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ファーストチェイス
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「──対象が錯乱、落ち着かせます。対象を願います」
「……!」
シエラは流児を抱きかかえて落ち着かせようとし、ガザミに何か指示を出した。
「……!!」
ガザミはハサミを掲げて回遊魚の中からカツオを一匹を呼び出し、その背に乗った。そして二人の傍で泳ぎ続けるよう指示を出すと、後ろを向いて自身の戦いを始めた。
先ずは化け物のスピードを落とさねば激突してしまう。総判断したガザミは左のハサミを掲げ、怪物に向かって振り下ろした。すると、それによってシイラが動き出した。
シイラはそのまま後ろを向くと、化け物へと突撃。その開きっぱなしの口へと飛び込んで行った。
「■■■■~~~~!?」
自身の速度とシイラの速度、更に互いの質量が合わさった突撃は、それだけでも十分な効果を発揮する。
だがそれだけではない。突撃して尚その身を保ったシイラが、そのまま身体を振り鰓に自身を差し込んだのだ。
鰓とは、鰓を持つものにとって呼吸器であり、酸素を取り込むための肺の様な役割の重要な器官。血も多く通う部分でもあり、鰓を持つものにとっての弱点でもある。
「■■■■……!!」
そんな重要器官に異物が挟まってしまえば、怪物も獲物を追い掛けている場合では無いとスピードを落として対処する。
怪物は泳ぐスピードは落としたものの、追跡は諦めていない様子。鰓に挟まるシイラを除去し終わると、再び加速して来る。
「……!!」
ならばとガザミは両方のハサミを下に向けると、怪物に向かって振り上げた。下方を泳いでいたサワラが反応し、怪物へと向かう。
「■■■■……!」
怪物は相手の抵抗から学んだのか口を閉じる。しかしサワラ達にされた命令は突撃ではなかった。
サワラ達は、捕食時に見せる瞬間時速一〇〇キロメートルの速度で怪物に噛み付いたのだ。
「■■■■~~~~!??」
サワラの牙が怪物を貫く事はできない。しかし、表皮を撫でる不快感や、目や鰓を狙われた時の事を考えてしまったのか、怪物は怯み加速を止めてサワラを引き剥がそうと暴れ出す。
「──あと少しで到着です。このまま対処をお願いします」
「……!」
シエラの言葉にガザミは頷く。そしてこのまま畳み掛けるため、ガザミはハサミを上に掲げ怪物へと振り下ろし、とっておきの存在へと指示を出す。
「■■■■~~……!!」
サワラを全て叩き落とした怪物は、今度こそはと加速しようとした。
しかし、視界を覆う白いモヤとオレンジ色の粒が覆い隠したため出鼻を挫かれてしまう。
視界を覆うそれらを鰭腕を振るう事で散らし、事の元凶を探し、見付けた。
「──■■■■~~ーーーー!!!!」
そこに居たのは、その身を寄せ合って泳ぎ放精と放卵をしている鮭の群れだった。
あまりにも巫山戯た行為をされた怪物は、怒りから咆哮を上げる。
船の汽笛とも鯨の怒声とも取れるその声は、口や鰓蓋を大きく開けて放たれる。興奮したためか、鰓が赤く大きく膨れている。
視点は鮭に向けられており、弱点は剥き出し。そこを狙ってとっておきが突撃する。
「■■ッ!?」
怪物は初めて鰓から痛みを感じた。見ると、興奮し膨れ上がった鰓を、一匹の魚が噛み付いていたのだ。
バラクーダ。鋭い牙を持つ大型の魚だ。性格は獰猛で、自身と変わらないサイズの魚にも喰らいつき、その牙で真っ二つにして捕食することもある。
「■■■■ーーーー!!!!」
自身を傷付けた存在に、怪物が怒りの声を上げる。
すると、怪物の身体を深紅の光が覆い始めた。その光はバラクーダの牙を防ぎ、口や鰓への攻撃を妨害する。
やがて深紅の光が膨れ上がると、爆散。光弾が周囲にバラまかれる。
光弾は周囲にいたバラクーダを撃ち砕き、鮭の群れをバラバラにすると、その一つの光弾が流児達に向かって飛んできた。
「……!!」
ガザミは即座に乗っていたカツオに命令を飛ばしてジャンプ。シエラへと飛び移る。
光弾をカツオがその身を盾にして防ぐ。しかし、その際に発生した衝撃波が流児達を襲った。
「うわあああっ!?」
「──対衝撃波姿勢」
「……!?」
大きな衝撃波と、それによって発生した激流に巻き込まれる流児達。その衝撃波や激流に揉まれ、流児はシエラとはぐれてしまった。それによって、流児は更に酷いパニック状態に陥ってしまう。
「ああ、手がッシエラーー~~!?」
遠ざかるシエラ。泳ぐガザミ。冷える海。近付く深淵。轟く怪物の咆哮。
恐怖が限界を超えたのか、ついに叫び声すら上げられなくった流児は、そのまま意識を落としてしまった。
「……!」
シエラは流児を抱きかかえて落ち着かせようとし、ガザミに何か指示を出した。
「……!!」
ガザミはハサミを掲げて回遊魚の中からカツオを一匹を呼び出し、その背に乗った。そして二人の傍で泳ぎ続けるよう指示を出すと、後ろを向いて自身の戦いを始めた。
先ずは化け物のスピードを落とさねば激突してしまう。総判断したガザミは左のハサミを掲げ、怪物に向かって振り下ろした。すると、それによってシイラが動き出した。
シイラはそのまま後ろを向くと、化け物へと突撃。その開きっぱなしの口へと飛び込んで行った。
「■■■■~~~~!?」
自身の速度とシイラの速度、更に互いの質量が合わさった突撃は、それだけでも十分な効果を発揮する。
だがそれだけではない。突撃して尚その身を保ったシイラが、そのまま身体を振り鰓に自身を差し込んだのだ。
鰓とは、鰓を持つものにとって呼吸器であり、酸素を取り込むための肺の様な役割の重要な器官。血も多く通う部分でもあり、鰓を持つものにとっての弱点でもある。
「■■■■……!!」
そんな重要器官に異物が挟まってしまえば、怪物も獲物を追い掛けている場合では無いとスピードを落として対処する。
怪物は泳ぐスピードは落としたものの、追跡は諦めていない様子。鰓に挟まるシイラを除去し終わると、再び加速して来る。
「……!!」
ならばとガザミは両方のハサミを下に向けると、怪物に向かって振り上げた。下方を泳いでいたサワラが反応し、怪物へと向かう。
「■■■■……!」
怪物は相手の抵抗から学んだのか口を閉じる。しかしサワラ達にされた命令は突撃ではなかった。
サワラ達は、捕食時に見せる瞬間時速一〇〇キロメートルの速度で怪物に噛み付いたのだ。
「■■■■~~~~!??」
サワラの牙が怪物を貫く事はできない。しかし、表皮を撫でる不快感や、目や鰓を狙われた時の事を考えてしまったのか、怪物は怯み加速を止めてサワラを引き剥がそうと暴れ出す。
「──あと少しで到着です。このまま対処をお願いします」
「……!」
シエラの言葉にガザミは頷く。そしてこのまま畳み掛けるため、ガザミはハサミを上に掲げ怪物へと振り下ろし、とっておきの存在へと指示を出す。
「■■■■~~……!!」
サワラを全て叩き落とした怪物は、今度こそはと加速しようとした。
しかし、視界を覆う白いモヤとオレンジ色の粒が覆い隠したため出鼻を挫かれてしまう。
視界を覆うそれらを鰭腕を振るう事で散らし、事の元凶を探し、見付けた。
「──■■■■~~ーーーー!!!!」
そこに居たのは、その身を寄せ合って泳ぎ放精と放卵をしている鮭の群れだった。
あまりにも巫山戯た行為をされた怪物は、怒りから咆哮を上げる。
船の汽笛とも鯨の怒声とも取れるその声は、口や鰓蓋を大きく開けて放たれる。興奮したためか、鰓が赤く大きく膨れている。
視点は鮭に向けられており、弱点は剥き出し。そこを狙ってとっておきが突撃する。
「■■ッ!?」
怪物は初めて鰓から痛みを感じた。見ると、興奮し膨れ上がった鰓を、一匹の魚が噛み付いていたのだ。
バラクーダ。鋭い牙を持つ大型の魚だ。性格は獰猛で、自身と変わらないサイズの魚にも喰らいつき、その牙で真っ二つにして捕食することもある。
「■■■■ーーーー!!!!」
自身を傷付けた存在に、怪物が怒りの声を上げる。
すると、怪物の身体を深紅の光が覆い始めた。その光はバラクーダの牙を防ぎ、口や鰓への攻撃を妨害する。
やがて深紅の光が膨れ上がると、爆散。光弾が周囲にバラまかれる。
光弾は周囲にいたバラクーダを撃ち砕き、鮭の群れをバラバラにすると、その一つの光弾が流児達に向かって飛んできた。
「……!!」
ガザミは即座に乗っていたカツオに命令を飛ばしてジャンプ。シエラへと飛び移る。
光弾をカツオがその身を盾にして防ぐ。しかし、その際に発生した衝撃波が流児達を襲った。
「うわあああっ!?」
「──対衝撃波姿勢」
「……!?」
大きな衝撃波と、それによって発生した激流に巻き込まれる流児達。その衝撃波や激流に揉まれ、流児はシエラとはぐれてしまった。それによって、流児は更に酷いパニック状態に陥ってしまう。
「ああ、手がッシエラーー~~!?」
遠ざかるシエラ。泳ぐガザミ。冷える海。近付く深淵。轟く怪物の咆哮。
恐怖が限界を超えたのか、ついに叫び声すら上げられなくった流児は、そのまま意識を落としてしまった。
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