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一度目の衝撃。
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嘘のようなホントの話だけど。
小さい頃、洗濯物を取り込んで畳むのが僕の役割だった。まだ低学年で、出来るお手伝いの選択肢も少なかった頃の話。
庭の物干しに干してある洗濯物をカゴに突っ込んで、サンダルの足をパタパタいわせながら家の中に運ぶ。そして、一枚ずつ畳んで、家族ごとに用意されたカゴにしまっていく。それを各自がタンスなりクローゼットなりにしまう、というのがルール。
多少下手っぴでも構わないからと、自分一人に任されたこの仕事が誇らしくて、嬉々として手伝っていたことを覚えている。
そんなある日のこと。
いつものように裏返しになっている服に手をつっこんで、袖を引っ張り表に返していく。表のまま干すと太陽光にやられて服が傷みやすいのだと祖母がよく言っていた。
次々に引っくり返す作業を続けて、自分の分にたどり着いた。服の中に手を入れた途端、チクンと尋常じゃない痛みを感じた。
慌てて手を抜いたら、手首の下辺りに赤い点。
そして、突然現れたのは警戒色の黄色と黒。
蜂だった。
なんと、服の中に蜂が潜んでいたのだ。
どうしてそうなったのか理由は分からない。でも、確かに服の中に蜂がいて、手を突っ込んだら刺された。
痛みと恐怖に金切り声を上げた僕の元に、慌てて祖父が駆けつけた。泣きじゃくる僕と、室内で羽音を立てて飛ぶ蜂。祖父は窓を開け放って蜂を追い出すと、急いで僕の手を取り赤い点を見つけ、有無を言わさず車に放り込んで病院へと直行した。
幸いアナフィラキシーショックは起きなかった。
ただ、刺された腕は赤く熱を持って腫れたし、とにかくショックを受けた。日常に潜む思いもよらない落とし穴に出会ってしまったことが、どうしようもなく恐かった。
今まで一度も考えたことがなかった。手を入れたら蜂がいるかも、なんて考えて洋服に触れたことなど一度もない。だって、そんなはずないから。
なのに、起こり得ないことが起こるのだ、と知ってしまった今では、どんな理不尽も不幸も予測できない事態も、当たり前のように起きるのだと知ってしまった今では。
日常のすぐ裏に潜む危険や恐怖が脳裏にちらつくようになってしまって、不安で仕方なかった。いつでも最悪の事態がすぐ側で待ち構えているのではないかと思うと、何をしても恐かった。どんなに嬉しいことも楽しいことも、すぐに壊れてしまう脆いガラス細工みたいに見えて、心がすくんだ。
それ以来、服を干して取り込むときはいつも、嫌というほど叩いて何も出てこないことを確認してからじゃないと、取り込めなくなった。
今でも服を着るときには、ちらりと中を覗いて異常がないことを確かめないと袖に手を差し込めない。完全なトラウマだった。
馬鹿馬鹿しいとは分かっていても、そうせずにはいられない。そして、たった一度の出来事が、その後の人生を百八十度以上変えてしまうことを、僕は人生のとても早い段階で身をもって知ってしまったのだ。
そして、第二の転機が訪れる。
まるでアナフィラキシーショックのように、それは僕の心を刺した。
小さい頃、洗濯物を取り込んで畳むのが僕の役割だった。まだ低学年で、出来るお手伝いの選択肢も少なかった頃の話。
庭の物干しに干してある洗濯物をカゴに突っ込んで、サンダルの足をパタパタいわせながら家の中に運ぶ。そして、一枚ずつ畳んで、家族ごとに用意されたカゴにしまっていく。それを各自がタンスなりクローゼットなりにしまう、というのがルール。
多少下手っぴでも構わないからと、自分一人に任されたこの仕事が誇らしくて、嬉々として手伝っていたことを覚えている。
そんなある日のこと。
いつものように裏返しになっている服に手をつっこんで、袖を引っ張り表に返していく。表のまま干すと太陽光にやられて服が傷みやすいのだと祖母がよく言っていた。
次々に引っくり返す作業を続けて、自分の分にたどり着いた。服の中に手を入れた途端、チクンと尋常じゃない痛みを感じた。
慌てて手を抜いたら、手首の下辺りに赤い点。
そして、突然現れたのは警戒色の黄色と黒。
蜂だった。
なんと、服の中に蜂が潜んでいたのだ。
どうしてそうなったのか理由は分からない。でも、確かに服の中に蜂がいて、手を突っ込んだら刺された。
痛みと恐怖に金切り声を上げた僕の元に、慌てて祖父が駆けつけた。泣きじゃくる僕と、室内で羽音を立てて飛ぶ蜂。祖父は窓を開け放って蜂を追い出すと、急いで僕の手を取り赤い点を見つけ、有無を言わさず車に放り込んで病院へと直行した。
幸いアナフィラキシーショックは起きなかった。
ただ、刺された腕は赤く熱を持って腫れたし、とにかくショックを受けた。日常に潜む思いもよらない落とし穴に出会ってしまったことが、どうしようもなく恐かった。
今まで一度も考えたことがなかった。手を入れたら蜂がいるかも、なんて考えて洋服に触れたことなど一度もない。だって、そんなはずないから。
なのに、起こり得ないことが起こるのだ、と知ってしまった今では、どんな理不尽も不幸も予測できない事態も、当たり前のように起きるのだと知ってしまった今では。
日常のすぐ裏に潜む危険や恐怖が脳裏にちらつくようになってしまって、不安で仕方なかった。いつでも最悪の事態がすぐ側で待ち構えているのではないかと思うと、何をしても恐かった。どんなに嬉しいことも楽しいことも、すぐに壊れてしまう脆いガラス細工みたいに見えて、心がすくんだ。
それ以来、服を干して取り込むときはいつも、嫌というほど叩いて何も出てこないことを確認してからじゃないと、取り込めなくなった。
今でも服を着るときには、ちらりと中を覗いて異常がないことを確かめないと袖に手を差し込めない。完全なトラウマだった。
馬鹿馬鹿しいとは分かっていても、そうせずにはいられない。そして、たった一度の出来事が、その後の人生を百八十度以上変えてしまうことを、僕は人生のとても早い段階で身をもって知ってしまったのだ。
そして、第二の転機が訪れる。
まるでアナフィラキシーショックのように、それは僕の心を刺した。
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