◆闇騎士◆(ナイトメシア)~兎王子と人形姫の不思議な鏡迷宮~

卯月美羽(うさぎ・みゅう)

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軌跡~【メアリ・ロード】~黒兎

第二羽

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―――頭に何かひんやりとした物をのせられている。
気持ちが良い。

ぼんやりと天井が見える。

……どこだ?ここは……。

「おや、気がつきましたか?」

すぐ隣りから声がした。
誰だ?

声のしたほうへ向き直ると、そこには……

「……!?ブフォッッ!!??」

白いうさぎのぬいぐるみが、ちょこんと座って俺を眺めていた。

「ちょ……おまっ……マテ、オイコラッ!!」

「……さわがしい奴デスね」

よく見たらコイツ、さっきの白いうさぎだ。
唇をとがらせ、頭をポリポリと掻いている。

「う……動いてる!! ぬいぐるみがッッ!! しゃべってるぅーー!!」

「貴方も、ぬいぐるみじゃないデスか」

……そうだった!!

だが俺は悪魔だ。
こいつは一体―――

「黒いぬいぐるみちゃん、起きたぁ?」

キッチンのほうから、ツインテールのチビな女がこっちへ駆け寄ってくる。

こいつもさっきの変な格好をした女だ。

「彼女が貴方を救助してくれたのですよ。 感謝しなさい」

白いうさぎがギロリと俺を睨む。

「あ、ああ……。 恩にきる」

どうやらここはこの女の家らしい。
俺はソファーで眠っていたようだ。

「はい、ぬいぐるみちゃんっ」

目の前にあるテーブルに、グラスを差し出された。
中には奇妙なピンク色した液体が注がれている。

なんじゃこらぁ!?

「いちごミルク、美味しいですよ」

白いうさぎが羨ましそうに、ソレを見つめる。
そして俺を睨む。

女はニコニコと俺に微笑む。

ああ……是が非でも飲まねばならん、ということか……。

俺は心を決め、奇妙な液体を一気に喉に流し込んだ。

「ぶふうげうぶえふーーー!!」

まずい!! しかも舌が燃えるほど甘い!!

どういう味覚してんだコイツら……俺をコロス気か? 恐ろしい。

「ふむ……それにしても」

白いうさぎが俺をジロジロと舐め回すように見てくる。

「なっ、なんだ?」

やんのか? コラ。

「見れば見るほど似てますね」

……はっ?

「認めたくはありませんが。
製造が同じなのですかね? 色違い、という感じですね」

「お、おい。 一体なんの話をして――」

「貴方も、不思議なぬいぐるみなのでしょう?」

――その言葉に絶句した。

白いうさぎが前を見据えて、

「ワタクシは、ナイト。
リ・ナイト・リトルロードネヴァーと申します。
素晴らしい名前でしょう?」

誇らしげに胸を張る。

「貴方の名前をお聞きしたい」

……名乗っても別に不都合は無いか。
それに黙っていても何の解決にもならない。

だいたいもうコイツがしゃべってるんだ。
誰も驚かないだろう。

「俺はメアリ。
メアリード・ハイヴェルダルク・ウォン・ヴァレンシュタインⅠⅣ世だ」

一瞬うさぎが動きを止めたように思えた。

長すぎて聞き取れなかった、とかじゃないよな?

「……そうですか。 メアリ……。
まさか名前までとは……。
あまりの偶然に、どうしようかと困ってしまいますね」

「ふえ? え? ミュウよくわからなかったよぉお」

女が何やら慌てふためいているが、無視して、

「何がだ?」

「いえ、こちらのこと……。 こほんっ」

何か気に障るが、今はそれどころじゃない。

「……とりあえず、ナイト?」

俺は白いうさぎをそう呼んだ。

「俺は今、猛烈に困っている。
解決するのに協力してほしい」

「内容によっては、しかねますが。
まぁ、よいでしょう」

白いうさぎ、ナイトがニヤリッと笑う。

「で、何なのです? その困ったこととは」

……何だか全てを見透かされているようで、俺は少し寒気がした……。

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