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■浦我島 港太郎〜灰色の空と緑の海とカラフルな砂浜〜
救済装置【玉手箱】
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想像していたよりも慎ましやかな料理と未知のお酒を楽しんだ港太郎は、そろそろ良い頃合いかと帰宅する意思を伝えました。
「いやー、ありがとうございます。こんな楽しい時間は初めてでした」
「おお、満足して頂けましたか。そりゃ結構で──ああっ!!」
すると、何やら海亀がやらかしたと口を大きく開けて顔を青ざめさせているではありませんか。
「……どうかしましたか?」
「あ、いえ……そのぉ~……じつは……」
港太郎が海亀に問うと、海亀は久々の竜宮城に舞い上がり過ぎて、龍宮城と地上の時間速度が違う事を思い出したと言いました。
「……あー……それは、どれくらい?」
「……此方での一分が、陸での一年です……」
「………………あー……」
「取り返しのつかないことを……本当に申し訳ありません……!」
「あー……はい」
謝罪する海亀に、港太郎は“まあ何とかなるだろう”と現実逃避の含んだ胡乱な表情で答える。
すると海亀が、何やら思い詰めた表情で人魚にあるものを注文しています。
「だ、大丈夫ですよ! お兄さん海のものも食べられたし、魔法にも適性あるから!」
「そうですよ! あ、何なら私が貴方を助けさせて下さい!」
港太郎は人魚達や海亀に慰められたり、何なら家で就職、もしくは保護をして過ごすかと問われるが、自分にもにも自分の人生が有るとそれを断ってしまいました。
「御土産をお持ちしました……」
「ええ、ありがとうございます……さあ、これを……」
そうしていると、人魚が漆塗りの玉手箱を持って来ました。それを港太郎に受け取るよう言うと、海亀ら言いました。
「陸に戻り、もし耐えられぬと思った時に、この箱を開けてください」
「……わかりました」
港太郎は海亀の醸し出す重い雰囲気に息を飲み、玉手箱を受け取ると、海亀の背に乗って地上へと帰っていきました。
「それでは、この度は誠に……申し訳ありませんでした……!」
「……嘘だろ……! なんだここ、本当に元の、あの海岸なんだな……?!」
「……はい、間違いありません」
「──は、ははは、ハハハハハハッ!」
「あの、あの……すみません、さようなら……」
陸に帰って来た港太郎でしたが、そこには別世界と見紛う程に変化した故郷があり、それを見た港太郎は発狂。もう海亀の声も耳に届きません。
「……帰らなきゃ……」
港太郎は覚束無い足取りで町を駆けて行きます。
「あそこは知ってる、あれは知らない。何でここにコンビニがッ!?」
目につく何れもが、見覚えが合ったり無かったりする状況がより港太郎を深い狂気に陥れます。
「あ、ハハハッなんだ、あるじゃん実家!」
「……あの」
「──へ?」
暫く走った港太郎は、実家に帰ることが出来ました。
しかし、実家である家から見知らぬ人が出てきたことで、その喜びが塵のように砕けました。
「あ──え、どなた?」
「は? 桃川ですけど……」
“お前こそだれだ”と言わんばかりに怪訝な表情を浮かべる住人。
その時、甲羅をの脳内に、海亀の言葉が過りました。
『ここでの一分は、陸での一日です』
「は、ハハハッ……あ、あの……」
「……はい?」
「いま、何年ですかぁ?」
「は? ……今は──」
「──ハハハッ……アハハハハッ!!!?」
「ちょっ何なんですか!?」
住人が言うには、今はあれから港が竜宮城に行ってから百年経っているそうです。それを聞いた港太郎は膝から崩れ落ちて泣きながら大笑いし始めました。
「ハハハッ──あー?」
その時でした。港太郎が無意識に持っていた玉手箱が、カランと音を立てて落ちたのです。
その音と、目に入った玉手箱を見て、一時的に正気を取り戻した港太郎は、玉手箱をワタサレタトキに言われた海亀の言葉を思い出したました。
『耐えられぬと思った時には、この箱を開けて下さい』
「箱……玉手箱……ここじゃだめだ……だめだな……海だ、海へ行こう……」
箱を大事そうに抱えて、港太郎はふらふらと海へと向かいました。
そして、海亀と出会った海岸にたどり着くと、すがるように紐を解き、箱を開けました。
途端に溢れる白煙。港太郎は全身が包まれました。
「何が……」
「おーい、港太郎ー!」
「港太郎!」
「港!」
困惑する港太郎の元に、死に別れた両親や、疎遠になった友達が駆け寄って来たではありませんか。
「今までどこ行ってたのさ!」
「……はは、それがさー──」
何処に行ってたんだと叱るような、心配するような声に、港太郎は泣きながら、しかし安心した様子でこれまでの事を語り出しました。
白煙が晴れたその場所には、幸せそうな顔をして眠る様に体を横たえる、枯れ老いたの港太郎の姿がそこにありましたとさ。
おしまい。
「いやー、ありがとうございます。こんな楽しい時間は初めてでした」
「おお、満足して頂けましたか。そりゃ結構で──ああっ!!」
すると、何やら海亀がやらかしたと口を大きく開けて顔を青ざめさせているではありませんか。
「……どうかしましたか?」
「あ、いえ……そのぉ~……じつは……」
港太郎が海亀に問うと、海亀は久々の竜宮城に舞い上がり過ぎて、龍宮城と地上の時間速度が違う事を思い出したと言いました。
「……あー……それは、どれくらい?」
「……此方での一分が、陸での一年です……」
「………………あー……」
「取り返しのつかないことを……本当に申し訳ありません……!」
「あー……はい」
謝罪する海亀に、港太郎は“まあ何とかなるだろう”と現実逃避の含んだ胡乱な表情で答える。
すると海亀が、何やら思い詰めた表情で人魚にあるものを注文しています。
「だ、大丈夫ですよ! お兄さん海のものも食べられたし、魔法にも適性あるから!」
「そうですよ! あ、何なら私が貴方を助けさせて下さい!」
港太郎は人魚達や海亀に慰められたり、何なら家で就職、もしくは保護をして過ごすかと問われるが、自分にもにも自分の人生が有るとそれを断ってしまいました。
「御土産をお持ちしました……」
「ええ、ありがとうございます……さあ、これを……」
そうしていると、人魚が漆塗りの玉手箱を持って来ました。それを港太郎に受け取るよう言うと、海亀ら言いました。
「陸に戻り、もし耐えられぬと思った時に、この箱を開けてください」
「……わかりました」
港太郎は海亀の醸し出す重い雰囲気に息を飲み、玉手箱を受け取ると、海亀の背に乗って地上へと帰っていきました。
「それでは、この度は誠に……申し訳ありませんでした……!」
「……嘘だろ……! なんだここ、本当に元の、あの海岸なんだな……?!」
「……はい、間違いありません」
「──は、ははは、ハハハハハハッ!」
「あの、あの……すみません、さようなら……」
陸に帰って来た港太郎でしたが、そこには別世界と見紛う程に変化した故郷があり、それを見た港太郎は発狂。もう海亀の声も耳に届きません。
「……帰らなきゃ……」
港太郎は覚束無い足取りで町を駆けて行きます。
「あそこは知ってる、あれは知らない。何でここにコンビニがッ!?」
目につく何れもが、見覚えが合ったり無かったりする状況がより港太郎を深い狂気に陥れます。
「あ、ハハハッなんだ、あるじゃん実家!」
「……あの」
「──へ?」
暫く走った港太郎は、実家に帰ることが出来ました。
しかし、実家である家から見知らぬ人が出てきたことで、その喜びが塵のように砕けました。
「あ──え、どなた?」
「は? 桃川ですけど……」
“お前こそだれだ”と言わんばかりに怪訝な表情を浮かべる住人。
その時、甲羅をの脳内に、海亀の言葉が過りました。
『ここでの一分は、陸での一日です』
「は、ハハハッ……あ、あの……」
「……はい?」
「いま、何年ですかぁ?」
「は? ……今は──」
「──ハハハッ……アハハハハッ!!!?」
「ちょっ何なんですか!?」
住人が言うには、今はあれから港が竜宮城に行ってから百年経っているそうです。それを聞いた港太郎は膝から崩れ落ちて泣きながら大笑いし始めました。
「ハハハッ──あー?」
その時でした。港太郎が無意識に持っていた玉手箱が、カランと音を立てて落ちたのです。
その音と、目に入った玉手箱を見て、一時的に正気を取り戻した港太郎は、玉手箱をワタサレタトキに言われた海亀の言葉を思い出したました。
『耐えられぬと思った時には、この箱を開けて下さい』
「箱……玉手箱……ここじゃだめだ……だめだな……海だ、海へ行こう……」
箱を大事そうに抱えて、港太郎はふらふらと海へと向かいました。
そして、海亀と出会った海岸にたどり着くと、すがるように紐を解き、箱を開けました。
途端に溢れる白煙。港太郎は全身が包まれました。
「何が……」
「おーい、港太郎ー!」
「港太郎!」
「港!」
困惑する港太郎の元に、死に別れた両親や、疎遠になった友達が駆け寄って来たではありませんか。
「今までどこ行ってたのさ!」
「……はは、それがさー──」
何処に行ってたんだと叱るような、心配するような声に、港太郎は泣きながら、しかし安心した様子でこれまでの事を語り出しました。
白煙が晴れたその場所には、幸せそうな顔をして眠る様に体を横たえる、枯れ老いたの港太郎の姿がそこにありましたとさ。
おしまい。
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