三毛猫ミッケの贈り物〜借金返済の為に兄妹で錬金術始めました〜

石月 和花

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60. 明日こそ

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「えっー!お兄ちゃんマナポーションを買うの忘れたなんて信じられない!!何しにギルド行ったの?!」
「何しにって、仕事しにだよ!!」
「にしても、昨日任せろって堂々と言ったのに、忘れるだにゃんて、恥ずかしい奴だにゃあ。」
「くそっ、これに関しては何も言い返せない……」

 冒険者ギルドの仕事から帰宅すると、ティルミオはマナポーションを買い忘れた事を、案の定ティティルナとミッケに詰られていた。
 がっかりした顔の妹と、こいつ使えにゃいにゃといった目で見下してくる飼い猫を前に、ティルミオは兎に角謝るしかなかった。

「ごめんって、明日、明日は絶対に忘れずに買ってくるから!」

 そんな平謝りのティルミオを、ティティルナは仕方ないなぁという感じで眺めて許してあげた。
 なぜなら、マナポーションを作る上でもっと重大な問題が発覚していたからだ。

「まぁ、でも、例えマナポーションが手に入ってたとしても、作るのは無理だったんだよね。お兄ちゃん、ほら、これ見てよ。」

 そう言いながら、ティティルナはフィオネの持って来てくれた本のマナポーションの精製方法のページを開いてティルミオに見せた。

「フィオネに本を持って来てもらって、マナポーションの作り方は分かったんだけど、ルナストーンていう、知らない材料も必要なんだって。」

 ティティルナは困った様子でティルミオに初めて聞いた鉱石について相談をした。ルナストーンは蒼生草と違って、入手方法が分からないのだ。
 一応、長く生きているミッケに聞いてみたけども、家猫暮らしが長いミッケはそういった町の外の情報は詳しく無く、耳と尻尾を垂れて少し申し訳なさそうに「知らにゃい」と答えるしかなかったのだった。
 だからティティルナは、先ずはマナポーション入手よりもルナストーンの入手方法を調べる必要があると兄に持ちかけたのだ。

 するとティルミオは、そんな風に困った顔をしている妹とは対照的に、さも当たり前かの様な顔で、事も無げに答えたのだった。

「あー、ルナストーンだろう?俺もジェラミーから聞いた。明日、採ってくるよ。」
「そうなの?!これってそんな簡単に手に入るの?!」

 余りにも平然ととティルミオが言ってのけるので、ティティルナは驚いてしまったが、そんな妹の様子に構わず、ティルミオは自信満々に話を続ける。

「あぁ。アウリーサ洞窟で採掘出来るんだって。希少な鉱石らしいけど、俺が視れば直ぐ見つけられるから、任せろ!」

 そう言ってティルミオが、自分の胸をドンっと叩いて任せておけと胸を張ったので、そんな兄の様子に、ティティルナは目を輝かせて喜んだのだった。

「凄い、お兄ちゃんが急に頼もしく見えるよ!!」
「俺はいつだって、頼もしいよ!明日忘れずにマナポーションも買ってくるし、ルナストーンも採ってくる。今度こそ任せろ!」
「うん、うん!お兄ちゃんに任せたよ!」

 そんなティルミオとティティルナのやり取りを、ミッケは少し離れた所で疑う様な目で眺めて居た。そして、ため息を一つ吐くと、その疑心をポツリと溢した。

「ホントかにゃ……ティオだからにゃあ……」

 ミッケは、ティルミオには厳しかったが、何も本気で疑っている訳では無く、いつもの感じでティルミオを揶揄ったのだ。
 するとそんなミッケを、ティティルナはわしゃわしゃと乱暴に撫でて嗜めたのだった。

「ダメよ、ミッケ。こういう時は嘘でも期待してるフリをしないと本人のやる気を削ぐわ。」

 本人の目の前で、本人に聞こえる声で、ティティルナは中々酷いことを言ってミッケを宥めたのだ。
 これには、言われた本人も流石に反応せずには居られなかった。

「我が妹よ、隠す気ゼロのそのやり取り、中々辛辣だな……」

 けれどもティティルナは、呆れた様にティルミオが咎めても、悪びれる様子もなくニコニコと愛らしい笑顔を向けて、愛嬌だけでゴリ押した。

「ふふ、お兄ちゃん、期待して待ってるからね。頑張って!お兄ちゃんなら出来るって信じてるから!!」

 そんな可愛らしい笑顔を見せられたら、大抵の男は簡単に騙されるだろうなと思い、兄としては、一体どこでそんな技を覚えて来たのか少し心配にもなったが、ティルミオは仕方ないなと言った感じで一つ息を吐くと、可愛い妹の為に力強く約束したのだった。

「あぁ。お兄ちゃんに任せろ!マナポーションも、ルナストーンも両方持って帰ってやるよ。」
「うん!あ、でも、くれぐれも危険な事はしないでね。危なくなったら直ぐに逃げてね。お兄ちゃんは戦闘は出来ないんだから。」
「あぁ、分かってるよ。ジェラミーが一緒なんだ、平気だよ。」
「油断するんじゃにゃいぞ。あの小僧を信用しすぎるんじゃにゃいぞ。」
「ミッケは、まだそんな事を言ってるのか。大丈夫だって。」

 そう言ってティルミオはティティルナの頭とミッケの頭をポンポンと叩いて安心させると、兄妹は明日に備えて早めに夕食をとり、就寝したのだった。
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