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■浦我島 港太郎〜灰色の空と緑の海とカラフルな砂浜〜
竜宮城 陸大島南支店
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「さーて、着きましたよ」
「……これが、その店か?」
見えない幕を通り抜けた先で港太郎達を出迎えたのは、何処か薄汚れた、ボロボロの旅館の様な建物でした。
「ええ、この辺にある唯一の擦り屋です。ささ、行きましょう!」
「擦り……?」
海亀の言葉に首を傾げる港太郎でしたが、海亀には聞こえていなかったのか、先へと泳いで行きました。
「……おや、出迎えがありませんね。御免くださーい」
海亀の背から降り、何時もは係の者が開けてくれると言う扉を港太郎が代わりに開けて中へと入る二人。
しかし、誰も出迎えて来ないのを不思議に思った海亀が声を掛けると、受付の裏にある部屋から一人の人魚が慌てて出てきました。
「え……? ああ、あらあらあら! いらっしゃいませ!」
「ええ、はい」
“そんな気はしていた”と言わんばかりの海亀に、人魚は口に手をやって謝罪しました。
「すみません、何分久し振りのお客様でしたので……」
「ええ、構いませんよ。それで、赤珊瑚コースを頼みたいのですが」
「──ええ、赤珊瑚コース! 承りました~!」
海亀と、受付であろう人魚が話をしている最中、港太郎は物珍しげに周囲を観察していました。
少し汚れてはいるものの、綺麗な玉砂利が敷かれた玄関に、外の汚れを軽く落とすため、隙間無く生えた毛足の多い海草。
傷の目立つ内装には、色落ちているものの目を引く巨大な珊瑚の盆栽と、磨き上げられたシャコガイ、その中に鎮座する大きな真珠が飾り付けられています。
その飾りを観ていると、人魚と話終わったのか、海亀が飾りの意味を教えてくれました。
「あれはコースのメニュー表ですよ。下から真珠、シャコガイ、そして今回の赤珊瑚コースです。此の店の最上級のメニューです。楽しみですねぇ、ささ、行きましょうか」
「あ、ああ……」
こうして、港太郎達は人魚の案内によって、店の奥の宴会室へと案内されました。
人が座ることを想定されていない硬い磨かれた石の床。魔法で作られた水の無い空間の中、羽衣に包まれた海綿のクッションに座り、落ち着かない様子の港太郎。
人魚に甲羅を磨かれデレデレとした様子の海亀を横目に見つつ、見慣れぬ楽器の奏でる未知の音楽と人魚の歌を聴きながら、港太郎は持て成しを精一杯楽しもうと頑張っていた。
(よく分から音楽に、何を言ってるのかわからない歌。水中専用なんだろうな。海亀が笑って聴いているなら、まあ、悪いものじゃないはずだ)
そうして音楽のことを横に置いた港太郎は、膳に乗せられて運び込まれた料理に目を向けました。
グラスに積み上げられた、酒精の香るクラゲ。塩の香りがする貝や海老、魚の刺身の盛り合わせ。小鉢に盛られた海草のサラダ。
見事に謎の物や生ばかりの料理達に、港太郎は“海だしな”と、昔のハサミの様なデザインの箸を持ち、料理を食べはじめました。
(お、旨い!)
醤油等の調味料が無いので、そのままの状態で食べた刺身達は程好く塩味が効いており、素材の味を最大限楽しめるものでした。
そうして料理を美味しそうに食べる港太郎を見て、人魚達はホッと一息ついて安心したようです。
何せ、前例の少ない陸のお客様。粗相があっては竜宮城の名が廃ると、店の人魚達で短い時間で知識を出した結果が、港太郎を包む魔法とクッションと料理でした。
そんな人魚達も、怪訝な表情でグラスに入った酒クラゲを見る港太郎には焦った様子を見せるのでした。
「……これが、その店か?」
見えない幕を通り抜けた先で港太郎達を出迎えたのは、何処か薄汚れた、ボロボロの旅館の様な建物でした。
「ええ、この辺にある唯一の擦り屋です。ささ、行きましょう!」
「擦り……?」
海亀の言葉に首を傾げる港太郎でしたが、海亀には聞こえていなかったのか、先へと泳いで行きました。
「……おや、出迎えがありませんね。御免くださーい」
海亀の背から降り、何時もは係の者が開けてくれると言う扉を港太郎が代わりに開けて中へと入る二人。
しかし、誰も出迎えて来ないのを不思議に思った海亀が声を掛けると、受付の裏にある部屋から一人の人魚が慌てて出てきました。
「え……? ああ、あらあらあら! いらっしゃいませ!」
「ええ、はい」
“そんな気はしていた”と言わんばかりの海亀に、人魚は口に手をやって謝罪しました。
「すみません、何分久し振りのお客様でしたので……」
「ええ、構いませんよ。それで、赤珊瑚コースを頼みたいのですが」
「──ええ、赤珊瑚コース! 承りました~!」
海亀と、受付であろう人魚が話をしている最中、港太郎は物珍しげに周囲を観察していました。
少し汚れてはいるものの、綺麗な玉砂利が敷かれた玄関に、外の汚れを軽く落とすため、隙間無く生えた毛足の多い海草。
傷の目立つ内装には、色落ちているものの目を引く巨大な珊瑚の盆栽と、磨き上げられたシャコガイ、その中に鎮座する大きな真珠が飾り付けられています。
その飾りを観ていると、人魚と話終わったのか、海亀が飾りの意味を教えてくれました。
「あれはコースのメニュー表ですよ。下から真珠、シャコガイ、そして今回の赤珊瑚コースです。此の店の最上級のメニューです。楽しみですねぇ、ささ、行きましょうか」
「あ、ああ……」
こうして、港太郎達は人魚の案内によって、店の奥の宴会室へと案内されました。
人が座ることを想定されていない硬い磨かれた石の床。魔法で作られた水の無い空間の中、羽衣に包まれた海綿のクッションに座り、落ち着かない様子の港太郎。
人魚に甲羅を磨かれデレデレとした様子の海亀を横目に見つつ、見慣れぬ楽器の奏でる未知の音楽と人魚の歌を聴きながら、港太郎は持て成しを精一杯楽しもうと頑張っていた。
(よく分から音楽に、何を言ってるのかわからない歌。水中専用なんだろうな。海亀が笑って聴いているなら、まあ、悪いものじゃないはずだ)
そうして音楽のことを横に置いた港太郎は、膳に乗せられて運び込まれた料理に目を向けました。
グラスに積み上げられた、酒精の香るクラゲ。塩の香りがする貝や海老、魚の刺身の盛り合わせ。小鉢に盛られた海草のサラダ。
見事に謎の物や生ばかりの料理達に、港太郎は“海だしな”と、昔のハサミの様なデザインの箸を持ち、料理を食べはじめました。
(お、旨い!)
醤油等の調味料が無いので、そのままの状態で食べた刺身達は程好く塩味が効いており、素材の味を最大限楽しめるものでした。
そうして料理を美味しそうに食べる港太郎を見て、人魚達はホッと一息ついて安心したようです。
何せ、前例の少ない陸のお客様。粗相があっては竜宮城の名が廃ると、店の人魚達で短い時間で知識を出した結果が、港太郎を包む魔法とクッションと料理でした。
そんな人魚達も、怪訝な表情でグラスに入った酒クラゲを見る港太郎には焦った様子を見せるのでした。
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