの姿に戻れるのだ。
……酷だな。
もとの姿に戻れば、魔界に帰らなくてはならない。
それは愛する人との別れを意味する。
俺はナイトとミュウが、どんなにお互いを想い合っているか、知っていた。
もしかしたら俺がもとの姿に戻れる日は、やってこないかもしれない。
でもそれでも構わないと思っていた。
――きっと今日も夜は来るだろう――。
瞳を閉じるたびに、もう二度と目覚めることはできなくなるのではないかと恐怖に襲われる……。
だが、あの子の声がいつでも俺を呼び覚ます。
――『メアリ』。
……俺はもうナイトの正体は聞かない。
あの子……ミュウにはいつも笑っていて欲しい。
ずっとこのまま3人でいたい……。
……たとえ俺が人間ではなくても。
俺は此処にいたい……。
この幸せな生活がいつまでも続くのだと信じていたい……。
……信じていたかった――。
屋根の上で寝転びながら、俺は少しだけ昔の夢をみていたようだ。
「あわわっ……フガフガッ」
下から変な声が聞こえてきた。
まだ眠気が覚めず、ぼんやりしている体を起こす。
声のしたほうに目をやると、バルコニーに布団のお化け出現。
だらりと垂れた毛布の下から小さな足が2本生えている。
ヨロヨロ~と歩き出し手擦りにもたれかかった。
と、思いきやそのまま手擦りを越えてふらりっと下へずり落ちそうになる。
俺は急いで手を伸ばす。
布団がべろんっとめくれて、そのお化けの正体があらわになる。
ミュウだ。
「ふわらぁ~、ありがとうメアリ~」
「まったく、布団と一緒に飛び降り自殺でもする気か?」
屋根の上から降り、俺はミュウの小さな体を布団ごと抱きかかえる。
「ああっ!
ワタクシの許可なくミュウ様に触れないでくださいよ!
この色魔!」
洗濯物を干していたナイトが横から罵声を浴びせてくる。
「あんっ!?
じゃあお前ミュウを助けられたのかよ?
そんな中学生みたいな体しやがって」
「ちゅ……!?」
「ふたりとも~、ケンカしちゃダメなんだよ~」
「ふ……今日のところはミュウ様に免じて許してやりましょう」
あきらかに引きつっている。
絶対に助けられなかったに違いない。
「だいたい貴方は力仕事担当なのデスから、布団は貴方が干しなさい!」
「……殴っていいか?」
命令されるのは気にいらないが、危なっかしくて見ていられないから手伝ってやることにした。
「じゃあミュウは洗濯物干すの手伝うね」
「――って、ちょ、まて! ソレ俺のトランクス……」
「ふえ? メアリのパンティー大きいね~」
「愚かなメアリ。
触られたくないのなら、とっとと自分で干して置けば良いのデス」
物干し竿を見ると丁重にもミュウの洗濯物の隣りに、キチンとナイトの洗濯物が干されていた。
なんだか気に入らない。
「……首絞めていいか?」
「おーこわい! 遠慮しておきます」
「あははははは♪」
俺が怒る。
ナイトが嘲笑う。
ミュウが笑う。
これが今の俺達のいつもの風景。
……しばらく此処で過ごしていて気が付いたことがある……。
俺の呪いを解くには、女は俺のことを愛していて俺もその女を愛していなければならないのだ。
俺はあの時、ミュウを救いたいと思った。
ただ強くそう願った。
誰かを想う気持ち――。
愛とはほど遠いかもしれない。
……けれど、きっとそれが引き金となったのだ。
不完全な気持ちだから、不完全なまま呪いが解けた。
つまり、お互いが愛し合いキスをすればもとの姿に戻れるのだ。
……酷だな。
もとの姿に戻れば、魔界に帰らなくてはならない。
それは愛する人との別れを意味する。
俺はナイトとミュウが、どんなにお互いを想い合っているか、知っていた。
もしかしたら俺がもとの姿に戻れる日は、やってこないかもしれない。
でもそれでも構わないと思っていた。
――きっと今日も夜は来るだろう――。
瞳を閉じるたびに、もう二度と目覚めることはできなくなるのではないかと恐怖に襲われる……。
だが、あの子の声がいつでも俺を呼び覚ます。
――『メアリ』。
……俺はもうナイトの正体は聞かない。
あの子……ミュウにはいつも笑っていて欲しい。
ずっとこのまま3人でいたい……。
……たとえ俺が人間ではなくても。
俺は此処にいたい……。
この幸せな生活がいつまでも続くのだと信じていたい……。
……信じていたかった――。
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