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57. 一緒に行くのは……
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「その必要はない。オレが一緒に行くから。」
見知らぬ冒険者からアウリーサ洞窟への同行を申し入れられてティルミオが戸惑っていると、ジェラミーはティルミオの肩をがっしりと抱いて、三人組の冒険者の申し出をキッパリと断った。
「君は?」
「オレは、コイツの相棒だ。勝手に勧誘して貰ったら困る。」
「君たち二人でアウリーサ洞窟に行けるのかい?」
「オレはBランクだ。だから問題ない。」
アウリーサ洞窟は魔物の巣と言われていて、低ランクの冒険者では太刀打ちできないダンジョンであった。
だから三人組の冒険者は、装備からして素人丸出しのティルミオと、歳若いジェラミーの二人では探索は難しいと思ったのだが、そんな心配は無用だとばかりに、ジェラミーは、自分のランクを明かして彼らを押し黙らせた。
すると、三人組の冒険者はまたしてもお互いの顔を見合わせてヒソヒソと何やら相談すると、今度はジェラミーを相手に勧誘を始めたのだった。
「それは失礼した。私たちはCランクなんだけども、どうだろうか?私たちと一緒にアウリーサ洞窟に行ってくれないか?あそこは魔物も強いから、高ランクの冒険者が一緒だと心強いし、なにより今受注している採掘クエストの納品物であるルナストーンが全然見つけられなくって藁にも縋りたいんだ。」
余りにも正直に話す彼らに、ジェラミーもティルミオも面食らってしまった。
「おっさん達、随分明け透けと話すんだな。」
「おっさ……まぁ、君たちから見たらそうか。君たちは見た所まだ十代だろうからね。」
「なぁ、おっさん達の提案を飲むメリットがこっちには無い。都合良すぎないか?」
重ね重ねのおっさん呼びに、話を持ち掛けてきた男の表情が強張ったが、彼は一呼吸置いて気持ちを落ち着かせると、大人な対応で交渉を続けた。
「……コレでもまだ二十代なんだけどね。まぁ、メリット……そうか。ではこうしよう、報酬を払うよ。成功報酬だ。俺たちが無事にルナストーンを見つけられたら、一万ゼラムを払うよ。」
それは破格の値段だった。一万ゼラムと言ったら、今のティルミオの力量で、大体二日分の仕事で得られる報酬と同じ位なのだ。
高額なマナポーションを買おうとしているティルミオにとって、それは願っても無い申し出だったが、しかし、上手い話には裏があると昨日転売の件で身を持って学んだばかりなので、ここは慎重になって検討を続けた。
「おい、ティルミオどうする?」
「うーん、道案内だけで一万ゼラム貰えるのは物凄く美味しいけれど……ジェラミー、どう思う?」
「正直言って、胡散臭い。オレはこの家業長いから分かるんだ。良い顔して寄ってくる同業者は碌な事企んで無い。」
「……そうだな。断ろう。」
熟考……とまではいかないが、自分たちの勘みたいなものを頼りに、二人はこの三人組の申し入れを断る事にしたのだった。
「おっさん達、悪いけど他を当たってくれ。オレ達は二人で行動したい。」
考えた末にジェラミーがこの話を断わると、一瞬ピリッとした空気が流れたが、三人組の冒険者は直ぐに人当たりの良い笑顔を取り繕うと、二人に惜しむような声をかけてアッサリと引き下がった。
「……そうか、それは残念だ。じゃあ、今日は諦めるけど、もし気が変わったらいつでも声をかけてくれ。大体この時間にギルドに居るから。」
そう言って三人組の冒険者はティルミオとジェラミーから去っていったのだった。
「……って事はジェラミー、アウリーサ洞窟に連れてってくれるんだな?」
三人組の冒険者が立ち去ると、ティルミオは直ぐに横にいるジェラミーに確認をした。
先ほどの話の流れから、アウリーサ洞窟に行くのは確実だと思ったが、念の為にジェラミーの口から確認を取っておきたかったのだ。
するとジェラミーは、ティルミオの肩をバンバンと叩くと、ニカっと笑って言った。
「あぁ。今日の夕方には俺の剣も返ってくるし、約束してたからな。」
「よろしく頼むよ!!」
「あぁ。魔物退治は任せてくれ。だからお前は採掘クエストでがっぽり稼げよな?」
「任せろ!!」
こうして、今日の所は簡単な依頼をこなすに留めて、二人は明日の準備を入念にする為に早めに解散したのだった。
ティルミオも、明日行くアウリーサ洞窟に想いを馳せながら、そわそわした気持ちでいつもより早く家路についていた。
しかし、後少しで家という所で、彼は重大な事に気付いてしまったのだ。
「あ、マナポーション買うの忘れた。」
頼まれていた品物を買い忘れてしまって、ティルミオはティティルナとミッケに怒られる事を覚悟しながら、恐る恐る家のドアを開けたのだった。
見知らぬ冒険者からアウリーサ洞窟への同行を申し入れられてティルミオが戸惑っていると、ジェラミーはティルミオの肩をがっしりと抱いて、三人組の冒険者の申し出をキッパリと断った。
「君は?」
「オレは、コイツの相棒だ。勝手に勧誘して貰ったら困る。」
「君たち二人でアウリーサ洞窟に行けるのかい?」
「オレはBランクだ。だから問題ない。」
アウリーサ洞窟は魔物の巣と言われていて、低ランクの冒険者では太刀打ちできないダンジョンであった。
だから三人組の冒険者は、装備からして素人丸出しのティルミオと、歳若いジェラミーの二人では探索は難しいと思ったのだが、そんな心配は無用だとばかりに、ジェラミーは、自分のランクを明かして彼らを押し黙らせた。
すると、三人組の冒険者はまたしてもお互いの顔を見合わせてヒソヒソと何やら相談すると、今度はジェラミーを相手に勧誘を始めたのだった。
「それは失礼した。私たちはCランクなんだけども、どうだろうか?私たちと一緒にアウリーサ洞窟に行ってくれないか?あそこは魔物も強いから、高ランクの冒険者が一緒だと心強いし、なにより今受注している採掘クエストの納品物であるルナストーンが全然見つけられなくって藁にも縋りたいんだ。」
余りにも正直に話す彼らに、ジェラミーもティルミオも面食らってしまった。
「おっさん達、随分明け透けと話すんだな。」
「おっさ……まぁ、君たちから見たらそうか。君たちは見た所まだ十代だろうからね。」
「なぁ、おっさん達の提案を飲むメリットがこっちには無い。都合良すぎないか?」
重ね重ねのおっさん呼びに、話を持ち掛けてきた男の表情が強張ったが、彼は一呼吸置いて気持ちを落ち着かせると、大人な対応で交渉を続けた。
「……コレでもまだ二十代なんだけどね。まぁ、メリット……そうか。ではこうしよう、報酬を払うよ。成功報酬だ。俺たちが無事にルナストーンを見つけられたら、一万ゼラムを払うよ。」
それは破格の値段だった。一万ゼラムと言ったら、今のティルミオの力量で、大体二日分の仕事で得られる報酬と同じ位なのだ。
高額なマナポーションを買おうとしているティルミオにとって、それは願っても無い申し出だったが、しかし、上手い話には裏があると昨日転売の件で身を持って学んだばかりなので、ここは慎重になって検討を続けた。
「おい、ティルミオどうする?」
「うーん、道案内だけで一万ゼラム貰えるのは物凄く美味しいけれど……ジェラミー、どう思う?」
「正直言って、胡散臭い。オレはこの家業長いから分かるんだ。良い顔して寄ってくる同業者は碌な事企んで無い。」
「……そうだな。断ろう。」
熟考……とまではいかないが、自分たちの勘みたいなものを頼りに、二人はこの三人組の申し入れを断る事にしたのだった。
「おっさん達、悪いけど他を当たってくれ。オレ達は二人で行動したい。」
考えた末にジェラミーがこの話を断わると、一瞬ピリッとした空気が流れたが、三人組の冒険者は直ぐに人当たりの良い笑顔を取り繕うと、二人に惜しむような声をかけてアッサリと引き下がった。
「……そうか、それは残念だ。じゃあ、今日は諦めるけど、もし気が変わったらいつでも声をかけてくれ。大体この時間にギルドに居るから。」
そう言って三人組の冒険者はティルミオとジェラミーから去っていったのだった。
「……って事はジェラミー、アウリーサ洞窟に連れてってくれるんだな?」
三人組の冒険者が立ち去ると、ティルミオは直ぐに横にいるジェラミーに確認をした。
先ほどの話の流れから、アウリーサ洞窟に行くのは確実だと思ったが、念の為にジェラミーの口から確認を取っておきたかったのだ。
するとジェラミーは、ティルミオの肩をバンバンと叩くと、ニカっと笑って言った。
「あぁ。今日の夕方には俺の剣も返ってくるし、約束してたからな。」
「よろしく頼むよ!!」
「あぁ。魔物退治は任せてくれ。だからお前は採掘クエストでがっぽり稼げよな?」
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しかし、後少しで家という所で、彼は重大な事に気付いてしまったのだ。
「あ、マナポーション買うの忘れた。」
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