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■浦我島 港太郎〜灰色の空と緑の海とカラフルな砂浜〜
先の見えない海中
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海亀の背に乗って進む海中は──何とも言い難いものでした。
「……緑だな」
「緑……? ああ、海がですかい? 雨でも降ったのでしょうねぇ」
海亀の掛けてくれた魔法によって、人の目で見る以上に海を視ることが出来るようになった港太郎。ですが、視界限界の景色や、周囲の光の加減で視界が緑がかっています。
「雨……ああ、確かに」
「ああ、そうでしたな。陸の者にとって海は未知でしたな。どれ、店まではまだかかりますし、海の話でもしましょうか」
そう言うと、海亀は海について語りはじめた。
「貴方の様子を見る限り、この海の様子は良く見えていないのでしょう。しかし、この緑は……汚れも混じってはいますが、小さき者達の餌でもあるのです」
「……プランクトンか」
「──おお、ご存じでしたか。そうですか、地上ではそう呼ぶのですねぇ」
海亀は語りました。
海は小さき者達によって成り立っていると。植物性プランクトンに始まり、動物性プランクトン、それらがより大きな者に食われ、その存在を更に大きな存在が食らう。
そして、その植物性プランクトンや、その食事となる栄養素は陸より流れ出ると。
「つまり、陸無くして海は無く、海無くして陸は無いと言うことです」
「……ああ、地上──陸でもそう教わっているよ」
「ホホッ! それは良いですな。賢者達も報われるでしょう」
「賢者? それは──」
「おや、ちょいと失礼を」
海亀の言葉に何かを言おうとしたその時でした。海中を漂う白い浮遊物に向かって進路を変えた海亀は、それを吸い込もうと口を開け──
「まった!」
「おっと、どうされたので?」
「それはクラゲじゃない。ビニール袋だ」
「ええ? ……おや、危ないところでしたな……ツマリクラゲとは……」
それを寸でのところで港太郎が止めました。
「いやはや、まいりましたなぁ。私も危うく友と同じ死に様を晒す所でした」
「……友?」
「ええ、私の知る中で一番大きく、一番食い意地の張った奴でした」
「……」
海亀は過去を思い出す様にして語りました。
村一番の大食漢で、村一番の大きさを誇る鮫にも負けない親友は、ある日を境に苦しみ続けて死んでしまったと。
「それで、掃除屋に頼んで友の腹を調べてもらったんです。そしたら──」
「……これが、腹に詰まってたんだな……」
「ええ、それはもう腹一杯に。いくらなんでも食い過ぎだと笑っちまいました」
「……その、すまんな……」
冗談めかして言う、少し沈んだ様子の海亀に、湧いてきた罪悪感から港太郎は謝罪の言葉を吐きました。
「……これ等全てが、貴方のしでかした事なんですかい……?」
港太郎の肌を悪寒が走りました。見ると、海亀は少し苛立ちを隠せない様子で港太郎に目を向けています。
その目と目が合った港太郎は、思わず保身の言葉を喋りました。しかし、その内容に嘘はありませんでした。
「っ、いや……俺が覚えている限りでは、ゴミを海や川に捨てたことはない……はずだ……」
「……なら、その謝罪は不要ですよ。気持ちは受け取っておきますがね」
「……少し、ゴミを拾って行きたくなったな……」
「おお、それは良い。では、その箱に詰めて行きますかな?」
「ああ、それで」
そう港太郎が答えると、海亀が魔法を使い、道すがら周囲のゴミを集め、港太郎の持つクーラーボックスへと詰めて行きました。
「……緑だな」
「緑……? ああ、海がですかい? 雨でも降ったのでしょうねぇ」
海亀の掛けてくれた魔法によって、人の目で見る以上に海を視ることが出来るようになった港太郎。ですが、視界限界の景色や、周囲の光の加減で視界が緑がかっています。
「雨……ああ、確かに」
「ああ、そうでしたな。陸の者にとって海は未知でしたな。どれ、店まではまだかかりますし、海の話でもしましょうか」
そう言うと、海亀は海について語りはじめた。
「貴方の様子を見る限り、この海の様子は良く見えていないのでしょう。しかし、この緑は……汚れも混じってはいますが、小さき者達の餌でもあるのです」
「……プランクトンか」
「──おお、ご存じでしたか。そうですか、地上ではそう呼ぶのですねぇ」
海亀は語りました。
海は小さき者達によって成り立っていると。植物性プランクトンに始まり、動物性プランクトン、それらがより大きな者に食われ、その存在を更に大きな存在が食らう。
そして、その植物性プランクトンや、その食事となる栄養素は陸より流れ出ると。
「つまり、陸無くして海は無く、海無くして陸は無いと言うことです」
「……ああ、地上──陸でもそう教わっているよ」
「ホホッ! それは良いですな。賢者達も報われるでしょう」
「賢者? それは──」
「おや、ちょいと失礼を」
海亀の言葉に何かを言おうとしたその時でした。海中を漂う白い浮遊物に向かって進路を変えた海亀は、それを吸い込もうと口を開け──
「まった!」
「おっと、どうされたので?」
「それはクラゲじゃない。ビニール袋だ」
「ええ? ……おや、危ないところでしたな……ツマリクラゲとは……」
それを寸でのところで港太郎が止めました。
「いやはや、まいりましたなぁ。私も危うく友と同じ死に様を晒す所でした」
「……友?」
「ええ、私の知る中で一番大きく、一番食い意地の張った奴でした」
「……」
海亀は過去を思い出す様にして語りました。
村一番の大食漢で、村一番の大きさを誇る鮫にも負けない親友は、ある日を境に苦しみ続けて死んでしまったと。
「それで、掃除屋に頼んで友の腹を調べてもらったんです。そしたら──」
「……これが、腹に詰まってたんだな……」
「ええ、それはもう腹一杯に。いくらなんでも食い過ぎだと笑っちまいました」
「……その、すまんな……」
冗談めかして言う、少し沈んだ様子の海亀に、湧いてきた罪悪感から港太郎は謝罪の言葉を吐きました。
「……これ等全てが、貴方のしでかした事なんですかい……?」
港太郎の肌を悪寒が走りました。見ると、海亀は少し苛立ちを隠せない様子で港太郎に目を向けています。
その目と目が合った港太郎は、思わず保身の言葉を喋りました。しかし、その内容に嘘はありませんでした。
「っ、いや……俺が覚えている限りでは、ゴミを海や川に捨てたことはない……はずだ……」
「……なら、その謝罪は不要ですよ。気持ちは受け取っておきますがね」
「……少し、ゴミを拾って行きたくなったな……」
「おお、それは良い。では、その箱に詰めて行きますかな?」
「ああ、それで」
そう港太郎が答えると、海亀が魔法を使い、道すがら周囲のゴミを集め、港太郎の持つクーラーボックスへと詰めて行きました。
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