46 / 116
44. 決意新たに!
しおりを挟む
「なんだそれ?!前の商会長が待ってくれるって言ってたんだから、その約束を守るべきだろう!!」
ティルミオから一連の経緯を聞いたジェラミーは、いきなりやって来たアーヴァイン商会の新しい商会長だと言う男の横暴な態度にとても憤っていた。
彼からしてみたら、例え口約束でも一度した約束を反故にするなど許せなかったのだ。
けれどもティルミオは「仕方がないんだ」と苦笑しながら、この理不尽な出来事に本気で怒ってくれたジェラミーを冷静に宥めたのだった。
「まぁ、口約束で書面が残ってないからね……正式な書類を持ってる今の商会長には逆らえないんだよ。俺たちの立場は弱いんだ。」
「お前たちはそれで良いのかよ?!」
「良くは無いけど……でも、ここで揉めても俺たちに分が悪いからね。それに毎月決められた通りに返済をすれば良いんだから、地道に稼げばきっと大丈夫だよ。……稼ぎが安定するまでは、ちょっと苦しいけど……」
「そうか……」
どこか諦めたように話すティルミオの説明に、ジェラミーはこれ以上何かを言うのを止めた。その代わりに、彼は改めて二人の方を向くと、胸をドンっと叩いて力強い言葉を投げかけたのだった。
「よし分かった!オレの剣が復活するまでの間も、出来る限りの依頼をこなそう!山とか草原とかの弱い魔物は安いけど、少しでも足しにはなるだろう。」
「あ、あぁ!よろしく頼むよ!!」
ジェラミーからの提案に、ティルミオは嬉しそうに頷いた。彼の言う通り、とにかく今出来ることでコツコツとお金を稼せいでいくしかないのだ。
こうして、当初の目論見からはだいぶ外れたが、ティルミオは気合を入れ直して、ジェラミーと共に冒険者ギルドへと向かう事にしたのだが、すると、出掛けようとするそんな彼らに、ティティルナが「待って」と声をかけて、二人にあるお願いをしたのだった。
「あのね、お兄ちゃんたち。山や森に入るのなら、ついでに木の実や果実、キノコなんかを採ってこれる?」
「ん?あぁ。それくらいなら出来ると思うけど、どうした?」
「本当?!それじゃあさ、……それで食費を浮かそうよ。」
妹からの提案は、盲点だった。
大自然の恵み。当たり前すぎて今まで目を向けていなかったが、確かに自然に生えている野草や木の実で食べ繋げば、食費は相当浮かせられるのだ。
「成程……確かにそうだな。よし、食べられる物も一緒に取ってくるよ。」
「うん!それに果実だったらジャムに加工してお店で売れるし、キノコも乾燥させて保存食に出来るわ!」
「考えてみたら野山で自分で採取してくれば元手がタダじゃないか!よし、食べられる物、売れそうな物を片っ端から取ってくるよ!!」
「うん!私も加工頑張るよ!」
例え野山に分け入ったとしても、そこには毒草や毒キノコなど、人が食べると死んでしまうほど危険な物も沢山あって、素人には見分ける事が難しい。けれどもティルミオの鑑定眼なら、安全に且つ簡単に食べ物を探せるのだ。
だからこれで食費を浮かせつつ、店で売る商品を増やせられると、兄妹は短絡的に考えたのだが、しかし、冒険者として生計を立てて長いジェラミーは、そんな盛り上がる二人を可哀想に思いながらも、彼らに水を差したのだった。
「あ……個人が少量とるなら良いけど、あまり大々的にやるなら、ギルドでちゃんと手続きして許可証を買わないとダメだぞ。」
その発言に、知らなかったというような顔をして、兄妹は絶句してジェラミーを方を見つめた。
「……お前ら本当に何も知らないんだなぁ……気を付けないと罰せられるぞ。」
そんな二人を呆れたように見つめ返しながらも、面倒見の良いジェラミーはこの危なっかしい兄妹に、ついつい構ってしまうのであった。
「そういうルールって俺、本当に知らないんだ。だからジェラミー、色々と教えてくれないか。」
「仕方ないなぁ。教えてやるから、徐々に覚えていくんだぞ。」
「有難う!頼りにしてる!!」
「ったく、調子良いなぁ。まぁそれは都度都度教えるとして、ほら、いい加減そろそろギルドへ行こうじゃないか。今日の分をしっかり稼ぐぞ!」
「あぁ、行こう!」
そしてティルミオとジェラミーは、話終えると今度こそ本当に冒険者ギルドへと向かって行って、そんな彼らにティティルナは、励ましの言葉をかけて見送ったのだった。
「それじゃあ、お兄ちゃん、ジェラミーさんいってらっしゃい。私もここでパンを売ってお金を稼ぐから、二人も、しっかり稼いできてね。」
「あぁ、任せろ!!」
こうしてカーステン兄妹は、先ずは税金の支払いに向けて、気持ちを新たに再度スタートを切ったのだった。
ティルミオから一連の経緯を聞いたジェラミーは、いきなりやって来たアーヴァイン商会の新しい商会長だと言う男の横暴な態度にとても憤っていた。
彼からしてみたら、例え口約束でも一度した約束を反故にするなど許せなかったのだ。
けれどもティルミオは「仕方がないんだ」と苦笑しながら、この理不尽な出来事に本気で怒ってくれたジェラミーを冷静に宥めたのだった。
「まぁ、口約束で書面が残ってないからね……正式な書類を持ってる今の商会長には逆らえないんだよ。俺たちの立場は弱いんだ。」
「お前たちはそれで良いのかよ?!」
「良くは無いけど……でも、ここで揉めても俺たちに分が悪いからね。それに毎月決められた通りに返済をすれば良いんだから、地道に稼げばきっと大丈夫だよ。……稼ぎが安定するまでは、ちょっと苦しいけど……」
「そうか……」
どこか諦めたように話すティルミオの説明に、ジェラミーはこれ以上何かを言うのを止めた。その代わりに、彼は改めて二人の方を向くと、胸をドンっと叩いて力強い言葉を投げかけたのだった。
「よし分かった!オレの剣が復活するまでの間も、出来る限りの依頼をこなそう!山とか草原とかの弱い魔物は安いけど、少しでも足しにはなるだろう。」
「あ、あぁ!よろしく頼むよ!!」
ジェラミーからの提案に、ティルミオは嬉しそうに頷いた。彼の言う通り、とにかく今出来ることでコツコツとお金を稼せいでいくしかないのだ。
こうして、当初の目論見からはだいぶ外れたが、ティルミオは気合を入れ直して、ジェラミーと共に冒険者ギルドへと向かう事にしたのだが、すると、出掛けようとするそんな彼らに、ティティルナが「待って」と声をかけて、二人にあるお願いをしたのだった。
「あのね、お兄ちゃんたち。山や森に入るのなら、ついでに木の実や果実、キノコなんかを採ってこれる?」
「ん?あぁ。それくらいなら出来ると思うけど、どうした?」
「本当?!それじゃあさ、……それで食費を浮かそうよ。」
妹からの提案は、盲点だった。
大自然の恵み。当たり前すぎて今まで目を向けていなかったが、確かに自然に生えている野草や木の実で食べ繋げば、食費は相当浮かせられるのだ。
「成程……確かにそうだな。よし、食べられる物も一緒に取ってくるよ。」
「うん!それに果実だったらジャムに加工してお店で売れるし、キノコも乾燥させて保存食に出来るわ!」
「考えてみたら野山で自分で採取してくれば元手がタダじゃないか!よし、食べられる物、売れそうな物を片っ端から取ってくるよ!!」
「うん!私も加工頑張るよ!」
例え野山に分け入ったとしても、そこには毒草や毒キノコなど、人が食べると死んでしまうほど危険な物も沢山あって、素人には見分ける事が難しい。けれどもティルミオの鑑定眼なら、安全に且つ簡単に食べ物を探せるのだ。
だからこれで食費を浮かせつつ、店で売る商品を増やせられると、兄妹は短絡的に考えたのだが、しかし、冒険者として生計を立てて長いジェラミーは、そんな盛り上がる二人を可哀想に思いながらも、彼らに水を差したのだった。
「あ……個人が少量とるなら良いけど、あまり大々的にやるなら、ギルドでちゃんと手続きして許可証を買わないとダメだぞ。」
その発言に、知らなかったというような顔をして、兄妹は絶句してジェラミーを方を見つめた。
「……お前ら本当に何も知らないんだなぁ……気を付けないと罰せられるぞ。」
そんな二人を呆れたように見つめ返しながらも、面倒見の良いジェラミーはこの危なっかしい兄妹に、ついつい構ってしまうのであった。
「そういうルールって俺、本当に知らないんだ。だからジェラミー、色々と教えてくれないか。」
「仕方ないなぁ。教えてやるから、徐々に覚えていくんだぞ。」
「有難う!頼りにしてる!!」
「ったく、調子良いなぁ。まぁそれは都度都度教えるとして、ほら、いい加減そろそろギルドへ行こうじゃないか。今日の分をしっかり稼ぐぞ!」
「あぁ、行こう!」
そしてティルミオとジェラミーは、話終えると今度こそ本当に冒険者ギルドへと向かって行って、そんな彼らにティティルナは、励ましの言葉をかけて見送ったのだった。
「それじゃあ、お兄ちゃん、ジェラミーさんいってらっしゃい。私もここでパンを売ってお金を稼ぐから、二人も、しっかり稼いできてね。」
「あぁ、任せろ!!」
こうしてカーステン兄妹は、先ずは税金の支払いに向けて、気持ちを新たに再度スタートを切ったのだった。
10
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。
まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。
温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。
異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか?
魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。
平民なんですがもしかして私って聖女候補?
脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか?
常に何処かで大食いバトルが開催中!
登場人物ほぼ甘党!
ファンタジー要素薄め!?かもしれない?
母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥
◇◇◇◇
現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。
しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい!
転生もふもふのスピンオフ!
アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で…
母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される
こちらもよろしくお願いします。
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
幼女エルフの自由旅
たまち。
ファンタジー
突然見知らぬ土地にいた私、生駒 縁-イコマ ユカリ-
どうやら地球とは違う星にある地は身体に合わず、数日待たずして死んでしまった
自称神が言うにはエルフに生まれ変えてくれるらしいが……
私の本当の記憶って?
ちょっと言ってる意味が分からないんですけど
次々と湧いて出てくる問題をちょっぴり……だいぶ思考回路のズレた幼女エルフが何となく捌いていく
※題名、内容紹介変更しました
《旧題:エルフの虹人はGの価値を求む》
※文章修正しています。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
【10話完結】 後妻になりました後継者に、女の子の扱いを授業しています。
BBやっこ
恋愛
親子仲はまあまあでしょうか?
元は娼館に居た女。お客だった貴族から後妻にと望まれた。
迷ったが、本当に出ていくことを決める。
彼の家に行くと、そこには後継者として育てられているお子様がいて?
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる