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101. ティオの考え
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商売人のフィオンにとって、ティティルナ達の錬金術の使い方はあまりにも理解し難かった。
「何でこんな凄い力をパン作りにしか使ってないんだ?!!」
だから彼女たちの商才の無さを目の当たりにして、フィオンは思わず大きな声で突っ込みを入れたのだが、ティティルナもティルミオもポカンとした表情で、なぜフィオンがそんな事を言うのか分かっていない様だった。
「えっ、パンだけじゃないよ?ジャムとか、バターとか、紙も作ったよ……?あ、あと最近だとポーションも。」
「にしても!もっとやろうと思えば色々作れただろう?!」
「そうは言っても、材料費はかかるんだぜ?うちは元手が無いからこの前のマナポーション作るのも相当大変だったんだぞ。」
フィオンがどんなに力説しても、ティルミオもティティルナもいまいちピンと来ていない様で、相変わらずキョトンとしていた。
その二人の様子が信じられなくて、フィオンは更に声を荒げて話を続けたのだった。
「だったら!僕に融資を頼むとかあっただろう?こんな凄い能力、有効活用しないでどうする?!」
「活用してるよ?一次発酵もニ次発酵も無しに、一瞬でパンが作れるんだよ!」
「だからそういうのじゃなくって!!」
相変わらず理解していないティティルナたちに、フィオンはイライラし始めて、声が段々と大きくなっていった。
すると、フィオンの様子を黙って眺めていたフィオネが、ティティルナの事を思って白熱していく兄の暴走を止めたのだった。
「お兄様、落ち着いてください。お兄様の商売人としての気持ちは分かりますが、今は私が持ってきた話を進めるのが先決ですわ。明日、私はパンが100個絶対に必要なんです。そしてティナはお店で売る用のパンも必要だと言っている。けれどもティナが作れるパンの量は100個だけ。今はコレをどうするのか考えないとですわ!」
先程とは立場が入れ替わって妹のフィオネが兄フィオンを嗜めると、流石に冷静になって、フィオンは大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
「……そうだね。この件は後でじっくり話すとして、どうやってパンを用意するかを考えるのが先決だね。……ティナ、お店用には何個くらい用意しておきたいんだい?」
少し含みを持たせながらも、フィオンは直ぐに頭を切り替えて目の前の問題に立ち返り、改めてティティルナに状況を確認した。
「えっと……今の様子から考えて、40個位かな?廃棄は出したく無いし……」
「その、錬金術で作れるのは一回で100個なんだよね?」
「うん。私の今の魔力だとそれ以上やると具合が悪くなるんだ。朝100個作って、午後になって追加で作るって事なら出来るけど……」
ティティルナはフィオンに聞かれた事に一つづつ答えていった。すると、それを聞いたフィオネは渋い顔で口を挟んだのだった。
「それは困りますわ。お昼の時間までに100個必要なんです。」
「だよね……」
フィオネの要望にティティルナが困った顔をすると、今度はジェラミーが横から口を挟んだ。
「それなら、お店を午後から開ける事にしたらどうだ?」
「うーん……でも午前に買いに来る常連さんも居るから……」
皆が色々と意見を出してくるが、これぞ!という案は浮かばず、ティティルナは困った顔のまま頭を抱えて悩んだ。
そんな中でティルミオは、店内に陳列されたままのパンを見渡してある事をティティルナに確認したのだった。
「なぁティナ、このパンって多分余るよな?」
「うん。もうこの時間だからね。大分売れ残っちゃうね……」
ティティルナが少し悲しそうな顔で答えると、ティルミオはパンの陳列棚の前で腕を組んで、神妙な顔で売れ残りを眺めた。
「……なら、明日はこの売れ残ったパンで何とかするか。」
そう言ってティルミオは、売れ残ったパンの中から丸パンや白パン等の具材が入っていないパンを選別し始めた。
「どういうことですの?まさか、一日経ったパンをアカデミーに納品すると言うのですか?そんなのダメですわ!私はアカデミーと最高に美味しいパンを販売すると契約をしたのです。一日経った硬いパンでは、評判に悪影響が出ますわ!」
ティルミオの行動に、フィオネは思わず顔を顰めて抗議の声を上げた。
しかし、ティルミオはそんなフィオネの抗議を、やんわりと受け流したのだった。
「大丈夫だよフィオネ。硬いパンをそのままでは売らないから。」
そう言ってティルミオは、まあ見てなさいと言わんばかりにフィオネを手で制すると、作業を始めたのだった。
「何でこんな凄い力をパン作りにしか使ってないんだ?!!」
だから彼女たちの商才の無さを目の当たりにして、フィオンは思わず大きな声で突っ込みを入れたのだが、ティティルナもティルミオもポカンとした表情で、なぜフィオンがそんな事を言うのか分かっていない様だった。
「えっ、パンだけじゃないよ?ジャムとか、バターとか、紙も作ったよ……?あ、あと最近だとポーションも。」
「にしても!もっとやろうと思えば色々作れただろう?!」
「そうは言っても、材料費はかかるんだぜ?うちは元手が無いからこの前のマナポーション作るのも相当大変だったんだぞ。」
フィオンがどんなに力説しても、ティルミオもティティルナもいまいちピンと来ていない様で、相変わらずキョトンとしていた。
その二人の様子が信じられなくて、フィオンは更に声を荒げて話を続けたのだった。
「だったら!僕に融資を頼むとかあっただろう?こんな凄い能力、有効活用しないでどうする?!」
「活用してるよ?一次発酵もニ次発酵も無しに、一瞬でパンが作れるんだよ!」
「だからそういうのじゃなくって!!」
相変わらず理解していないティティルナたちに、フィオンはイライラし始めて、声が段々と大きくなっていった。
すると、フィオンの様子を黙って眺めていたフィオネが、ティティルナの事を思って白熱していく兄の暴走を止めたのだった。
「お兄様、落ち着いてください。お兄様の商売人としての気持ちは分かりますが、今は私が持ってきた話を進めるのが先決ですわ。明日、私はパンが100個絶対に必要なんです。そしてティナはお店で売る用のパンも必要だと言っている。けれどもティナが作れるパンの量は100個だけ。今はコレをどうするのか考えないとですわ!」
先程とは立場が入れ替わって妹のフィオネが兄フィオンを嗜めると、流石に冷静になって、フィオンは大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
「……そうだね。この件は後でじっくり話すとして、どうやってパンを用意するかを考えるのが先決だね。……ティナ、お店用には何個くらい用意しておきたいんだい?」
少し含みを持たせながらも、フィオンは直ぐに頭を切り替えて目の前の問題に立ち返り、改めてティティルナに状況を確認した。
「えっと……今の様子から考えて、40個位かな?廃棄は出したく無いし……」
「その、錬金術で作れるのは一回で100個なんだよね?」
「うん。私の今の魔力だとそれ以上やると具合が悪くなるんだ。朝100個作って、午後になって追加で作るって事なら出来るけど……」
ティティルナはフィオンに聞かれた事に一つづつ答えていった。すると、それを聞いたフィオネは渋い顔で口を挟んだのだった。
「それは困りますわ。お昼の時間までに100個必要なんです。」
「だよね……」
フィオネの要望にティティルナが困った顔をすると、今度はジェラミーが横から口を挟んだ。
「それなら、お店を午後から開ける事にしたらどうだ?」
「うーん……でも午前に買いに来る常連さんも居るから……」
皆が色々と意見を出してくるが、これぞ!という案は浮かばず、ティティルナは困った顔のまま頭を抱えて悩んだ。
そんな中でティルミオは、店内に陳列されたままのパンを見渡してある事をティティルナに確認したのだった。
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「うん。もうこの時間だからね。大分売れ残っちゃうね……」
ティティルナが少し悲しそうな顔で答えると、ティルミオはパンの陳列棚の前で腕を組んで、神妙な顔で売れ残りを眺めた。
「……なら、明日はこの売れ残ったパンで何とかするか。」
そう言ってティルミオは、売れ残ったパンの中から丸パンや白パン等の具材が入っていないパンを選別し始めた。
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しかし、ティルミオはそんなフィオネの抗議を、やんわりと受け流したのだった。
「大丈夫だよフィオネ。硬いパンをそのままでは売らないから。」
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