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怪獣
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鯨達は流児達を追い抜くと、暫くしてスピードを落とし、流児達の泳ぐ速度に会わせてきた。
「……すっげぇ……」
「……!」
側を悠然と泳ぐ二種の鯨達に、思わず感嘆の声を上げる。
その体に触れてみれば、存在の大きさと厚みに圧倒されるかのような力強さを感じる。
「──お知らせします」
「え、どうしたの?」
「──餌やりのタイミングです」
感動に浸っていると、シエラが流児の肩を叩く。
それに対してどうしたかと問えば、シエラは流児の腰に着けた餌袋を指差し、続けて鯨達に指を向ける。
「餌やり ……ああ、鯨達はこれが欲しいのか?」
「──正解です」
餌袋を手に取り鯨達を差せば、シエラは微笑み頷いた。
「──っよし、やってみよう」
そう言って餌袋を開き手を入れると、鯨達が“待ってました!”と言わんばかりに速度を落として後ろに下がり、口を僅かに開け締めして待機を始めた。
「鯨を満腹にさせるにはこれじゃあ少ないか……いや、頑張ればいいか!」
何匹もいる鯨に餌をやる。いつまでも続きそうな重労働に一瞬怯んだ流児だが、覚悟を決めて餌やりを始めた。
──その時、不思議なことが起こった。
「──うおおおっ、デッカッ!?」
流児が餌袋から団子を引っ張ると、餌袋のサイズを優に越えた、大木のような一繋ぎの団子が溢れ出たのだ。
「これなら──どりゃああぁ!!」
これなら鯨達を満足させられる。そう思った大器は、大木のような団子を、鯨達に向かって放り投げた。
「いや、あれだとお互い食べ辛いか!?」
配慮の足りなさに、失敗したと焦る流児。
しかし、大木のような団子はザトウクジラの前では細かく分裂し、マッコウクジラの前では噛りがいのあるサイズに分裂したのである。
「おお、あれなら!」
流児の懸念した問題が解消された。
すると、ザトウクジラが口を大きく開けて、散らばる団子を吸い込んで食べ始めた。
その横で、マッコウクジラも流れてくる大きな団子に齧り付くと、美味しそうに食べ始めた。
「はははっ! 良いねぇ~!」
巨大な生物に餌やりをする。その何とも言えない感覚に、流児は笑い声を上げて喜ぶ。
「クオオォォォン!」
「カチカチカチ!」
すると、餌を食べ終えた鯨達が、次を要求するように催促の声を上げクリック音を当ててくる。
「わかったわかった! よし、もう一回!」
どこか心を甘く擽るような甘えた声と行動に、流児は次の団子を引き摺り出して放り投げた。
数度に渡る餌に満足したのか、鯨達は泳ぐ速度を上げて流児達と並泳を始めた。
「はははっ! よしよし」
ザトウクジラとマッコウクジラに囲まれるようにして泳ぐ。当然、その群れの中心には親に守られていた子鯨も居るわけで。
その中心に誘導され囲まれた流児は、同じく中心にいた子鯨達と戯れている。
その頭や体を撫でたり、餌を食べたりないのか可愛らしく要求してきたので小さな餌を直接あげたりしていた。
「ッ──~~~~!!」
そんな時だった。鯨達から、聞いたことのないような、警戒混じりの声が聞こえたのだ。
「なんだ? どうし──」
狭まる鯨の囲いに、警戒する理由を探すため周囲を見回す。
そして、流児は見付けてしまった。
自分達の遥か後方から、手を伸ばし口を開けて高速で迫る黒い異形──その満月の様な六つの瞳を。
「ッ~~~~!!!?」
口を抑え、声無き悲鳴を抑え込む。
恐怖に縮こまる体。泳ぐことを止めたせいか、どんどんと後ろへと下がって行く。
(マズイッ! 助け──)
「──任務遂行中……何故?」
焦り泳ごうとするも、四肢が凍り付いたように動かない。
すがるようにシエラを見るが、シエラは流児ではなく ヴォズマーを見つめていた。
「何をっ──うおっ……!?」
せめてシエラだけでもと、声を上げて気付けようとしたその時だった。
ザトウクジラの子供が、流児とシエラを庇うようにその口で呑み込み、二人を包み込んだ。
「……すっげぇ……」
「……!」
側を悠然と泳ぐ二種の鯨達に、思わず感嘆の声を上げる。
その体に触れてみれば、存在の大きさと厚みに圧倒されるかのような力強さを感じる。
「──お知らせします」
「え、どうしたの?」
「──餌やりのタイミングです」
感動に浸っていると、シエラが流児の肩を叩く。
それに対してどうしたかと問えば、シエラは流児の腰に着けた餌袋を指差し、続けて鯨達に指を向ける。
「餌やり ……ああ、鯨達はこれが欲しいのか?」
「──正解です」
餌袋を手に取り鯨達を差せば、シエラは微笑み頷いた。
「──っよし、やってみよう」
そう言って餌袋を開き手を入れると、鯨達が“待ってました!”と言わんばかりに速度を落として後ろに下がり、口を僅かに開け締めして待機を始めた。
「鯨を満腹にさせるにはこれじゃあ少ないか……いや、頑張ればいいか!」
何匹もいる鯨に餌をやる。いつまでも続きそうな重労働に一瞬怯んだ流児だが、覚悟を決めて餌やりを始めた。
──その時、不思議なことが起こった。
「──うおおおっ、デッカッ!?」
流児が餌袋から団子を引っ張ると、餌袋のサイズを優に越えた、大木のような一繋ぎの団子が溢れ出たのだ。
「これなら──どりゃああぁ!!」
これなら鯨達を満足させられる。そう思った大器は、大木のような団子を、鯨達に向かって放り投げた。
「いや、あれだとお互い食べ辛いか!?」
配慮の足りなさに、失敗したと焦る流児。
しかし、大木のような団子はザトウクジラの前では細かく分裂し、マッコウクジラの前では噛りがいのあるサイズに分裂したのである。
「おお、あれなら!」
流児の懸念した問題が解消された。
すると、ザトウクジラが口を大きく開けて、散らばる団子を吸い込んで食べ始めた。
その横で、マッコウクジラも流れてくる大きな団子に齧り付くと、美味しそうに食べ始めた。
「はははっ! 良いねぇ~!」
巨大な生物に餌やりをする。その何とも言えない感覚に、流児は笑い声を上げて喜ぶ。
「クオオォォォン!」
「カチカチカチ!」
すると、餌を食べ終えた鯨達が、次を要求するように催促の声を上げクリック音を当ててくる。
「わかったわかった! よし、もう一回!」
どこか心を甘く擽るような甘えた声と行動に、流児は次の団子を引き摺り出して放り投げた。
数度に渡る餌に満足したのか、鯨達は泳ぐ速度を上げて流児達と並泳を始めた。
「はははっ! よしよし」
ザトウクジラとマッコウクジラに囲まれるようにして泳ぐ。当然、その群れの中心には親に守られていた子鯨も居るわけで。
その中心に誘導され囲まれた流児は、同じく中心にいた子鯨達と戯れている。
その頭や体を撫でたり、餌を食べたりないのか可愛らしく要求してきたので小さな餌を直接あげたりしていた。
「ッ──~~~~!!」
そんな時だった。鯨達から、聞いたことのないような、警戒混じりの声が聞こえたのだ。
「なんだ? どうし──」
狭まる鯨の囲いに、警戒する理由を探すため周囲を見回す。
そして、流児は見付けてしまった。
自分達の遥か後方から、手を伸ばし口を開けて高速で迫る黒い異形──その満月の様な六つの瞳を。
「ッ~~~~!!!?」
口を抑え、声無き悲鳴を抑え込む。
恐怖に縮こまる体。泳ぐことを止めたせいか、どんどんと後ろへと下がって行く。
(マズイッ! 助け──)
「──任務遂行中……何故?」
焦り泳ごうとするも、四肢が凍り付いたように動かない。
すがるようにシエラを見るが、シエラは流児ではなく ヴォズマーを見つめていた。
「何をっ──うおっ……!?」
せめてシエラだけでもと、声を上げて気付けようとしたその時だった。
ザトウクジラの子供が、流児とシエラを庇うようにその口で呑み込み、二人を包み込んだ。
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