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99. パンの作り方
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フィオネからアカデミーで販売する用にパンを100個用意して欲しいと頼まれたティティルナは、困っていた。
店での販売分も合わせると、そんなに多くの量を用意するのは流石に無理なのだ。
「うーん、100個かぁ……」
「まぁ貴女には荷が重いかも知れませんが、私が折角取り付けて来た話ですのよ?出来ますわよね?!」
フィオネが折角取り付けてきた話だからフィオネの顔に泥を塗るような真似はしたくないけど、無理な物は無理なので、ティティルナは難色を示した。
すると、困ってるティティルナを助ける様に、不意に横からジェラミーが声を上げたのだった。
「んー……ならやっぱりアカデミーで出店販売中はこっちの店休んだら?どうせ客向かいの店に取られてるんだし。」
普通に考えて、パンが100個しか用意出来ないのであれば、それが最善だとジェラミーは思ったのだ。
しかし、この提案はフィオンによって却下された。
「いや、それは良くないよ。少しでも買いに来てくれるお客さんが居るのなら、絶対に取りこぼしてはいけないよ。こっちの店が休んだら、そんなお客さんまで向かいの店に奪われかねないからね。」
フィオンの言う事は尤もなので、一同は再び困ってしまった。
すると今度はティルミオが、フィオネに向かって尋ねたのだった。
「なぁ、フィオネ。アカデミー販売分を80個位に減らせないか?ティナに100個以上作らせる訳にはいかないんだ。」
「それは……出来ませんわ。生徒数を考えると100個は絶対に用意する必要があるのです。」
「うーん。困ったなぁ……」
何とかアカデミーに納品する分を減らせないかと思ったのだがそれも無理だと分かって、ティルミオとティティルナは頭を抱えてしまった。
すると、そんな風に悩んでいるティルミオとティティルナを見て、フィオネは不思議そうに声を上げたのだった。
「さっきから不思議なんですけれど、確かにティナ一人では厳しいかも知れませんが、ティオも手伝えば良いでしょう?」
当たり前のことだが、フィオネはパンを捏ねて、成形し、オーブンで焼いて作っていると思っている。
だから頑なに一人でパンを作ろうとしているティティルナも、手伝おうとしないティルミオも不思議に思ったのだ。
けれどもそれは出来ないのであった。
「それが出来れば、やってるよ……」
「意味が分かりませんわ?」
「うん。僕も何を言ってるのか分からないな。ティオがパンを作れない理由でもあるのかい?」
バツが悪そうにティルミオがそう呟くと、フィオネだけでなくフィオンも首を傾げて聞き返した。それも当然である。何せこの二人はティルミオがパン作りをティティルナ一人に任せている理由を知らないから。
なのでティルミオとティティルナは顔を見合わせると、意を決してフィオンとフィオネに今まで隠していた重大な秘密を明かしたのだった。
「それは……オーブンが無いからなの!!」
オーブンが無い。そんな事を聞かされて、フィオンとフィオネは思わず面食らって言葉を失った。
けれどもすぐに正気に戻ると、フィオンとフィオネは戸惑いの声を上げたのだった。
「……ごめん、ますます意味が分からないよ……」
「そうですわ。貴女たち何を言ってますの?オーブンが無くてどうやってパンを焼いていたというのです?」
二人が困惑するのも当然だった。パンを焼くにはオーブンが必要なのに、それが無いと言うのだから信じられる訳がないのだ。
だって、今までだって、今日だって、こうしてパンを売っているのだから。
「それは……焼いていたというか、錬成したというか……」
「……錬成?」
歯切れ悪くティルミオがそう説明するも、フィオンは更に訳が分からないといった様子で顔を顰めた。
当たり前である。錬金術なんて普通は思いつく物では無いから。
なのでティティルナは、ティルミオの袖を引っ張ると、兄にそっと耳打ちをした。
「これは……やってみせた方が早いと思うの。お兄ちゃん、パン一つ分の分量用意できる?」
「一つは無理だな。待ってろ、三つ分位で用意してくるよ。」
ティティルナにお願いされると、ティルミオは「ちょっと待ってて」と言い残してキッチンへと消えていった。
そして暫くすると、ボールの中に粉やら卵やら、パンの材料を全部一緒に入れた状態で戻ってきたのだった。
「一体何をするつもりなんだい?」
フィオンは、不可解な行動をするティルミオに、そう問いかけた。
パンを作るにしても、最初から材料を全部混ぜておくなんて作り方は普通では無いのでフィオンはティルミオが何をしようとしてるのか分からず益々困惑の色を浮かべたのだ。
すると、ボールを受け取ったティティルナが、少し緊張した面持ちでフィオンとフィオネに向かって説明を始めたのだった。
「えっと……二人とも驚かないでね。」
そう断りを入れてからティティルナは、目を閉じて深呼吸をし、そしてボールを掴んで呪文を唱えた。
「生産錬金!」
ティティルナが呪文を唱えると、ボールの中は白く発光し、そして次の瞬間には中の材料は全て消えて、ボールの中にはパンが3個入っていたのだった。
「……パン、こうやって作ってるの……」
そう言ってティティルナがフィオンとフィオネに手渡したそれは、まごう事なきパンであった。
あまりの展開にフィオンもフィオネも思考が止まってしまった。
店での販売分も合わせると、そんなに多くの量を用意するのは流石に無理なのだ。
「うーん、100個かぁ……」
「まぁ貴女には荷が重いかも知れませんが、私が折角取り付けて来た話ですのよ?出来ますわよね?!」
フィオネが折角取り付けてきた話だからフィオネの顔に泥を塗るような真似はしたくないけど、無理な物は無理なので、ティティルナは難色を示した。
すると、困ってるティティルナを助ける様に、不意に横からジェラミーが声を上げたのだった。
「んー……ならやっぱりアカデミーで出店販売中はこっちの店休んだら?どうせ客向かいの店に取られてるんだし。」
普通に考えて、パンが100個しか用意出来ないのであれば、それが最善だとジェラミーは思ったのだ。
しかし、この提案はフィオンによって却下された。
「いや、それは良くないよ。少しでも買いに来てくれるお客さんが居るのなら、絶対に取りこぼしてはいけないよ。こっちの店が休んだら、そんなお客さんまで向かいの店に奪われかねないからね。」
フィオンの言う事は尤もなので、一同は再び困ってしまった。
すると今度はティルミオが、フィオネに向かって尋ねたのだった。
「なぁ、フィオネ。アカデミー販売分を80個位に減らせないか?ティナに100個以上作らせる訳にはいかないんだ。」
「それは……出来ませんわ。生徒数を考えると100個は絶対に用意する必要があるのです。」
「うーん。困ったなぁ……」
何とかアカデミーに納品する分を減らせないかと思ったのだがそれも無理だと分かって、ティルミオとティティルナは頭を抱えてしまった。
すると、そんな風に悩んでいるティルミオとティティルナを見て、フィオネは不思議そうに声を上げたのだった。
「さっきから不思議なんですけれど、確かにティナ一人では厳しいかも知れませんが、ティオも手伝えば良いでしょう?」
当たり前のことだが、フィオネはパンを捏ねて、成形し、オーブンで焼いて作っていると思っている。
だから頑なに一人でパンを作ろうとしているティティルナも、手伝おうとしないティルミオも不思議に思ったのだ。
けれどもそれは出来ないのであった。
「それが出来れば、やってるよ……」
「意味が分かりませんわ?」
「うん。僕も何を言ってるのか分からないな。ティオがパンを作れない理由でもあるのかい?」
バツが悪そうにティルミオがそう呟くと、フィオネだけでなくフィオンも首を傾げて聞き返した。それも当然である。何せこの二人はティルミオがパン作りをティティルナ一人に任せている理由を知らないから。
なのでティルミオとティティルナは顔を見合わせると、意を決してフィオンとフィオネに今まで隠していた重大な秘密を明かしたのだった。
「それは……オーブンが無いからなの!!」
オーブンが無い。そんな事を聞かされて、フィオンとフィオネは思わず面食らって言葉を失った。
けれどもすぐに正気に戻ると、フィオンとフィオネは戸惑いの声を上げたのだった。
「……ごめん、ますます意味が分からないよ……」
「そうですわ。貴女たち何を言ってますの?オーブンが無くてどうやってパンを焼いていたというのです?」
二人が困惑するのも当然だった。パンを焼くにはオーブンが必要なのに、それが無いと言うのだから信じられる訳がないのだ。
だって、今までだって、今日だって、こうしてパンを売っているのだから。
「それは……焼いていたというか、錬成したというか……」
「……錬成?」
歯切れ悪くティルミオがそう説明するも、フィオンは更に訳が分からないといった様子で顔を顰めた。
当たり前である。錬金術なんて普通は思いつく物では無いから。
なのでティティルナは、ティルミオの袖を引っ張ると、兄にそっと耳打ちをした。
「これは……やってみせた方が早いと思うの。お兄ちゃん、パン一つ分の分量用意できる?」
「一つは無理だな。待ってろ、三つ分位で用意してくるよ。」
ティティルナにお願いされると、ティルミオは「ちょっと待ってて」と言い残してキッチンへと消えていった。
そして暫くすると、ボールの中に粉やら卵やら、パンの材料を全部一緒に入れた状態で戻ってきたのだった。
「一体何をするつもりなんだい?」
フィオンは、不可解な行動をするティルミオに、そう問いかけた。
パンを作るにしても、最初から材料を全部混ぜておくなんて作り方は普通では無いのでフィオンはティルミオが何をしようとしてるのか分からず益々困惑の色を浮かべたのだ。
すると、ボールを受け取ったティティルナが、少し緊張した面持ちでフィオンとフィオネに向かって説明を始めたのだった。
「えっと……二人とも驚かないでね。」
そう断りを入れてからティティルナは、目を閉じて深呼吸をし、そしてボールを掴んで呪文を唱えた。
「生産錬金!」
ティティルナが呪文を唱えると、ボールの中は白く発光し、そして次の瞬間には中の材料は全て消えて、ボールの中にはパンが3個入っていたのだった。
「……パン、こうやって作ってるの……」
そう言ってティティルナがフィオンとフィオネに手渡したそれは、まごう事なきパンであった。
あまりの展開にフィオンもフィオネも思考が止まってしまった。
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