三毛猫ミッケの贈り物〜借金返済の為に兄妹で錬金術始めました〜

石月 和花

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44. 決意新たに!

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「なんだそれ?!前の商会長が待ってくれるって言ってたんだから、その約束を守るべきだろう!!」

 ティルミオから一連の経緯を聞いたジェラミーは、いきなりやって来たアーヴァイン商会の新しい商会長だと言う男の横暴な態度にとても憤っていた。

 彼からしてみたら、例え口約束でも一度した約束を反故にするなど許せなかったのだ。

 けれどもティルミオは「仕方がないんだ」と苦笑しながら、この理不尽な出来事に本気で怒ってくれたジェラミーを冷静に宥めたのだった。

「まぁ、口約束で書面が残ってないからね……正式な書類を持ってる今の商会長には逆らえないんだよ。俺たちの立場は弱いんだ。」
「お前たちはそれで良いのかよ?!」
「良くは無いけど……でも、ここで揉めても俺たちに分が悪いからね。それに毎月決められた通りに返済をすれば良いんだから、地道に稼げばきっと大丈夫だよ。……稼ぎが安定するまでは、ちょっと苦しいけど……」
「そうか……」

 どこか諦めたように話すティルミオの説明に、ジェラミーはこれ以上何かを言うのを止めた。その代わりに、彼は改めて二人の方を向くと、胸をドンっと叩いて力強い言葉を投げかけたのだった。

「よし分かった!オレの剣が復活するまでの間も、出来る限りの依頼をこなそう!山とか草原とかの弱い魔物は安いけど、少しでも足しにはなるだろう。」
「あ、あぁ!よろしく頼むよ!!」

 ジェラミーからの提案に、ティルミオは嬉しそうに頷いた。彼の言う通り、とにかく今出来ることでコツコツとお金を稼せいでいくしかないのだ。

 こうして、当初の目論見からはだいぶ外れたが、ティルミオは気合を入れ直して、ジェラミーと共に冒険者ギルドへと向かう事にしたのだが、すると、出掛けようとするそんな彼らに、ティティルナが「待って」と声をかけて、二人にあるお願いをしたのだった。

「あのね、お兄ちゃんたち。山や森に入るのなら、ついでに木の実や果実、キノコなんかを採ってこれる?」
「ん?あぁ。それくらいなら出来ると思うけど、どうした?」
「本当?!それじゃあさ、……それで食費を浮かそうよ。」

 妹からの提案は、盲点だった。
大自然の恵み。当たり前すぎて今まで目を向けていなかったが、確かに自然に生えている野草や木の実で食べ繋げば、食費は相当浮かせられるのだ。

「成程……確かにそうだな。よし、食べられる物も一緒に取ってくるよ。」
「うん!それに果実だったらジャムに加工してお店で売れるし、キノコも乾燥させて保存食に出来るわ!」
「考えてみたら野山で自分で採取してくれば元手がタダじゃないか!よし、食べられる物、売れそうな物を片っ端から取ってくるよ!!」
「うん!私も加工頑張るよ!」

 例え野山に分け入ったとしても、そこには毒草や毒キノコなど、人が食べると死んでしまうほど危険な物も沢山あって、素人には見分ける事が難しい。けれどもティルミオの鑑定眼なら、安全に且つ簡単に食べ物を探せるのだ。
 だからこれで食費を浮かせつつ、店で売る商品を増やせられると、兄妹は短絡的に考えたのだが、しかし、冒険者として生計を立てて長いジェラミーは、そんな盛り上がる二人を可哀想に思いながらも、彼らに水を差したのだった。

「あ……個人が少量とるなら良いけど、あまり大々的にやるなら、ギルドでちゃんと手続きして許可証を買わないとダメだぞ。」

 その発言に、知らなかったというような顔をして、兄妹は絶句してジェラミーを方を見つめた。

「……お前ら本当に何も知らないんだなぁ……気を付けないと罰せられるぞ。」

 そんな二人を呆れたように見つめ返しながらも、面倒見の良いジェラミーはこの危なっかしい兄妹に、ついつい構ってしまうのであった。

「そういうルールって俺、本当に知らないんだ。だからジェラミー、色々と教えてくれないか。」
「仕方ないなぁ。教えてやるから、徐々に覚えていくんだぞ。」
「有難う!頼りにしてる!!」
「ったく、調子良いなぁ。まぁそれは都度都度教えるとして、ほら、いい加減そろそろギルドへ行こうじゃないか。今日の分をしっかり稼ぐぞ!」
「あぁ、行こう!」
 
 そしてティルミオとジェラミーは、話終えると今度こそ本当に冒険者ギルドへと向かって行って、そんな彼らにティティルナは、励ましの言葉をかけて見送ったのだった。

「それじゃあ、お兄ちゃん、ジェラミーさんいってらっしゃい。私もここでパンを売ってお金を稼ぐから、二人も、しっかり稼いできてね。」
「あぁ、任せろ!!」

 こうしてカーステン兄妹は、先ずは税金の支払いに向けて、気持ちを新たに再度スタートを切ったのだった。
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