3 / 59
追憶~【ユメノ・ナイト】~白兎
第二羽
しおりを挟む
見知らぬ少女は、ワタクシの体を包み込むように抱きかかえた。
小学生くらいだろうか。
髪をふたつ結びにした、とても小さな女の子だ。
こちらを覗き込んでいる。
「おうちにくる? ぬいぐるみちゃん」
優しく微笑みかけてくる。
が、返事をかえしたくても声が出ない。
「いっしょに行こうねっ」
なし崩し的に彼女の家へつれて行かれることとなった。
バシャーー。
家に着くなり熱湯のシャワーを浴びせられた。
とても熱い。 熱すぎる。 熱くて体が痛い。
「ええと、せっけんせっけん……」
ワタクシの体がみるみるうちに白い泡に包まれていく。
「じっとしててね~」
そう言われても動けない。
「ぬいぐるみちゃん、黒かと思ったら白なんだね」
おかげで体の汚れは真っ白に落ちていた。
ブオーー。
ふわふわしたタオルに包まれながら、今度はドライヤーをかけてもらう。
これまた熱い。 だが、抵抗したくても体が動かない。
ただのぬいぐるみの様にされるがままになるしかなかった。
「乾いたら、やぶれたところも縫ってあげるねっ!」
嬉しそうに笑う。
……その言葉に背筋がゾッとした。
彼女はワタクシを抱きかかえると、トントンと2階へと続く階段を上がっていく。
どうやら彼女の部屋らしい。
中に入ると……ギョッとした。
カーテンはフリフリのピンク、ベッドもピンク、家具もすべてピンク色だった!
なんというか……乙女チックな部屋だ。
可愛いぬいぐるみ達も沢山飾られている。
思わずその者達と自分の出で立ちを見比べてしまう。
場違いもいいところだった。
ぬいぐるみ達はみんな、華麗なドレスやキラキラしたアクセサリーを身に着けている……。
なのにワタクシの体はボロボロでこんなところに居ていいものかと、急に居心地が悪くなってくる。
――そんなことを考えていると、ふと、窓辺に置かれている小さなツリーに気がついた。
チカチカ光る色とりどりのイルミネーション。
汚れきったワタクシにとって、
あまりに美しく感じられて……
目が釘付けになった。
「……綺麗でしょ?
……今日はクリスマス・イヴなんだよ……」
……彼女の瞳が、ユラユラしていた。
小学生くらいだろうか。
髪をふたつ結びにした、とても小さな女の子だ。
こちらを覗き込んでいる。
「おうちにくる? ぬいぐるみちゃん」
優しく微笑みかけてくる。
が、返事をかえしたくても声が出ない。
「いっしょに行こうねっ」
なし崩し的に彼女の家へつれて行かれることとなった。
バシャーー。
家に着くなり熱湯のシャワーを浴びせられた。
とても熱い。 熱すぎる。 熱くて体が痛い。
「ええと、せっけんせっけん……」
ワタクシの体がみるみるうちに白い泡に包まれていく。
「じっとしててね~」
そう言われても動けない。
「ぬいぐるみちゃん、黒かと思ったら白なんだね」
おかげで体の汚れは真っ白に落ちていた。
ブオーー。
ふわふわしたタオルに包まれながら、今度はドライヤーをかけてもらう。
これまた熱い。 だが、抵抗したくても体が動かない。
ただのぬいぐるみの様にされるがままになるしかなかった。
「乾いたら、やぶれたところも縫ってあげるねっ!」
嬉しそうに笑う。
……その言葉に背筋がゾッとした。
彼女はワタクシを抱きかかえると、トントンと2階へと続く階段を上がっていく。
どうやら彼女の部屋らしい。
中に入ると……ギョッとした。
カーテンはフリフリのピンク、ベッドもピンク、家具もすべてピンク色だった!
なんというか……乙女チックな部屋だ。
可愛いぬいぐるみ達も沢山飾られている。
思わずその者達と自分の出で立ちを見比べてしまう。
場違いもいいところだった。
ぬいぐるみ達はみんな、華麗なドレスやキラキラしたアクセサリーを身に着けている……。
なのにワタクシの体はボロボロでこんなところに居ていいものかと、急に居心地が悪くなってくる。
――そんなことを考えていると、ふと、窓辺に置かれている小さなツリーに気がついた。
チカチカ光る色とりどりのイルミネーション。
汚れきったワタクシにとって、
あまりに美しく感じられて……
目が釘付けになった。
「……綺麗でしょ?
……今日はクリスマス・イヴなんだよ……」
……彼女の瞳が、ユラユラしていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる