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92. 決着
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「ミッケ?!!」
なんとティルミオの目の前を横切ったのは、よく見慣れた三毛猫……ミッケだったのだ。
(まさか、サーヴォルトさんの言っていた、心強い味方ってコレのこと?!)
全くの予想外の事態に、ティルミオは混乱した。
(確かにミッケは普通の猫じゃないけど……魔物と戦闘が出来るとは思えないし……)
家の中でゴロゴロしているミッケの姿しか知らないので、ティルミオは心配そうに急に現れたミッケを見つめた。
「猫?!一体どこから来た?!おい、猫!!何やってるんだ、お前が敵う相手じゃないぞ!!ほら、早く逃げろって!!」
困惑して言葉を失ったティルミオとは対照的に、ディランは、急に現れて勇敢にもエンシェントウルフに立ち向かおうとしている三毛猫を追い払おうと必死に叫んでいた。
普通、猫がエンシェントウルフに勝てる訳が無いから、このままではこの猫が殺されてしまうと、ディランは思ったのだ。
けれどもディランの呼びかけを無視して、ミッケはエンシェントウルフの前に立ちはだかって、全身の毛を逆立てて臨戦態勢に入ったのだった。
そんな所に立ったら、直ぐにエンシェントウルフに襲い掛かられて、この猫は可哀想だけどもう助からない。ディランはそう思った。
しかし、意外なことにエンシェントウルフは直ぐに攻撃せずに、どこか警戒するように、目の前の猫と睨み合ったのだった。
そう、エンシェントウルフの足が止まったのだ。
このチャンスをティルミオは見逃さなかった。
(ミッケ、有難う!!)
心の中でそう叫ぶと、ティルミオは急いで地面に手をついて狙いを定めて魔法を放った。
「武具錬金!!」
エンシェントウルフの喉を目掛けて、それを貫く想像した。
すると、地面が槍の様に盛り上がって、エンシェントウルフの喉に直撃したのだった。
……が、しかし。
ティルミオはエンシェントウルフの喉を貫く事は出来なかった。
なぜなら、エンシェントウルフの皮膚は硬く、土で出来た槍では、強度で負けてしまったのだ。
「嘘だろう?!!」
渾身の一撃が効かなくて、ティルミオは地面に膝をつきながら思わず叫んだ。
想像では、この一撃でエンシェントウルフを仕留める筈だったのに、目論見が外れてしまったのだ。
ティルミオは焦った。
しかし、そんなティルミオの内心など知らないディランは、今の攻撃を手放しで誉めたのだった。
「なるほど!先ずは喉を攻撃して仲間を呼ぶ咆哮を潰したのか。君、中々やるじゃないか!!」
「えっ?!あっ……だ、だろう?!俺、中々やるんだよ!」
勿論、ティルミオはそんなことまでは考えていなかったが、ここは素直にディランの誤解に乗っかった。
(そうか。意図してなかったけど、これで手下呼べなくなったのか。)
それが分かると少しだけ気が楽になって、ティルミオはマナポーションを飲み干すと、再びエンシェントウルフに挑む為に立ち上がった。
するとティルミオに呼応するかのように、ミッケは、今の攻撃で完全にエンシェントウルフに狙われてしまったティルミオを庇うようにエンシェントウルフの鼻っ先を引っ掻いて、再度狙いを自分に向けさせてたのだった。
「シャーーーーッ!!」
「グルルルルルルッ!」
二匹は威嚇し合うと、お互いに飛びかかり鋭い爪で攻撃を始めた。
ミッケは、ティルミオが狙われない様に、その一身にエンシェントウルフのヘイトを集めながら、俊敏な動きで攻撃を躱している。
そんなミッケが作ってくれた隙の間に、ティルミオは必死に次の一手を考えた。
(考えろ、考えるんだ。……武具錬金は触れた物を武具に変える錬金術。って事は、土よりもっと硬い物であれば……)
そう考えてティルミオは周囲を見渡して岩場を見つけると、ミッケに指示を出したのだった。
「ミッケ!あの岩場の上までエンシェントウルフを誘導してくれ!!」
「にゃあっ!」
ミッケにそう叫びながら、ティルミオ自身も岩場の下に向かった走り出した。
ミッケも、上手にエンシェントウルフを挑発しながら、しなやかに攻撃を避けつつ、言われた通りにエンシェントウルフを連れて岩場の上まで移動した。
そうして、岩場の上でミッケとエンシェントウルフが再び睨み合うと、ティルミオは岩場の下から手を付いて、魔法を放ったのだった。
「武具錬金!!」
ティルミオが放った魔法が、今度は見事にエンシェントウルフの喉に突き刺さった。そうしてエンシェントウルフは、力なくその場に倒れこむと、絶命したのだっが。
「た……倒したぞ!!これで俺の無実は証明されたんだよな?!」
ティルミオは魔力を使い切って、その場に崩れ落ちながら、大きな声で叫んだ。これでやっと家に帰れる。そう思ったのだ。
しかし、ディランの口から出た言葉は、ティルミオが欲しかった賞賛の言葉ではなく、目の前で今起こった出来事を疑う様な言葉であった。
「……信じられない。」
「はっ?」
目の前で、Aランクのモンスターを倒して見せたのに、そんな事を言われてしまって、ティルミオは思わず聞き返した。
ここまでやったのに、無実を信じて貰えなかったらたまったもんじゃ無い。
しかし、その心配は全くの杞憂であった。
ディランが興奮気味に続けて口にした言葉は、ティルミオが思っても見なかった言葉だったのだ。
「君、その力を国のために役立ててみないから?!魔導士の枠で私が推薦しよう!!」
「はぁ??!」
なんとティルミオは、国家魔導士にスカウトされてしまったのだった。
なんとティルミオの目の前を横切ったのは、よく見慣れた三毛猫……ミッケだったのだ。
(まさか、サーヴォルトさんの言っていた、心強い味方ってコレのこと?!)
全くの予想外の事態に、ティルミオは混乱した。
(確かにミッケは普通の猫じゃないけど……魔物と戦闘が出来るとは思えないし……)
家の中でゴロゴロしているミッケの姿しか知らないので、ティルミオは心配そうに急に現れたミッケを見つめた。
「猫?!一体どこから来た?!おい、猫!!何やってるんだ、お前が敵う相手じゃないぞ!!ほら、早く逃げろって!!」
困惑して言葉を失ったティルミオとは対照的に、ディランは、急に現れて勇敢にもエンシェントウルフに立ち向かおうとしている三毛猫を追い払おうと必死に叫んでいた。
普通、猫がエンシェントウルフに勝てる訳が無いから、このままではこの猫が殺されてしまうと、ディランは思ったのだ。
けれどもディランの呼びかけを無視して、ミッケはエンシェントウルフの前に立ちはだかって、全身の毛を逆立てて臨戦態勢に入ったのだった。
そんな所に立ったら、直ぐにエンシェントウルフに襲い掛かられて、この猫は可哀想だけどもう助からない。ディランはそう思った。
しかし、意外なことにエンシェントウルフは直ぐに攻撃せずに、どこか警戒するように、目の前の猫と睨み合ったのだった。
そう、エンシェントウルフの足が止まったのだ。
このチャンスをティルミオは見逃さなかった。
(ミッケ、有難う!!)
心の中でそう叫ぶと、ティルミオは急いで地面に手をついて狙いを定めて魔法を放った。
「武具錬金!!」
エンシェントウルフの喉を目掛けて、それを貫く想像した。
すると、地面が槍の様に盛り上がって、エンシェントウルフの喉に直撃したのだった。
……が、しかし。
ティルミオはエンシェントウルフの喉を貫く事は出来なかった。
なぜなら、エンシェントウルフの皮膚は硬く、土で出来た槍では、強度で負けてしまったのだ。
「嘘だろう?!!」
渾身の一撃が効かなくて、ティルミオは地面に膝をつきながら思わず叫んだ。
想像では、この一撃でエンシェントウルフを仕留める筈だったのに、目論見が外れてしまったのだ。
ティルミオは焦った。
しかし、そんなティルミオの内心など知らないディランは、今の攻撃を手放しで誉めたのだった。
「なるほど!先ずは喉を攻撃して仲間を呼ぶ咆哮を潰したのか。君、中々やるじゃないか!!」
「えっ?!あっ……だ、だろう?!俺、中々やるんだよ!」
勿論、ティルミオはそんなことまでは考えていなかったが、ここは素直にディランの誤解に乗っかった。
(そうか。意図してなかったけど、これで手下呼べなくなったのか。)
それが分かると少しだけ気が楽になって、ティルミオはマナポーションを飲み干すと、再びエンシェントウルフに挑む為に立ち上がった。
するとティルミオに呼応するかのように、ミッケは、今の攻撃で完全にエンシェントウルフに狙われてしまったティルミオを庇うようにエンシェントウルフの鼻っ先を引っ掻いて、再度狙いを自分に向けさせてたのだった。
「シャーーーーッ!!」
「グルルルルルルッ!」
二匹は威嚇し合うと、お互いに飛びかかり鋭い爪で攻撃を始めた。
ミッケは、ティルミオが狙われない様に、その一身にエンシェントウルフのヘイトを集めながら、俊敏な動きで攻撃を躱している。
そんなミッケが作ってくれた隙の間に、ティルミオは必死に次の一手を考えた。
(考えろ、考えるんだ。……武具錬金は触れた物を武具に変える錬金術。って事は、土よりもっと硬い物であれば……)
そう考えてティルミオは周囲を見渡して岩場を見つけると、ミッケに指示を出したのだった。
「ミッケ!あの岩場の上までエンシェントウルフを誘導してくれ!!」
「にゃあっ!」
ミッケにそう叫びながら、ティルミオ自身も岩場の下に向かった走り出した。
ミッケも、上手にエンシェントウルフを挑発しながら、しなやかに攻撃を避けつつ、言われた通りにエンシェントウルフを連れて岩場の上まで移動した。
そうして、岩場の上でミッケとエンシェントウルフが再び睨み合うと、ティルミオは岩場の下から手を付いて、魔法を放ったのだった。
「武具錬金!!」
ティルミオが放った魔法が、今度は見事にエンシェントウルフの喉に突き刺さった。そうしてエンシェントウルフは、力なくその場に倒れこむと、絶命したのだっが。
「た……倒したぞ!!これで俺の無実は証明されたんだよな?!」
ティルミオは魔力を使い切って、その場に崩れ落ちながら、大きな声で叫んだ。これでやっと家に帰れる。そう思ったのだ。
しかし、ディランの口から出た言葉は、ティルミオが欲しかった賞賛の言葉ではなく、目の前で今起こった出来事を疑う様な言葉であった。
「……信じられない。」
「はっ?」
目の前で、Aランクのモンスターを倒して見せたのに、そんな事を言われてしまって、ティルミオは思わず聞き返した。
ここまでやったのに、無実を信じて貰えなかったらたまったもんじゃ無い。
しかし、その心配は全くの杞憂であった。
ディランが興奮気味に続けて口にした言葉は、ティルミオが思っても見なかった言葉だったのだ。
「君、その力を国のために役立ててみないから?!魔導士の枠で私が推薦しよう!!」
「はぁ??!」
なんとティルミオは、国家魔導士にスカウトされてしまったのだった。
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