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42. 暗雲
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「ま、ティオも人には過ぎる能力が使える様になったのにゃら、これでお前たちは我のあげた素晴らしい贈り物によって、ガンガンお金を稼げるにゃ!さぁ、さっさとシャッキンとやらを返して、我に肉を食わせるにゃ!!」
ティルミオによる、能力の開花の報告を聞いて、ミッケは嬉しそうに彼らに擦り寄りながら、そんな事を二人におねだりした。
「そうだね!私がパンを作って売って、お兄ちゃんがギルドの採取クエストで稼いで……うん、二人で働けばきっと直ぐに借金も返せるね!!」
「そうだなぁ……。直ぐに、とまでは行かないとは思うけど、でもコレで安定して稼げる目処は立ったな。とりあえずこの金で税金の三分の一は払えるしな!」
そう言ってティルミオはジェラミーから受け取った布袋を縦に振ってジャランと音を立たせた。この予想外のフォレストベアーの報酬は、彼らにとって本当に天の恵みであった。
このままいけば、税金の支払いには十分間に合うし、その後も毎月の借金返済分も、今のペースなら問題なく安定して返せる目処が立ったのだ。だから彼らは、すっかり安心しきって話に花が咲いたのだった。
「ジェラミーさんが良い人で本当に良かったわね!」
「あぁ。これからも一緒に組んで仕事してくれるんだ。頼ってばかりだけど、でもアイツのお陰で俺も冒険者としての目処が立った事だし、本当に心強いよ。」
「わ……我はまだ奴を認めた訳じゃにゃいからにゃ!」
「もー!そんな事言ってミッケはまたお説教されたいのかしら?」
「う……それは勘弁にゃ……」
そんな風にワイワイと三人が盛り上がっている時だった。
カランっと店のドアが開いて、見知らぬ男性が入って来たのだ。
「やぁ、失礼しますよ。」
黒い帽子に黒いコート。まるで死神の様な風貌の若い男性は、そう言って店内に入ると、ニコリともせずに店内を品定めするかのように見回していた。
「えっと……店なら今日はもう終わってて……」
「えぇ、知ってます。CLOSEの看板出てましたからね。」
突然の来訪者にティルミオはたじろぎながら、今日は既に店じまいをしている旨を伝えたが、しかし男はそんな事など全く気にしない様子で店内の品定めを続けたのだ。
「えっと……何の御用でしょうか?」
そんな男の言動に困惑しつつも、ティティルナは兄の背中にしがみつきながら、恐る恐る男に来訪の目的を訊ねた。
すると、男は二人が思ってもみなかった来訪の理由を口にしたのだった。
「おや、何の御用でしょうかとは、随分ですね。貴方たちが中々借金を返してくれないから、こうして私自ら取り立てに来てあげたと言うのに。」
「……?!!」
突然の驚くべき発言に、さっきまでの浮かれていた気持ちは一瞬で吹き飛んでしまった。ティルミオもティティルナも、険しい顔になった。
「アーヴァイン商会の人?!」
「ええ、そうですよ。」
アーヴァイン商会。ティルミオたちカーステン家が所属しているのはザイルード商会なのだが、生前父親が肩代わりした、父の友人が借金をしていたという商会が、アーヴァイン商会なのだ。
だからティルミオはこの商会に借金を返さなくてはいけないのだが、両親が亡くなった事情を説明しに行った時に会ったアーヴァイン商会の会長はとても優しくて、こちらに同情して、借金の返済を無期限に待ってくれると言ってくれたのだ。
それが、今目の前に居る男性は全く真逆の事を言っているので、困惑するしかなかった。
「待って下さい!だって商会長は俺たちの事情を考慮して、期限を延長してくれるって約束してくれましたよ?!」
「えぇ、そうですね。前の商会長はそういう約束をしたのかも知れないですがね。けれど今の商会長は私なんです。そんな口約束、聞いていませんから無効ですよ。」
「そんな……商会長が変わったって事……?」
「えぇ、そうです。無能な前会長には隠居して貰いましたから。」
顔色を全く変えずに、氷の様な冷たい表情で、アーヴァイン商会長と名乗る男性は淡々と説明を続けた。
「それで、カーステンさんの今月の支払いがまだでしたから、こうして、私自らが出向いたって訳です。」
「待ってください!両親が亡くなったばっかで、まだ生活が安定していないんだ!二人での生活が落ち着くまで、もう少しだけ、返済は待って貰えないでしょうか。」
しかし、ティルミオが必死になって頼んでも、男の態度は全く変わらなかった。
「なるほど可哀想ですね。ですが、こちらもお金を返してもらえないと可哀想なんです。だからおあいこで、同情する必要はありませんね。」
「そんな……」
「契約は、契約です。書面で交わした内容が全てです。そして、ここにはこう書かれています。”毎月の返済に一回でも遅れたら、代わりに土地と建物を貰い受ける”っとね。」
そう言って、男は契約書をティルミオに見せた。そこには確かに、返済が遅れるとアーヴァイン商会が、カーステン家が所有する土地や建物を差し押さえると明記されていたのだった。
ティルミオによる、能力の開花の報告を聞いて、ミッケは嬉しそうに彼らに擦り寄りながら、そんな事を二人におねだりした。
「そうだね!私がパンを作って売って、お兄ちゃんがギルドの採取クエストで稼いで……うん、二人で働けばきっと直ぐに借金も返せるね!!」
「そうだなぁ……。直ぐに、とまでは行かないとは思うけど、でもコレで安定して稼げる目処は立ったな。とりあえずこの金で税金の三分の一は払えるしな!」
そう言ってティルミオはジェラミーから受け取った布袋を縦に振ってジャランと音を立たせた。この予想外のフォレストベアーの報酬は、彼らにとって本当に天の恵みであった。
このままいけば、税金の支払いには十分間に合うし、その後も毎月の借金返済分も、今のペースなら問題なく安定して返せる目処が立ったのだ。だから彼らは、すっかり安心しきって話に花が咲いたのだった。
「ジェラミーさんが良い人で本当に良かったわね!」
「あぁ。これからも一緒に組んで仕事してくれるんだ。頼ってばかりだけど、でもアイツのお陰で俺も冒険者としての目処が立った事だし、本当に心強いよ。」
「わ……我はまだ奴を認めた訳じゃにゃいからにゃ!」
「もー!そんな事言ってミッケはまたお説教されたいのかしら?」
「う……それは勘弁にゃ……」
そんな風にワイワイと三人が盛り上がっている時だった。
カランっと店のドアが開いて、見知らぬ男性が入って来たのだ。
「やぁ、失礼しますよ。」
黒い帽子に黒いコート。まるで死神の様な風貌の若い男性は、そう言って店内に入ると、ニコリともせずに店内を品定めするかのように見回していた。
「えっと……店なら今日はもう終わってて……」
「えぇ、知ってます。CLOSEの看板出てましたからね。」
突然の来訪者にティルミオはたじろぎながら、今日は既に店じまいをしている旨を伝えたが、しかし男はそんな事など全く気にしない様子で店内の品定めを続けたのだ。
「えっと……何の御用でしょうか?」
そんな男の言動に困惑しつつも、ティティルナは兄の背中にしがみつきながら、恐る恐る男に来訪の目的を訊ねた。
すると、男は二人が思ってもみなかった来訪の理由を口にしたのだった。
「おや、何の御用でしょうかとは、随分ですね。貴方たちが中々借金を返してくれないから、こうして私自ら取り立てに来てあげたと言うのに。」
「……?!!」
突然の驚くべき発言に、さっきまでの浮かれていた気持ちは一瞬で吹き飛んでしまった。ティルミオもティティルナも、険しい顔になった。
「アーヴァイン商会の人?!」
「ええ、そうですよ。」
アーヴァイン商会。ティルミオたちカーステン家が所属しているのはザイルード商会なのだが、生前父親が肩代わりした、父の友人が借金をしていたという商会が、アーヴァイン商会なのだ。
だからティルミオはこの商会に借金を返さなくてはいけないのだが、両親が亡くなった事情を説明しに行った時に会ったアーヴァイン商会の会長はとても優しくて、こちらに同情して、借金の返済を無期限に待ってくれると言ってくれたのだ。
それが、今目の前に居る男性は全く真逆の事を言っているので、困惑するしかなかった。
「待って下さい!だって商会長は俺たちの事情を考慮して、期限を延長してくれるって約束してくれましたよ?!」
「えぇ、そうですね。前の商会長はそういう約束をしたのかも知れないですがね。けれど今の商会長は私なんです。そんな口約束、聞いていませんから無効ですよ。」
「そんな……商会長が変わったって事……?」
「えぇ、そうです。無能な前会長には隠居して貰いましたから。」
顔色を全く変えずに、氷の様な冷たい表情で、アーヴァイン商会長と名乗る男性は淡々と説明を続けた。
「それで、カーステンさんの今月の支払いがまだでしたから、こうして、私自らが出向いたって訳です。」
「待ってください!両親が亡くなったばっかで、まだ生活が安定していないんだ!二人での生活が落ち着くまで、もう少しだけ、返済は待って貰えないでしょうか。」
しかし、ティルミオが必死になって頼んでも、男の態度は全く変わらなかった。
「なるほど可哀想ですね。ですが、こちらもお金を返してもらえないと可哀想なんです。だからおあいこで、同情する必要はありませんね。」
「そんな……」
「契約は、契約です。書面で交わした内容が全てです。そして、ここにはこう書かれています。”毎月の返済に一回でも遅れたら、代わりに土地と建物を貰い受ける”っとね。」
そう言って、男は契約書をティルミオに見せた。そこには確かに、返済が遅れるとアーヴァイン商会が、カーステン家が所有する土地や建物を差し押さえると明記されていたのだった。
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