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104. フィオネの作戦
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「まぁ、なんとか間に合いましたわね。」
昼の鐘が鳴る五分前に、アカデミー内の中庭に設けられた所定の場所に荷車を設置し、持ってきたパンを販売用に綺麗に並べ終えると、フィオネはホッと胸を撫で下ろしていた。
「店出てくるのが遅くなったから、結構ギリギリだったな。でもお昼休みに間に合って良かったよ。」
「全部売れると良いな。そしたら帰りは荷台が空で帰れるしな。」
ティルミオとジェラミーも、一仕事を終えて、地面に腰を下ろしてすっかりと寛いでいた。
これでもう、自分たちの役目は終わったと、ティルミオとジェラミーはそう思っていたのだが、しかし、フィオネはそんなだらけている二人に、立ち上がる様に急き立てたのだった。
「何を休んでるのです?貴方たちの仕事はまだ終わりじゃありませんよ?早く立ってくださる?」
「うん??」
「オレたち荷物運ぶだけじゃ無いのか?」
「当然、売り子もやるんですわ!その為に貴方たち二人を選んだんですから。」
「「どういう事だ??」」
フィオネの発言にティルミオもジェラミーも首を捻った。売り子をやるのは別に良いが、何故自分たちが選ばれたのかまるで分からないからだ。
するとフィオネは、怪訝そうな顔をしている二人に対して、自信満々に自分の考えを説明し始めたのだった。
「良いですか、アカデミーの学生は男子ならほっといても食べ物に群がります。けれどもそれが女子ともなると、ただ美味しそうなだけでは、決め手にかけるのです。」
「はぁ。」
「そこで、貴方たちです。歳が近い見慣れない男の子が売り子をやっている。この情報が出回れば、自然と見物しに女性徒も集まって来ますわ!」
思いもよらないフィオネの発言に、ティルミオとジェラミーは思わず顔を見合わせた。
お互い、顔には困惑の色を浮かべていた。
「……そんなに上手く行くかな?」
「オレたちにそんな集客力があるとは思えないけど……」
「勿論上手く行きますわ!貴方たち見た目はまぁまぁでも愛想良く笑顔で接客すれば大分上方修正されますから、大丈夫ですわ!」
その説明を聞いて、ジェラミーは分かりやすく(うわ、面倒くせぇ)という顔をしたが、売り子が居ないと始まらないので、渋々とフィオネの案を受け入れた。
しかしティルミオは、直ぐには同意をしなかった。ティルミオには引っかかる事があって怪訝な顔のままフィオネに問い返したのだ。
「でもさ、フィオネ。それならば俺たちじゃなくてフィオンに売り子を頼んだら良かったんじゃないか?」
ティルミオは当然の疑問をフィオネにぶつけた。彼女の兄フィオンは、まるで貴公子のようと称されるほど、誰が見ても見目が良いのだ。
女生徒を集めたいのならば、どう考えても適任はフィオンなのだ。
けれどもフィオネは、ティルミオのこの問い掛けには首を横に振ったのだった。
「それはダメですわ。お兄様の力は借りたくありませんの。これは、私一人で成し遂げたいのです。」
ティルミオの言う通り、きっとフィオンに売り子を頼めば、女生徒だけでなく教職員も簡単に集められただろう。それだけでなく、兄から有益なアドバイスも色々と貰えただろう。
けれどもフィオネは、この話は兄の手を借りずに自分一人でやり遂げると決めていたのだ。でないと自分がちゃんと商人として成長しているんだって事を証明出来ないから。
そんなフィオネの強い決意を察して、ティルミオはそれ以上は聞かなかった。その代わりに、ニカッとフィオネに笑いかけると、売り子の件を快諾したのだった。
「そっか。ま、俺たちでどこまで売れるか分からないけど、やれるだけやってみるよ。任せろ。」
ティルミオは兄だから、妹と同じ歳のフィオネが向上心を持って模索しながら奮闘している姿に、素直に年長者として応援したいと思ったのだ。
「よろしく頼みましてよ。貴方たちにかかってるんですから。」
「あぁ、任せろ。接客は得意だからな。」
「オレにはあんまり期待しないでくれよな。愛想なんて持ち合わせてないんだよ。その辺はティルミオに任せるよ。」
昼休みまであと少し。なんとか話がまとまりかけた所で、ジェラミーは何の気なしに、売り子はともかく笑顔で愛想良く接客なんて自分には出来ないと思っていた本音を溢した。
すると、そんなジェラミーの零した一言を聞いたフィオネは、難しい顔をしてジェラミーをマジマジと見つめたのだった。
「な……なんだよ、愛想良く出来ないけど、売り子はちゃんとやるから良いだろ?」
「……そうですわね。であれば、貴方は寡黙で無愛想なクールキャラでいきましょう。」
「はあ?!!」
フィオネは、今思い付いた新しい戦略を、真顔でジェラミーに言い渡した。
またしても突飛な彼女の戦略に、ジェラミーは思わず大きな声で聞き返したが、フィオネは構わずに自論を続けた。
「うん。それが良いですわ!正反対の選択肢を用意するのは王道の手口ですし。……いいですこと?貴方、今から必要最低限の言葉以外は絶対に喋ってはいけませんわ。無口でミステリアスな雰囲気でごり押すのです。いいですわね?!!」
「意味わかんねえよ?!」
「異論は認めませんわ。さぁ貴方たち、準備なさって。持ってきたパンを全て売り捌きますわよ!」
こうして、フィオネが強引に話をまとめると、アカデミーに昼休みを告げる鐘が鳴り響いたのだった。
昼の鐘が鳴る五分前に、アカデミー内の中庭に設けられた所定の場所に荷車を設置し、持ってきたパンを販売用に綺麗に並べ終えると、フィオネはホッと胸を撫で下ろしていた。
「店出てくるのが遅くなったから、結構ギリギリだったな。でもお昼休みに間に合って良かったよ。」
「全部売れると良いな。そしたら帰りは荷台が空で帰れるしな。」
ティルミオとジェラミーも、一仕事を終えて、地面に腰を下ろしてすっかりと寛いでいた。
これでもう、自分たちの役目は終わったと、ティルミオとジェラミーはそう思っていたのだが、しかし、フィオネはそんなだらけている二人に、立ち上がる様に急き立てたのだった。
「何を休んでるのです?貴方たちの仕事はまだ終わりじゃありませんよ?早く立ってくださる?」
「うん??」
「オレたち荷物運ぶだけじゃ無いのか?」
「当然、売り子もやるんですわ!その為に貴方たち二人を選んだんですから。」
「「どういう事だ??」」
フィオネの発言にティルミオもジェラミーも首を捻った。売り子をやるのは別に良いが、何故自分たちが選ばれたのかまるで分からないからだ。
するとフィオネは、怪訝そうな顔をしている二人に対して、自信満々に自分の考えを説明し始めたのだった。
「良いですか、アカデミーの学生は男子ならほっといても食べ物に群がります。けれどもそれが女子ともなると、ただ美味しそうなだけでは、決め手にかけるのです。」
「はぁ。」
「そこで、貴方たちです。歳が近い見慣れない男の子が売り子をやっている。この情報が出回れば、自然と見物しに女性徒も集まって来ますわ!」
思いもよらないフィオネの発言に、ティルミオとジェラミーは思わず顔を見合わせた。
お互い、顔には困惑の色を浮かべていた。
「……そんなに上手く行くかな?」
「オレたちにそんな集客力があるとは思えないけど……」
「勿論上手く行きますわ!貴方たち見た目はまぁまぁでも愛想良く笑顔で接客すれば大分上方修正されますから、大丈夫ですわ!」
その説明を聞いて、ジェラミーは分かりやすく(うわ、面倒くせぇ)という顔をしたが、売り子が居ないと始まらないので、渋々とフィオネの案を受け入れた。
しかしティルミオは、直ぐには同意をしなかった。ティルミオには引っかかる事があって怪訝な顔のままフィオネに問い返したのだ。
「でもさ、フィオネ。それならば俺たちじゃなくてフィオンに売り子を頼んだら良かったんじゃないか?」
ティルミオは当然の疑問をフィオネにぶつけた。彼女の兄フィオンは、まるで貴公子のようと称されるほど、誰が見ても見目が良いのだ。
女生徒を集めたいのならば、どう考えても適任はフィオンなのだ。
けれどもフィオネは、ティルミオのこの問い掛けには首を横に振ったのだった。
「それはダメですわ。お兄様の力は借りたくありませんの。これは、私一人で成し遂げたいのです。」
ティルミオの言う通り、きっとフィオンに売り子を頼めば、女生徒だけでなく教職員も簡単に集められただろう。それだけでなく、兄から有益なアドバイスも色々と貰えただろう。
けれどもフィオネは、この話は兄の手を借りずに自分一人でやり遂げると決めていたのだ。でないと自分がちゃんと商人として成長しているんだって事を証明出来ないから。
そんなフィオネの強い決意を察して、ティルミオはそれ以上は聞かなかった。その代わりに、ニカッとフィオネに笑いかけると、売り子の件を快諾したのだった。
「そっか。ま、俺たちでどこまで売れるか分からないけど、やれるだけやってみるよ。任せろ。」
ティルミオは兄だから、妹と同じ歳のフィオネが向上心を持って模索しながら奮闘している姿に、素直に年長者として応援したいと思ったのだ。
「よろしく頼みましてよ。貴方たちにかかってるんですから。」
「あぁ、任せろ。接客は得意だからな。」
「オレにはあんまり期待しないでくれよな。愛想なんて持ち合わせてないんだよ。その辺はティルミオに任せるよ。」
昼休みまであと少し。なんとか話がまとまりかけた所で、ジェラミーは何の気なしに、売り子はともかく笑顔で愛想良く接客なんて自分には出来ないと思っていた本音を溢した。
すると、そんなジェラミーの零した一言を聞いたフィオネは、難しい顔をしてジェラミーをマジマジと見つめたのだった。
「な……なんだよ、愛想良く出来ないけど、売り子はちゃんとやるから良いだろ?」
「……そうですわね。であれば、貴方は寡黙で無愛想なクールキャラでいきましょう。」
「はあ?!!」
フィオネは、今思い付いた新しい戦略を、真顔でジェラミーに言い渡した。
またしても突飛な彼女の戦略に、ジェラミーは思わず大きな声で聞き返したが、フィオネは構わずに自論を続けた。
「うん。それが良いですわ!正反対の選択肢を用意するのは王道の手口ですし。……いいですこと?貴方、今から必要最低限の言葉以外は絶対に喋ってはいけませんわ。無口でミステリアスな雰囲気でごり押すのです。いいですわね?!!」
「意味わかんねえよ?!」
「異論は認めませんわ。さぁ貴方たち、準備なさって。持ってきたパンを全て売り捌きますわよ!」
こうして、フィオネが強引に話をまとめると、アカデミーに昼休みを告げる鐘が鳴り響いたのだった。
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