80 / 115
78. 気にしたら負け
しおりを挟む
「なるほどね……本当にあるんだな、贈り物って。」
「信じるのか?」
「そりゃ、そうじゃないと説明が付かないからね。」
御伽噺の世界の贈り物。正直言ってそんな物が本当に存在するなんてジェラミーは思ってもいなかったが、しかし、こうして目の前の兄妹と関わる中で起きた奇跡のような体験を思い返すと信じざるを得ないし、それ以外に納得しようが無かった。
「で、お前たちにはそんな凄い贈り物を一体誰から貰ったんだ?」
ジェラミーは興味本位から、二人に贈り物を贈った存在について尋ねた。
そんな凄い事ができる存在が一体何だったのか、そしてそんな凄い事ができる存在にどうして二人は出会えたのか純粋に知りたかったのだが、しかし、返ってきた答えはジェラミーが一番聞きたくない言葉だった。
「目の前にいるぞ」
「え?」
そう言って指差されたジェラミーの目の前には、ミッケがツンと澄ましてドヤ顔で鎮座していたのだ。
「……」
ジェラミーは、そっと目を逸らして聞かなかったことにしようとした。
贈り物を受け取って、魔法が使えると言う事実はまだ良い。珍しいけれども、魔法を使える人は他にもいるし、あり得ない事では無いから。
しかし、猫が喋るのは、どう考えてもあり得ないのだ。
だからジェラミーはこの現実から目を背けたかったのだが、しかし、ミッケはそれを許さなかった。
「にゃーーーっ!勘が悪い男だにゃあ!我に決まってるであろう!!目を逸らすんじゃにゃい!!」
「どうしよう、喋る猫なんて非現実的な事、一番触れたく無かったのに……あり得ないだろ?!何でお前、喋るんだよ?!」
「にゃんだ、失礼にゃ奴だにゃあ。下等なニンゲンめ、我に恐れ慄くにゃ!」
ミッケは、そう偉そうに胸を張って、ジェラミーに対しても、自分は凄い存在である事を威張って見せた。
しかしジェラミーは、それでも尚ミッケの存在をすんなりと受け入れられず、ティルミオにそっと耳打ちをしたのだった。
「……なぁ、おい、大丈夫なのか?お前たち得体の知れないモノに騙されてないか??後からアイツに魂抜かれたりしないか??」
それは、普通の人なら誰でも思う事で、その可能性を心配するのは当たり前であった。
けれども、そんな二人の会話はミッケ本人にも聞こえていて、事態はますます混沌と化したのだった。
「にゃーーーっ!!聞こえてるにゃ!!重ね重ね失礼にゃ奴だにゃあっ!!!我のどこが得体が知れにゃいにゃ?!!」
「どこから見ても得体が知れないだろ?!」
「そうだよ、ジェラミーさん!ミッケはただの可愛い猫だよ?」
「猫では無いよな?!」
「まぁジェラミー、細かいことは気にするな。俺たちはミッケのお陰で何とかやって来れたんだよ。」
「細かくは無いよな……?だいぶ大事だよな……?」
「まぁまぁジェラミーさんに、気にしたら負けだよ。……気にしたところで、理解出来ると思う?」
「……確かに……」
こうして、一人頭を抱えて頑なにミッケの存在を認めようとしなかったジェラミーであったが、最終的にはティルミオたちに感化されて、渋々ながらもミッケの存在を受け止めたのだった。
「……それで、お兄ちゃんたちに一体何があったの?」
話が一旦落ち着いたので、ティティルナは改まって兄たちの身に何が起こったのかを質問した。
あんなボロボロの状態で帰って来たのだから、只事では無いのは察しているが、ティティルナとしては、詳しい事が知りたかったのだ。
「それがな、嫌な奴らに因縁をつけられて気が付いたら洞窟の最深部で、沢山のアリの魔物に襲われて大変だったんだよ!」
「……」
ティティルナから問われて、ティルミオは身振り手振りを交えて、いかに自分たちが大変だったかを力説した。
……がしかし、彼のものすごい端折った説明では、案の定ティティルナには何も伝わらなかった。
「……ジェラミーさん、一体何があったんですか?」
なのでティティルナは、残念そうな目で兄を見遣ると、ティルミオの説明は丸々と無視して、ジェラミーに改めて同じ質問を問い直したのだった。
「ん?あぁ、嫌な感じの冒険者たちに目を付けられて、アウリーサ洞窟でルナストーンを採掘中に、そいつらに転移のスクロールっていう別の場所にワープさせるっていう魔法道具を使われて、オレ達は洞窟の最深部に飛ばされてしまったんだ。しかも運が悪い事に、飛ばされた先はA級モンスターの女王アリが率いている軍隊アリの巣で、もう少しで二人とも餌になっちまう所だったんだよ。」
ティルミオと同じ事を説明しているはずなのに、ジェラミーの説明とでは分かりやすさが天と地程の差があった。
「なるほど。ティオの説明よりずっと分かりやすいにゃ。小僧のくせにやるにゃ。」
ジェラミーの事を毛嫌いしているミッケでさえも素直に褒めるほど、その説明は分かりやすかったのだ。
なので、ティティルナはジェラミーのお陰で、兄たちの身に何が起こったのかを把握する事が出来たのだが、それと同時にいかに危険な状況だったかも理解してしまい、ゾッとしたのだった。
「ええっ……何それ怖い……二人とも無事で本当に良かったよ……」
「本当だよ。ティルミオが咄嗟に魔法を覚えてくれたお陰で命拾いしたよ。」
「それはつまり、ティオに贈り物を授けた我のお陰ってことだにゃ。感謝するんだにゃ!」
そうやって口々に思った事を言い合いながら、改めて二人が無事に帰って来れた事に安堵していたのだが、しかし、立役者であるティルミオだけは、どこか浮かない顔をしていたのだった。
「信じるのか?」
「そりゃ、そうじゃないと説明が付かないからね。」
御伽噺の世界の贈り物。正直言ってそんな物が本当に存在するなんてジェラミーは思ってもいなかったが、しかし、こうして目の前の兄妹と関わる中で起きた奇跡のような体験を思い返すと信じざるを得ないし、それ以外に納得しようが無かった。
「で、お前たちにはそんな凄い贈り物を一体誰から貰ったんだ?」
ジェラミーは興味本位から、二人に贈り物を贈った存在について尋ねた。
そんな凄い事ができる存在が一体何だったのか、そしてそんな凄い事ができる存在にどうして二人は出会えたのか純粋に知りたかったのだが、しかし、返ってきた答えはジェラミーが一番聞きたくない言葉だった。
「目の前にいるぞ」
「え?」
そう言って指差されたジェラミーの目の前には、ミッケがツンと澄ましてドヤ顔で鎮座していたのだ。
「……」
ジェラミーは、そっと目を逸らして聞かなかったことにしようとした。
贈り物を受け取って、魔法が使えると言う事実はまだ良い。珍しいけれども、魔法を使える人は他にもいるし、あり得ない事では無いから。
しかし、猫が喋るのは、どう考えてもあり得ないのだ。
だからジェラミーはこの現実から目を背けたかったのだが、しかし、ミッケはそれを許さなかった。
「にゃーーーっ!勘が悪い男だにゃあ!我に決まってるであろう!!目を逸らすんじゃにゃい!!」
「どうしよう、喋る猫なんて非現実的な事、一番触れたく無かったのに……あり得ないだろ?!何でお前、喋るんだよ?!」
「にゃんだ、失礼にゃ奴だにゃあ。下等なニンゲンめ、我に恐れ慄くにゃ!」
ミッケは、そう偉そうに胸を張って、ジェラミーに対しても、自分は凄い存在である事を威張って見せた。
しかしジェラミーは、それでも尚ミッケの存在をすんなりと受け入れられず、ティルミオにそっと耳打ちをしたのだった。
「……なぁ、おい、大丈夫なのか?お前たち得体の知れないモノに騙されてないか??後からアイツに魂抜かれたりしないか??」
それは、普通の人なら誰でも思う事で、その可能性を心配するのは当たり前であった。
けれども、そんな二人の会話はミッケ本人にも聞こえていて、事態はますます混沌と化したのだった。
「にゃーーーっ!!聞こえてるにゃ!!重ね重ね失礼にゃ奴だにゃあっ!!!我のどこが得体が知れにゃいにゃ?!!」
「どこから見ても得体が知れないだろ?!」
「そうだよ、ジェラミーさん!ミッケはただの可愛い猫だよ?」
「猫では無いよな?!」
「まぁジェラミー、細かいことは気にするな。俺たちはミッケのお陰で何とかやって来れたんだよ。」
「細かくは無いよな……?だいぶ大事だよな……?」
「まぁまぁジェラミーさんに、気にしたら負けだよ。……気にしたところで、理解出来ると思う?」
「……確かに……」
こうして、一人頭を抱えて頑なにミッケの存在を認めようとしなかったジェラミーであったが、最終的にはティルミオたちに感化されて、渋々ながらもミッケの存在を受け止めたのだった。
「……それで、お兄ちゃんたちに一体何があったの?」
話が一旦落ち着いたので、ティティルナは改まって兄たちの身に何が起こったのかを質問した。
あんなボロボロの状態で帰って来たのだから、只事では無いのは察しているが、ティティルナとしては、詳しい事が知りたかったのだ。
「それがな、嫌な奴らに因縁をつけられて気が付いたら洞窟の最深部で、沢山のアリの魔物に襲われて大変だったんだよ!」
「……」
ティティルナから問われて、ティルミオは身振り手振りを交えて、いかに自分たちが大変だったかを力説した。
……がしかし、彼のものすごい端折った説明では、案の定ティティルナには何も伝わらなかった。
「……ジェラミーさん、一体何があったんですか?」
なのでティティルナは、残念そうな目で兄を見遣ると、ティルミオの説明は丸々と無視して、ジェラミーに改めて同じ質問を問い直したのだった。
「ん?あぁ、嫌な感じの冒険者たちに目を付けられて、アウリーサ洞窟でルナストーンを採掘中に、そいつらに転移のスクロールっていう別の場所にワープさせるっていう魔法道具を使われて、オレ達は洞窟の最深部に飛ばされてしまったんだ。しかも運が悪い事に、飛ばされた先はA級モンスターの女王アリが率いている軍隊アリの巣で、もう少しで二人とも餌になっちまう所だったんだよ。」
ティルミオと同じ事を説明しているはずなのに、ジェラミーの説明とでは分かりやすさが天と地程の差があった。
「なるほど。ティオの説明よりずっと分かりやすいにゃ。小僧のくせにやるにゃ。」
ジェラミーの事を毛嫌いしているミッケでさえも素直に褒めるほど、その説明は分かりやすかったのだ。
なので、ティティルナはジェラミーのお陰で、兄たちの身に何が起こったのかを把握する事が出来たのだが、それと同時にいかに危険な状況だったかも理解してしまい、ゾッとしたのだった。
「ええっ……何それ怖い……二人とも無事で本当に良かったよ……」
「本当だよ。ティルミオが咄嗟に魔法を覚えてくれたお陰で命拾いしたよ。」
「それはつまり、ティオに贈り物を授けた我のお陰ってことだにゃ。感謝するんだにゃ!」
そうやって口々に思った事を言い合いながら、改めて二人が無事に帰って来れた事に安堵していたのだが、しかし、立役者であるティルミオだけは、どこか浮かない顔をしていたのだった。
10
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる