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海流遊泳
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「じゃんけんポン。俺の勝ち」
「……?!」
先へと進む最中、暇潰しにガザミとじゃんけんして遊んでいる流児。
「はっはっはっ……あれ、どうしたの?」
「──海域を移動します」
歩みを止めたシエラに流児が聞くと、シエラは何かを伝える様に指差した。
その方を見ると、大きな珊瑚礁の根元に、鯨でも余裕で入れる程の大きな洞窟が広がっていた。
「……まさか、あれが出口とか……?」
「──はい。出口へ向かうための通り道です」
「うそぉ!?」
しかし、シエラの指差した洞窟へは、目に見える程に激い海流が、洞窟の中へ向かって流れていたのだ。
流石に及び腰になる流児だが、シエラは気にしていない様子。
シエラは流児を見て頷くと、激流を指差して“行くよ”と言わんばかりに手を握り直し、強く地面を蹴った。
「──遊泳開始」
「わぁぁぁ!!?」
「……!?」
流児が覚悟を決める前に、シエラは激流に飛び込んだ。
落ちそうになったワタリガニを流児は慌てて手で押さえるが、流れに揉まれて姿勢を維持できないでいる。
「──バランスが維持できません」
「せめて一言──うああああッ?!」
「……!!」
海流に流されるままの流児。
下手に暴れると危険なのを理解してか、バランスを取ろうと引っ張るシエラに振り回されている。
そんな中、流児は視界に映るモノ達に意識を引かれた。
「おお、凄い!!」
それは、ビルの立ち並ぶ間を泳ぐ様々な種類の回遊魚の群れだった。
流児が暴れるのを止めたお陰か、シエラもバランスを取れ、安定して海流に乗ることが出来た。
海流が混ざるためか、交差点を過ぎる度に無数の回遊魚達が流児達と並泳する。その数が増えるごとに、流児の感情が昂って行く。
流児の横を、丸い額に緑と黄金に見紛う程体色の魚が通りすぎる。
「おお、シイラの群れだ!」
その反対から、流線型の体に横縞のある魚が突き抜けて行く。
「あれは……カツオ!」
下に目を向ければ、縦縞の目立つ細長い、しかし大きな体の魚が合流する。
「それに…サワラ! 」
流児達を覆う影に上を向けば、栄養を蓄えるために川から下った魚がゆっくりと降りてくる。
「えっ、鮭まで!?」
周囲を囲む銀の輝きを眺めていると、不意に怖じ気の走る牙を持つ巨大な魚が映る。
「うおっ、オニカマス……!」
しかし、そんな魚達は流児や他の魚の事なんか気にも止めず、皆それぞれが同じ方向に向かって泳いでいる。
「……何か変だけど……良いな、こういうの!」
現実では有り得ない様な光景を目に焼き付けるように見つめる流児。
昔、こんな光景を夢見たような、そんな過去を懐かしんでいると、景色が変わり始めた事に気付いた。
「……ちょっと冷えるな。北上したのかな──ん、なんだ?」
不意に肌を撫でる冷気とは違う、身体の芯に走る寒気に、流児は何気無く周囲を見回した。
「何か……黒い点が……あれはッ……!!」
最初に見えたのは、ただの黒い点だった。
それが段々と大きくなって行き、やがてその姿を明確に表した。
毒蛇の様な鏃型の頭。三対六つの満月の様な目。鱗のない粘液に覆われた黒い表皮を持つ長大な身体。胸鰭が変化した腕を伸ばし、針の羅列した様な歯を剥き出しにして向けてくる怪物。
「■■■■■■ーー~~!!!!」
流児が迷い込んだ元凶であり、未知の化け物である存在が、二人と一匹に襲い掛かってきたのだ。
「~~~~ッ!???」
未知の化け物。異形の存在。トラウマが隠れる場の無い、身動きもまともに取れない自身の不利な環境に脅威が現れたことで、流児は混乱や恐怖から錯乱してしまった。
ガザミを抱え、シエラの手を取り、必死に逃げようと身体を動かしている。しかし、それは無用なことだった。
保護対象が錯乱する中、一人と一匹は事態の解決のため行動を始める。
「……?!」
先へと進む最中、暇潰しにガザミとじゃんけんして遊んでいる流児。
「はっはっはっ……あれ、どうしたの?」
「──海域を移動します」
歩みを止めたシエラに流児が聞くと、シエラは何かを伝える様に指差した。
その方を見ると、大きな珊瑚礁の根元に、鯨でも余裕で入れる程の大きな洞窟が広がっていた。
「……まさか、あれが出口とか……?」
「──はい。出口へ向かうための通り道です」
「うそぉ!?」
しかし、シエラの指差した洞窟へは、目に見える程に激い海流が、洞窟の中へ向かって流れていたのだ。
流石に及び腰になる流児だが、シエラは気にしていない様子。
シエラは流児を見て頷くと、激流を指差して“行くよ”と言わんばかりに手を握り直し、強く地面を蹴った。
「──遊泳開始」
「わぁぁぁ!!?」
「……!?」
流児が覚悟を決める前に、シエラは激流に飛び込んだ。
落ちそうになったワタリガニを流児は慌てて手で押さえるが、流れに揉まれて姿勢を維持できないでいる。
「──バランスが維持できません」
「せめて一言──うああああッ?!」
「……!!」
海流に流されるままの流児。
下手に暴れると危険なのを理解してか、バランスを取ろうと引っ張るシエラに振り回されている。
そんな中、流児は視界に映るモノ達に意識を引かれた。
「おお、凄い!!」
それは、ビルの立ち並ぶ間を泳ぐ様々な種類の回遊魚の群れだった。
流児が暴れるのを止めたお陰か、シエラもバランスを取れ、安定して海流に乗ることが出来た。
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流児の横を、丸い額に緑と黄金に見紛う程体色の魚が通りすぎる。
「おお、シイラの群れだ!」
その反対から、流線型の体に横縞のある魚が突き抜けて行く。
「あれは……カツオ!」
下に目を向ければ、縦縞の目立つ細長い、しかし大きな体の魚が合流する。
「それに…サワラ! 」
流児達を覆う影に上を向けば、栄養を蓄えるために川から下った魚がゆっくりと降りてくる。
「えっ、鮭まで!?」
周囲を囲む銀の輝きを眺めていると、不意に怖じ気の走る牙を持つ巨大な魚が映る。
「うおっ、オニカマス……!」
しかし、そんな魚達は流児や他の魚の事なんか気にも止めず、皆それぞれが同じ方向に向かって泳いでいる。
「……何か変だけど……良いな、こういうの!」
現実では有り得ない様な光景を目に焼き付けるように見つめる流児。
昔、こんな光景を夢見たような、そんな過去を懐かしんでいると、景色が変わり始めた事に気付いた。
「……ちょっと冷えるな。北上したのかな──ん、なんだ?」
不意に肌を撫でる冷気とは違う、身体の芯に走る寒気に、流児は何気無く周囲を見回した。
「何か……黒い点が……あれはッ……!!」
最初に見えたのは、ただの黒い点だった。
それが段々と大きくなって行き、やがてその姿を明確に表した。
毒蛇の様な鏃型の頭。三対六つの満月の様な目。鱗のない粘液に覆われた黒い表皮を持つ長大な身体。胸鰭が変化した腕を伸ばし、針の羅列した様な歯を剥き出しにして向けてくる怪物。
「■■■■■■ーー~~!!!!」
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「~~~~ッ!???」
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