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95. 謎の出店
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「お兄ちゃん大丈夫かな……」
時は少しだけ遡って、丁度ティルミオがエンシェントウルフと対峙している頃、店ではティティルナが兄の帰りを不安そうに待っていた。
「マナポーションは届けて貰ったし、何せミッケが助けに行ったんだから大丈夫だろ。」
店を手伝いながら一緒にティルミオの帰りを待っているジェラミーは、そんなティティルナを安心させようと、明るく笑いかけながら前向きな言葉をかけて彼女を落ち着かせようとした。
けれども、ジェラミーの言葉に、ティティルナの心配は余計に募ってしまったのだった。
ティティルナは、ティルミオだけでなく、ミッケの事も物凄く心配していたのだ。
「そう、ミッケ!ミッケも心配なのよ。だってミッケだよ?あんなに小さくて可愛いミッケが、魔物と戦えるとは思えないよ!」
「小さくて……可愛い……?」
アウリーサ洞窟でのアレを見ているジェラミーは、ティティルナがミッケに持つイメージを聞いて言葉に詰まった。ミッケの影が姿を変えたアレは、小さくも無いし可愛くも無かったのだ。
しかしその事は言ってはいけないような気がして、ジェラミーは言葉をぼかしてティティルナを励まし続けた。
「えーっと、大丈夫だ。あの猫は絶対に大丈夫だ。それはオレが保証する。」
「どうしてそう思うの?」
「えーっと、それはつまり……あの猫はバ……じゃなくて、猫であって猫でないからだ!」
危うくバケモノと言いそうになってジェラミーが慌てて誤魔化すと、ティティルナは少し怪訝な顔をしたが、ジェラミーが大丈夫だと言い張るのを聞いて次第に心配そうな表情は和らいでいった。
「確かに、ミッケは普通の猫じゃないものね……だから、大丈夫だよね?」
「あぁ、絶対大丈夫だ!」
「うん、ありがとうジェラミーさん!そうだね。絶対に大丈夫だから私はいつも通りお店を頑張らなきゃね!」
ジェラミーが力強く肯定すると、ティティルナの顔にようやく笑みが戻った。
そうして二人は暫くの間、いつも通り店番をしながらティルミオの帰りを待ったのだった。
しかし、どういう訳かこの日は、お昼の時間が近いというのに、パンが全く売れないのであった。
「にしても、客全然来ないな。昨日よりも少ないんじゃないか?」
「そうだね……。うーん、あの変な噂話はもう流れてないのに、中々客足って戻らないのね……」
お客の居ないパンが沢山陳列されたままの店内で、ティティルナとジェラミーは少しばかり途方に暮れていた。
数日前に流された変な噂のせいだとは思うが、それにしても今日はいつもに増してお客が来ないのだ。
流石に何かがおかしいと二人とも思い始めていたが、理由を探るよりも先にとりあえずこの状況を何とかしようと思って、徐にジェラミーが動いた。
「オレ、外で呼び込みして来てやるよ。」
「うん、ありがとう。」
そう言ってジェラミーは外に呼び込みに行こうとした。しかし店の扉を開けるや否や、ジェラミーは驚きの声を上げたのだった。
「何だよこれ?!」
ジェラミーの叫び声に驚いて、ティティルナもドアの側に駆け寄った。
「ジェラミーさん、どうしたの?!」
ドアを開けたらそこには、昨日までは無かった屋台が出店していて、多くの人が群がっていたのだった。
これにはティティルナも目を見張った。
「昨日まではあんな店無かったよな?!」
「うん……うちの前にあんなお店は無かった……」
「さぁさぁいらっしゃい!本日開店の屋台パン屋だよ!開店記念で、今日から五日間は全品半額だよ!!」
その屋台の店員は、大きな声を張り上げて道ゆく人々に片っ端から声をかけていた。
すると、その安さに惹かれて普段ならティティルナのパンを買いに来ていたお客さんも、屋台の方へと吸い寄せられていたのだった。
「半額って、マジかよ……」
「だからうちの店にお客さんが来なかったのね……」
あまりの光景にティティルナとジェラミーは戸惑いの表情を浮かべると、次の言葉が出てこなかった。
どうしてこう、次から次へとこのお店に嫌がらせが起こるのか。先日からおかしなことばかりでティティルナは泣きそうだった。するとその時、泣きそうなティティルナを助けるべく一人の味方がやって来たのだった。
「ティナ、なにやら大変な事になったね。」
「フィオンさん!なんか、急に変なお店が出来てるの!!」
「あぁ。そうみたいだね。」
ティティルナが店の前で呆然と立ちすくんでいると、この異常事態に気付いたフィオンが駆けつけてくれたのだ。
商売人として優秀なフィオンの登場に、ティティルナは少しだけホッとした。
フィオンなら、このなんでこんなことになっているのか良く分からない事態もきっと何とかしてくれる。根拠はないが長年の付き合いからティティルナはフィオンのことを全面に信頼していたのだ。
だから今回も、なんでも助けてくれる頼もしい幼馴染が何とかしてくると期待を寄せたのだが、しかし、フィオンの表情はいつもと違いずっと険しいままで、それがいかにこの事態が深刻であるかを物語ってるのであった。
時は少しだけ遡って、丁度ティルミオがエンシェントウルフと対峙している頃、店ではティティルナが兄の帰りを不安そうに待っていた。
「マナポーションは届けて貰ったし、何せミッケが助けに行ったんだから大丈夫だろ。」
店を手伝いながら一緒にティルミオの帰りを待っているジェラミーは、そんなティティルナを安心させようと、明るく笑いかけながら前向きな言葉をかけて彼女を落ち着かせようとした。
けれども、ジェラミーの言葉に、ティティルナの心配は余計に募ってしまったのだった。
ティティルナは、ティルミオだけでなく、ミッケの事も物凄く心配していたのだ。
「そう、ミッケ!ミッケも心配なのよ。だってミッケだよ?あんなに小さくて可愛いミッケが、魔物と戦えるとは思えないよ!」
「小さくて……可愛い……?」
アウリーサ洞窟でのアレを見ているジェラミーは、ティティルナがミッケに持つイメージを聞いて言葉に詰まった。ミッケの影が姿を変えたアレは、小さくも無いし可愛くも無かったのだ。
しかしその事は言ってはいけないような気がして、ジェラミーは言葉をぼかしてティティルナを励まし続けた。
「えーっと、大丈夫だ。あの猫は絶対に大丈夫だ。それはオレが保証する。」
「どうしてそう思うの?」
「えーっと、それはつまり……あの猫はバ……じゃなくて、猫であって猫でないからだ!」
危うくバケモノと言いそうになってジェラミーが慌てて誤魔化すと、ティティルナは少し怪訝な顔をしたが、ジェラミーが大丈夫だと言い張るのを聞いて次第に心配そうな表情は和らいでいった。
「確かに、ミッケは普通の猫じゃないものね……だから、大丈夫だよね?」
「あぁ、絶対大丈夫だ!」
「うん、ありがとうジェラミーさん!そうだね。絶対に大丈夫だから私はいつも通りお店を頑張らなきゃね!」
ジェラミーが力強く肯定すると、ティティルナの顔にようやく笑みが戻った。
そうして二人は暫くの間、いつも通り店番をしながらティルミオの帰りを待ったのだった。
しかし、どういう訳かこの日は、お昼の時間が近いというのに、パンが全く売れないのであった。
「にしても、客全然来ないな。昨日よりも少ないんじゃないか?」
「そうだね……。うーん、あの変な噂話はもう流れてないのに、中々客足って戻らないのね……」
お客の居ないパンが沢山陳列されたままの店内で、ティティルナとジェラミーは少しばかり途方に暮れていた。
数日前に流された変な噂のせいだとは思うが、それにしても今日はいつもに増してお客が来ないのだ。
流石に何かがおかしいと二人とも思い始めていたが、理由を探るよりも先にとりあえずこの状況を何とかしようと思って、徐にジェラミーが動いた。
「オレ、外で呼び込みして来てやるよ。」
「うん、ありがとう。」
そう言ってジェラミーは外に呼び込みに行こうとした。しかし店の扉を開けるや否や、ジェラミーは驚きの声を上げたのだった。
「何だよこれ?!」
ジェラミーの叫び声に驚いて、ティティルナもドアの側に駆け寄った。
「ジェラミーさん、どうしたの?!」
ドアを開けたらそこには、昨日までは無かった屋台が出店していて、多くの人が群がっていたのだった。
これにはティティルナも目を見張った。
「昨日まではあんな店無かったよな?!」
「うん……うちの前にあんなお店は無かった……」
「さぁさぁいらっしゃい!本日開店の屋台パン屋だよ!開店記念で、今日から五日間は全品半額だよ!!」
その屋台の店員は、大きな声を張り上げて道ゆく人々に片っ端から声をかけていた。
すると、その安さに惹かれて普段ならティティルナのパンを買いに来ていたお客さんも、屋台の方へと吸い寄せられていたのだった。
「半額って、マジかよ……」
「だからうちの店にお客さんが来なかったのね……」
あまりの光景にティティルナとジェラミーは戸惑いの表情を浮かべると、次の言葉が出てこなかった。
どうしてこう、次から次へとこのお店に嫌がらせが起こるのか。先日からおかしなことばかりでティティルナは泣きそうだった。するとその時、泣きそうなティティルナを助けるべく一人の味方がやって来たのだった。
「ティナ、なにやら大変な事になったね。」
「フィオンさん!なんか、急に変なお店が出来てるの!!」
「あぁ。そうみたいだね。」
ティティルナが店の前で呆然と立ちすくんでいると、この異常事態に気付いたフィオンが駆けつけてくれたのだ。
商売人として優秀なフィオンの登場に、ティティルナは少しだけホッとした。
フィオンなら、このなんでこんなことになっているのか良く分からない事態もきっと何とかしてくれる。根拠はないが長年の付き合いからティティルナはフィオンのことを全面に信頼していたのだ。
だから今回も、なんでも助けてくれる頼もしい幼馴染が何とかしてくると期待を寄せたのだが、しかし、フィオンの表情はいつもと違いずっと険しいままで、それがいかにこの事態が深刻であるかを物語ってるのであった。
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