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軌跡~【メアリ・ロード】~黒兎
第五羽
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声をかけたのは、
やたらと派手でキワドイ衣装に身を包む、妙に色っぽいオネーサマ達……。
突然の突拍子も無いお願いに、動きを停止させている。
何度でも言おう、俺は小さな黒いうさぎのぬいぐるみのような外見をしている。
ナイト……お前けっこう馬鹿だろ……。
こんな姿の俺に、ハイそうですかとキスしてくれる女が何処にいるっていうんだい!?(笑)
大体、理由を話しても信じてくれるかも疑わしいってのに!!
「きゃー、なにこの子ぉー」
「ちょーカワイイんだけどぉー!」
「いやーん」
お……?
踊り子達が頬を赤らめ、腰をくねらせ、擦り寄ってくる。
……そういうことか。
さすが俺様。
こんな姿になっていても格好良さは隠せない、滲み出てしまうものなのかぁwww
「キミ、いくつなのぉー?」
「おませさんねぇー」
「おねえさんたちと、キスしたいの?」
踊り子達の腕がナイトの頬に掛けられる。
「いや、あの、ワタクシではなく、このうさぎに……」
ナイトの腕からズリ落ち、顔面強打する俺。
「なに恥ずかしがってんのぉー?」
「あはっ、ほっぺたやわらかーい」
「あん、ずるい。 アタシがさきに……」
く、ははははははwww
……って、ナイトかよっ!!
くそっ、こんな屈辱は生まれて初めてだ……ナイトめ……。
「……メアリ! ちょっと貴方、見てないで助けなさいっ!」
しばらくして夕空に、ナイトの苦しむ断末魔の叫びが轟いた。
が、俺にはそんなこと、知ったこっちゃあないのである。
「くうぅっ、ワタクシとしたことが……」
顔中キスマークだらけのナイトが、松葉杖を支えにガクガクとへたりこんでいる。
あわれな……。
この程度でへこたれるなど、まだまだだ。
ざまあないな。
「……ふっ、ふえぇ~~」
???
ミュウの声?
ベンチに座ってアイスを食べながら待っていたはずのミュウ。
見ると変な野郎共にからまれていた。
「わぁ~うさみみちゃんだあ~」
「そそそのスカートのなか、どどどうなってるのおぉぉ」
「ハアハアさわってもいいのかな? かな?」
やたらデブッてたり、牛乳瓶底メガネだったり、ロン毛で顔が見えてなかったり……。
ゾンビの如きオーラをかもし出し、ミュウに迫っている。
キモッ!! ってかヘンタイか!?
「おーい、ナイ……」
俺の声よりも速く、閃光のごとく駆け出すナイトの影が見えた。
ナイトが跳んだ!?かと思いきや、
「†††ロザス・エデン†††」
何やら呪文を唱えると、左腕に装着していた松葉杖がメキメキと音を立て、巨大な十字架へと変化していった。
おいおいおいおいっっwww
装飾の施された、まばゆい光を放つ巨大な十字架の尖端から鎖の様なものが生え出し、さらにその先にはダガーの様なものが付いている。
この感じは……。
アイツ……タダ者じゃないとは思っていたが、こんな街中で攻撃魔法使うつもりか!?
鎖がうねり、ダガーが野郎共の方へと向かっていく。
『ぎょおおひいげええええっっ!!』
野郎共が叫び逃げ惑う。
「あっっほかあぁぁぁ!! やめろぉーーーナイトぉーーー!!」
鎖が囲むように標的を追い詰めていく。
………………
ちゅどおぉーーーーーーんwww
………………
俺の叫びも虚しく、ナイトの放った攻撃は定めた相手に命中したようだ。
ううう……見たくねぇ……。
っていうか、そうやって使う物だったのな……その松葉杖。
「まったく……大丈夫ですか?」
十字架をもとの松葉杖に戻し、服についた汚れを払いながら、平然と歩いてくるナイト。
涙ぐむミュウに手を差し伸べる。
「ナイト……ありがとう」
いや、ありがとうって言うのか?この場合……。
パレードが中断して野次馬が集まってくる。
街中はさらに騒がしくなった。
はっ!まずい!
この騒ぎを聞きつけてか、黒服のガーディアン達が出動していた。
こちらに向かって来ている。
「逃げますよっ!」
「ふええっ」
ミュウが急いで俺を抱きかかえ、ナイトがミュウの腕をひっぱる。
人混みを掻き分けて、ふたりが走り出す。
……その時、ざわりっと風が吹いた。
ナイトの髪がやけに白く光り輝いている……。
見えてしまった。
それは夕焼けの色ではない。
見てしまった。
……ナイトの碧い瞳が、深紅に染まっているのを……。
……俺はまた意識がとびそうになり、目蓋を開けているのが精一杯だった……。
やたらと派手でキワドイ衣装に身を包む、妙に色っぽいオネーサマ達……。
突然の突拍子も無いお願いに、動きを停止させている。
何度でも言おう、俺は小さな黒いうさぎのぬいぐるみのような外見をしている。
ナイト……お前けっこう馬鹿だろ……。
こんな姿の俺に、ハイそうですかとキスしてくれる女が何処にいるっていうんだい!?(笑)
大体、理由を話しても信じてくれるかも疑わしいってのに!!
「きゃー、なにこの子ぉー」
「ちょーカワイイんだけどぉー!」
「いやーん」
お……?
踊り子達が頬を赤らめ、腰をくねらせ、擦り寄ってくる。
……そういうことか。
さすが俺様。
こんな姿になっていても格好良さは隠せない、滲み出てしまうものなのかぁwww
「キミ、いくつなのぉー?」
「おませさんねぇー」
「おねえさんたちと、キスしたいの?」
踊り子達の腕がナイトの頬に掛けられる。
「いや、あの、ワタクシではなく、このうさぎに……」
ナイトの腕からズリ落ち、顔面強打する俺。
「なに恥ずかしがってんのぉー?」
「あはっ、ほっぺたやわらかーい」
「あん、ずるい。 アタシがさきに……」
く、ははははははwww
……って、ナイトかよっ!!
くそっ、こんな屈辱は生まれて初めてだ……ナイトめ……。
「……メアリ! ちょっと貴方、見てないで助けなさいっ!」
しばらくして夕空に、ナイトの苦しむ断末魔の叫びが轟いた。
が、俺にはそんなこと、知ったこっちゃあないのである。
「くうぅっ、ワタクシとしたことが……」
顔中キスマークだらけのナイトが、松葉杖を支えにガクガクとへたりこんでいる。
あわれな……。
この程度でへこたれるなど、まだまだだ。
ざまあないな。
「……ふっ、ふえぇ~~」
???
ミュウの声?
ベンチに座ってアイスを食べながら待っていたはずのミュウ。
見ると変な野郎共にからまれていた。
「わぁ~うさみみちゃんだあ~」
「そそそのスカートのなか、どどどうなってるのおぉぉ」
「ハアハアさわってもいいのかな? かな?」
やたらデブッてたり、牛乳瓶底メガネだったり、ロン毛で顔が見えてなかったり……。
ゾンビの如きオーラをかもし出し、ミュウに迫っている。
キモッ!! ってかヘンタイか!?
「おーい、ナイ……」
俺の声よりも速く、閃光のごとく駆け出すナイトの影が見えた。
ナイトが跳んだ!?かと思いきや、
「†††ロザス・エデン†††」
何やら呪文を唱えると、左腕に装着していた松葉杖がメキメキと音を立て、巨大な十字架へと変化していった。
おいおいおいおいっっwww
装飾の施された、まばゆい光を放つ巨大な十字架の尖端から鎖の様なものが生え出し、さらにその先にはダガーの様なものが付いている。
この感じは……。
アイツ……タダ者じゃないとは思っていたが、こんな街中で攻撃魔法使うつもりか!?
鎖がうねり、ダガーが野郎共の方へと向かっていく。
『ぎょおおひいげええええっっ!!』
野郎共が叫び逃げ惑う。
「あっっほかあぁぁぁ!! やめろぉーーーナイトぉーーー!!」
鎖が囲むように標的を追い詰めていく。
………………
ちゅどおぉーーーーーーんwww
………………
俺の叫びも虚しく、ナイトの放った攻撃は定めた相手に命中したようだ。
ううう……見たくねぇ……。
っていうか、そうやって使う物だったのな……その松葉杖。
「まったく……大丈夫ですか?」
十字架をもとの松葉杖に戻し、服についた汚れを払いながら、平然と歩いてくるナイト。
涙ぐむミュウに手を差し伸べる。
「ナイト……ありがとう」
いや、ありがとうって言うのか?この場合……。
パレードが中断して野次馬が集まってくる。
街中はさらに騒がしくなった。
はっ!まずい!
この騒ぎを聞きつけてか、黒服のガーディアン達が出動していた。
こちらに向かって来ている。
「逃げますよっ!」
「ふええっ」
ミュウが急いで俺を抱きかかえ、ナイトがミュウの腕をひっぱる。
人混みを掻き分けて、ふたりが走り出す。
……その時、ざわりっと風が吹いた。
ナイトの髪がやけに白く光り輝いている……。
見えてしまった。
それは夕焼けの色ではない。
見てしまった。
……ナイトの碧い瞳が、深紅に染まっているのを……。
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