74 / 115
72. 脱出
しおりを挟む
「見ろ、ジェラミー。光が見えたぞ。」
ダンジョンの最深部から、ティルミオはジェラミーを背負って、安全且つ最短ルートを通って、洞窟の入り口付近まで戻って来ていた。
「一時はどうなるかと思ったけど、これで一安心だな。本当に、ティルミオのお陰だよ。お前凄いよ、良く道が分かるよな。」
「まぁね。それが俺の取り柄だからね。」
もはや取り柄などと言う一言では片付けられない位の活躍であったが、目と勘が良いという事にしてあるので、ティルミオは曖昧に話を合わせて答えた。
「なるほど……取り柄、ね。」
「そそ、取り柄。」
背中で意味深にジェラミーは呟いたが、それ以上は何も言わなかったので、ティルミオは誤魔化すように相槌を打って、この話題は終わりになった。
何故なら、二人は遂に洞窟の出口に到達したのだ。
「やった!外だ!!」
「はぁ、はぁ……やっと出られた……」
二人は外の光を浴びると、二人は顔を見合わせてお互いに胸を撫で下ろした。
すると、安堵からか一気に疲労感が増してきて、二人とも思わず洞窟入り口の地面に横たわったのだった。
「君たち大丈夫か?ボロボロじゃないか!」
「……何とか大丈夫です。」
入り口に立っていた兵士の一人が、そんな二人の様子を見かねて、気遣う様に声をかけてきた。
なにせ、慣れない戦闘に加えてダンジョンの最深部からここまでジェラミーを背負って来たティルミオは、見るからに疲労困憊でグッタリしているし、ジェラミーも身に付けている防具は蟻に齧られてボロボロだし、彼自身が全身に齧られた跡があって、二人の状態が酷いのは、それはもう一目瞭然だったのだ。
「見ての通りのザマだからさ、早く街に帰りたいんだ。荷物検査をとっととやってくれないか?」
「あ……あぁ、分かった。それじゃあ、あのパーティの次に……」
そう言って兵士が指差した方に目を向けると、そこでは先着のパーティーが荷物検査を受けて居る所だった。
しかし、その光景を見たティルミオは、疲労など忘れて大きな声を上げてしまった。
「ああぁっ!アイツら!!」
なんと、ティルミオたちに酷い事をしたあの三人組が、洞窟から出るための荷物検査を受けて居る所だったのだ。
「兵士さん!そいつら、そいつらが俺たちに転移のスクロールを使ってダンジョンの深部に置き去りにしたんだ!!」
思わず飛び起きて、ティルミオは彼らを検査している兵士の方へ駆け寄ると、彼らの悪行を兵士に訴えた。
すると、突然横から訳の分からない事を言われて兵士は戸惑ったが、兵士以上に、三人組の方がここにティルミオたちが居ることに動揺したのだった。
「なっ……お前たち何を言ってるんだい?そんな事する訳ないだろう?転移のスクロールなんて高価なアイテムを、他人に使うなんて馬鹿な事する奴居ないだろう?」
「居るよ!目の前に!おっさん達だ!!」
「証拠は?証拠も無しにそんな事を言われるのな心外だ。」
「ぐっ……」
男の言う通り、確かに物証は何もなかったので、ティルミオは黙ってしまった。
転移のスクロールは、使ったら塵になって消えてしまうし魔力反応も残らないので、それを使ったと証明するのはほとんど不可能なのだ。
(何か……何かこいつらの悪事を証明できる物はないか?!)
どうにかしてこの冒険者達を罰したくて、ティルミオは注意深く三人を視た。
しかし、光って見えたのは、彼らが持って帰ってきたルナストーンだけであった。
そうこうしている内に、三人組の持ち物検査は進んだ。
「クエスト依頼分のルナストーンがこれで、他に持ち出しは無いか?」
「あぁ。クエスト依頼分だけだ。」
「確認する。」
そう言うと兵士は、持ち出す鉱石の量を口頭で確認すると、手鏡の様な形の魔法道具で男の全身をかざした。
もしも、鉱石を隠し持っていると、魔法道具に付いている石の色が青から赤に変るのだ。
そして、そんな魔法道具をかざして男の全身を調べたが、魔法道具の石の色は青色のままなのだった。
「確かに、鉱石の反応は無いな。よし、通っていいぞ。」
しかし、この判定に驚いてティルミオは思わず大きな声を上げてしまった。
「えぇっ?!ちょっと待ってよ。役人さん、コイツら、物凄くルナストーン隠し持ってるよ!!」
そう。ティルミオが観察眼でこの三人組を見た時、三人とものカバンや服の下に沢山のルナストーンが視えたのだ。
しかし、ティルミオの言う事は、ジェラミー以外は誰も信じてくれなかったのだった。
ダンジョンの最深部から、ティルミオはジェラミーを背負って、安全且つ最短ルートを通って、洞窟の入り口付近まで戻って来ていた。
「一時はどうなるかと思ったけど、これで一安心だな。本当に、ティルミオのお陰だよ。お前凄いよ、良く道が分かるよな。」
「まぁね。それが俺の取り柄だからね。」
もはや取り柄などと言う一言では片付けられない位の活躍であったが、目と勘が良いという事にしてあるので、ティルミオは曖昧に話を合わせて答えた。
「なるほど……取り柄、ね。」
「そそ、取り柄。」
背中で意味深にジェラミーは呟いたが、それ以上は何も言わなかったので、ティルミオは誤魔化すように相槌を打って、この話題は終わりになった。
何故なら、二人は遂に洞窟の出口に到達したのだ。
「やった!外だ!!」
「はぁ、はぁ……やっと出られた……」
二人は外の光を浴びると、二人は顔を見合わせてお互いに胸を撫で下ろした。
すると、安堵からか一気に疲労感が増してきて、二人とも思わず洞窟入り口の地面に横たわったのだった。
「君たち大丈夫か?ボロボロじゃないか!」
「……何とか大丈夫です。」
入り口に立っていた兵士の一人が、そんな二人の様子を見かねて、気遣う様に声をかけてきた。
なにせ、慣れない戦闘に加えてダンジョンの最深部からここまでジェラミーを背負って来たティルミオは、見るからに疲労困憊でグッタリしているし、ジェラミーも身に付けている防具は蟻に齧られてボロボロだし、彼自身が全身に齧られた跡があって、二人の状態が酷いのは、それはもう一目瞭然だったのだ。
「見ての通りのザマだからさ、早く街に帰りたいんだ。荷物検査をとっととやってくれないか?」
「あ……あぁ、分かった。それじゃあ、あのパーティの次に……」
そう言って兵士が指差した方に目を向けると、そこでは先着のパーティーが荷物検査を受けて居る所だった。
しかし、その光景を見たティルミオは、疲労など忘れて大きな声を上げてしまった。
「ああぁっ!アイツら!!」
なんと、ティルミオたちに酷い事をしたあの三人組が、洞窟から出るための荷物検査を受けて居る所だったのだ。
「兵士さん!そいつら、そいつらが俺たちに転移のスクロールを使ってダンジョンの深部に置き去りにしたんだ!!」
思わず飛び起きて、ティルミオは彼らを検査している兵士の方へ駆け寄ると、彼らの悪行を兵士に訴えた。
すると、突然横から訳の分からない事を言われて兵士は戸惑ったが、兵士以上に、三人組の方がここにティルミオたちが居ることに動揺したのだった。
「なっ……お前たち何を言ってるんだい?そんな事する訳ないだろう?転移のスクロールなんて高価なアイテムを、他人に使うなんて馬鹿な事する奴居ないだろう?」
「居るよ!目の前に!おっさん達だ!!」
「証拠は?証拠も無しにそんな事を言われるのな心外だ。」
「ぐっ……」
男の言う通り、確かに物証は何もなかったので、ティルミオは黙ってしまった。
転移のスクロールは、使ったら塵になって消えてしまうし魔力反応も残らないので、それを使ったと証明するのはほとんど不可能なのだ。
(何か……何かこいつらの悪事を証明できる物はないか?!)
どうにかしてこの冒険者達を罰したくて、ティルミオは注意深く三人を視た。
しかし、光って見えたのは、彼らが持って帰ってきたルナストーンだけであった。
そうこうしている内に、三人組の持ち物検査は進んだ。
「クエスト依頼分のルナストーンがこれで、他に持ち出しは無いか?」
「あぁ。クエスト依頼分だけだ。」
「確認する。」
そう言うと兵士は、持ち出す鉱石の量を口頭で確認すると、手鏡の様な形の魔法道具で男の全身をかざした。
もしも、鉱石を隠し持っていると、魔法道具に付いている石の色が青から赤に変るのだ。
そして、そんな魔法道具をかざして男の全身を調べたが、魔法道具の石の色は青色のままなのだった。
「確かに、鉱石の反応は無いな。よし、通っていいぞ。」
しかし、この判定に驚いてティルミオは思わず大きな声を上げてしまった。
「えぇっ?!ちょっと待ってよ。役人さん、コイツら、物凄くルナストーン隠し持ってるよ!!」
そう。ティルミオが観察眼でこの三人組を見た時、三人とものカバンや服の下に沢山のルナストーンが視えたのだ。
しかし、ティルミオの言う事は、ジェラミー以外は誰も信じてくれなかったのだった。
10
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
男爵令嬢のまったり節約ごはん
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
旧題:【美味しい】男爵令嬢のまったり節約ごはん! 〜婚約破棄したのに戻ってこいなんて、お断りです。貴族の地位?いらないのでお野菜くださいな?
書籍化決定! レジーナ文庫さんより12月下旬発売予定です。
男爵令嬢のアメリア・ローズベリーは、長年の婚約者であった伯爵令息のスペンス・グレイに突然の婚約破棄を突きつけられた。
さんざん待たされた上の婚約破棄だった。
どうやらスペンスは、数年前からメイドとできていたらしい。
結婚適齢期をとうに過ぎていたアメリア。もう貰い手もない。
あまりお金のない弱小貴族である実家・ローズベリー家のためもあり、形式上の婚約に、これまでは耐えてきたが…………。
もう我慢の限界だった。
好きなことをして生きようと決めた彼女は、結婚を諦め、夢だった料理屋をオープンする。
彼女には特殊な精霊獣を召喚する力があり、
その精霊獣は【調味料生成】という特殊魔法を使うことができたのだ!
その精霊は異世界にも精通しており、アメリアは現代日本の料理まで作ることができた(唐揚げ美味しい)。
そんな彼女がオープンした店のコンセプトは、風変わりではあるが『節約』!
アメリアは貧乏な実家で培ってきた節約術で、さまざまな人の舌と心を虜にしていく。
庶民として、貴族であったことは隠して穏やかに暮らしたいアメリア。
しかし彼女のそんな思いとは裏腹に、店の前で倒れていたところを助けた相手は辺境伯様で……。
見目麗しい彼は、アメリアを溺愛しはじめる。
そんな彼を中心に、時に愉快なお客様たちを巻き込みながら、アメリアは料理道に邁進するのだった(唐揚げ美味しい)
※ スペンスsideのお話も、間隔は空きますが続きます。引き続きブクマしていただければ嬉しいです。
♢♢♢
2021/8/4〜8/7 HOTランキング1位!
2021/8/4〜8/9 ファンタジーランキング1位!
ありがとうございます!
同じ名前のヒーローとヒロインで書いてる人がいるようですが、特に関係はありませんのでよろしくお願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる