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109. 目論み違い
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「良かった。コレで税金は期日までに払えるね。」
フィオンのアドバイス通りに作ったガラスの花瓶は、素人目に見ても高価な物であった。
なのでティティルナは、すっかり安心して、曇りの取れた笑顔でフィオンに話しかけたのだが、
しかし、そんなティティルナを見て、フィオンは少し困ったように彼女に言葉を返したのだった。
「いや……いくら高く売れそうな見込みでも、流石にコレ一個だけじゃ、目標金額には届かないよ。」
「えっ?」
「えっ??」
ティティルナが驚いて聞き返すと、彼女が驚いていることに、フィオンも驚いて聞き返した。
どうやら、二人の間には認識の齟齬があるようだった。
「一個じゃなくて、私何個も作るよ?期日まで後十日だから、二日に一個だったとしても五個位は売れるんじゃないの?」
ティティルナは、真面目な顔で自分の考えを話した。フィオンのさっきの話通り、一回に複数個は売れなくても、まだ十日もあるのだから、五、六個は売れるだろうと楽観的に考えていたのだ。
けれどもフィオンは、そんなティティルナの言葉に頭を抱えると、少し申し訳なさそうに説明をした。
「ティナ……高級品はね、そんな簡単に売れないんだよ……10日だと一個、頑張っても2個かな。」
「そんなぁ……」
フィオンが言うには、高級品を買ってくれる貴族に物を売るには、お屋敷に呼ばれる必要があり、その為には色々と段取りが必要だから、庶民の買い物の感覚とは大分異なるのだと言うのだ。
当てが外れて、ティティルナは分かりやすくテンションが下がってガックリと項垂れた。
「まぁティナ、そんなに落ち込まないで。他の力の使い方も試してみよう。他にもっと利益効率の良いのが見つかるかもしれないよ。ほら、次はコレをいってみようか」
落ち込むティティルナを気を紛らわすように、フィオンは新たな品物を取り出した。
それは、虫に喰われてボロボロに穴が空いた書物であった。
「これは貴重な古文書らしいんだけどね、見ての通り虫に喰われてボロボロだ。コレを、元の状態に戻せるかい?」
その書物は触ると崩れそうなほどボロボロで、1ページめくってみると、虫に喰われた穴から、向こう側が見える程だった。
果たしてこんな状態の書物を元の状態に戻せるだろうかと、ティティルナが戸惑っていると、またしても彼女の代わりにミッケが返事をしたのだった。
「それは無理にゃ。まず穴の分をどこかから持ってこなくてはならないからどこかのページが削られるし、何が書かれているか知らにゃいと再現できにゃいからにゃ」
「なるほど……って事はさっきの花瓶も、破片が足りて無かったら、元の大きさより小さくなるって事か」
「その通りにゃ」
カウンターの上にのり、やれやれといった感じでミッケは二人に説明をした。
するとフィオンは、古文書はすんなりと諦めて、また違う品物を取り出したのだった。
「じゃあ……これはどうかな?」
「これは……??」
そう言ってフィオンが次に取り出したのは、枯れた植物だった。
「これは、貴族の間で流行ってるメルティローズという希少な薔薇なんだけど枯れてしまったんだ。直せるかな?」
隣国の寒い地方の原産のこのメルティローズの鉢植えが、今貴族の中で大流行しているが、この国では中々手に入れることが難しいので、もし、枯れてしまった薔薇を元に戻せるのならば、またとないビジネスチャンスだとフィオンは睨んだのだ。
「うーん。どうだろう?」
ティティルナはフィオンから鉢植えを受け取ると、自信なさげに呟いた。
すると、やはり今回もミッケが横から口を挟んだのだった。
「それも出来にゃいにゃ。再生練金は時間経過は戻せにゃいにゃ」
「なるほど。そこまでは万能じゃないんだね。」
「当たり前だにゃ。」
「そう簡単には儲けられないか。」
残念そうにフィオンは呟いたが、その顔には落胆の色は無く、彼は直ぐに頭を切り替えて、また違う話を始めた。
———
#相変わらずスローペースですが、今年もファンタジー大賞にエントリーしました
#よろしければ応援お願いします
フィオンのアドバイス通りに作ったガラスの花瓶は、素人目に見ても高価な物であった。
なのでティティルナは、すっかり安心して、曇りの取れた笑顔でフィオンに話しかけたのだが、
しかし、そんなティティルナを見て、フィオンは少し困ったように彼女に言葉を返したのだった。
「いや……いくら高く売れそうな見込みでも、流石にコレ一個だけじゃ、目標金額には届かないよ。」
「えっ?」
「えっ??」
ティティルナが驚いて聞き返すと、彼女が驚いていることに、フィオンも驚いて聞き返した。
どうやら、二人の間には認識の齟齬があるようだった。
「一個じゃなくて、私何個も作るよ?期日まで後十日だから、二日に一個だったとしても五個位は売れるんじゃないの?」
ティティルナは、真面目な顔で自分の考えを話した。フィオンのさっきの話通り、一回に複数個は売れなくても、まだ十日もあるのだから、五、六個は売れるだろうと楽観的に考えていたのだ。
けれどもフィオンは、そんなティティルナの言葉に頭を抱えると、少し申し訳なさそうに説明をした。
「ティナ……高級品はね、そんな簡単に売れないんだよ……10日だと一個、頑張っても2個かな。」
「そんなぁ……」
フィオンが言うには、高級品を買ってくれる貴族に物を売るには、お屋敷に呼ばれる必要があり、その為には色々と段取りが必要だから、庶民の買い物の感覚とは大分異なるのだと言うのだ。
当てが外れて、ティティルナは分かりやすくテンションが下がってガックリと項垂れた。
「まぁティナ、そんなに落ち込まないで。他の力の使い方も試してみよう。他にもっと利益効率の良いのが見つかるかもしれないよ。ほら、次はコレをいってみようか」
落ち込むティティルナを気を紛らわすように、フィオンは新たな品物を取り出した。
それは、虫に喰われてボロボロに穴が空いた書物であった。
「これは貴重な古文書らしいんだけどね、見ての通り虫に喰われてボロボロだ。コレを、元の状態に戻せるかい?」
その書物は触ると崩れそうなほどボロボロで、1ページめくってみると、虫に喰われた穴から、向こう側が見える程だった。
果たしてこんな状態の書物を元の状態に戻せるだろうかと、ティティルナが戸惑っていると、またしても彼女の代わりにミッケが返事をしたのだった。
「それは無理にゃ。まず穴の分をどこかから持ってこなくてはならないからどこかのページが削られるし、何が書かれているか知らにゃいと再現できにゃいからにゃ」
「なるほど……って事はさっきの花瓶も、破片が足りて無かったら、元の大きさより小さくなるって事か」
「その通りにゃ」
カウンターの上にのり、やれやれといった感じでミッケは二人に説明をした。
するとフィオンは、古文書はすんなりと諦めて、また違う品物を取り出したのだった。
「じゃあ……これはどうかな?」
「これは……??」
そう言ってフィオンが次に取り出したのは、枯れた植物だった。
「これは、貴族の間で流行ってるメルティローズという希少な薔薇なんだけど枯れてしまったんだ。直せるかな?」
隣国の寒い地方の原産のこのメルティローズの鉢植えが、今貴族の中で大流行しているが、この国では中々手に入れることが難しいので、もし、枯れてしまった薔薇を元に戻せるのならば、またとないビジネスチャンスだとフィオンは睨んだのだ。
「うーん。どうだろう?」
ティティルナはフィオンから鉢植えを受け取ると、自信なさげに呟いた。
すると、やはり今回もミッケが横から口を挟んだのだった。
「それも出来にゃいにゃ。再生練金は時間経過は戻せにゃいにゃ」
「なるほど。そこまでは万能じゃないんだね。」
「当たり前だにゃ。」
「そう簡単には儲けられないか。」
残念そうにフィオンは呟いたが、その顔には落胆の色は無く、彼は直ぐに頭を切り替えて、また違う話を始めた。
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