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41. 凄いのは……
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「で、お兄ちゃんは大丈夫なの?魔物の解体作業で動けなくなる程気分が悪くなるなんて、やっぱり冒険者向いてないんじゃない?」
ジェラミーが帰って、ミッケをたっぷりと叱った後で、ティティルナは店の掃除をしながら、未だ具合の悪そうに椅子に座って居る兄に対して、物憂い顔でそう問いかけた。
帰宅してから暫く経つというのに、全然回復する気配を見せないティルミオの事をティティルナは本気で心配していて、これ以上兄に無理をして欲しくなかったのだ。
しかし、ティルミオの体調が悪い理由はそんな事では無いのだ。だから彼は、ティティルナを安心させる為に、何故自分が体調を崩したのか本当の事情を打ち明けたのだった。
「いや、違うんだ。実は俺、贈り物が分かったんだ!」
「本当に?!」「本当にゃ?!」
少し興奮気味に話すティルミオからの予想外な報告に、ティティルナとミッケは、大きな声を出して驚いてみせた。
するとティルミオは、そんな二人の驚く反応を満足そうに見つめながら大きく頷くと、少しきまりが悪そうに、それでいてどこか嬉しそうに続きを話した。
「あぁ。今日ギルドの仕事をしている時に気付いたんだ。で、この能力をちょっと使いすぎちゃって、……で、多分コレは魔力切れって奴だと思う……」
そう話すティルミオは、散々妹に無理をするなと言っていた手前、少し歯切れが悪かった。そして彼は案の定、ティティルナから昨日自分が妹にしたのと同じお説教を食らうのであった。
「もう、お兄ちゃん私には散々無理するなって言ってたのに!」
「いやぁ、自分じゃ分かんない物だな。コレからは気をつけるよ。」
「絶対にだよ?無理しちゃダメだよ!」
「あ、あぁ……分かったよ。」
今まで心配する立場だったのが逆転してしまい、ティルミオは妹からの戒めの言葉にタジタジであった。
そんな兄妹のやりとりを、ミッケは少し離れたカウンターの上で寝そべりながら聞いていたのだが、二人は中々肝心な事を話さないのだ。
だからミッケは、痺れを切らして自らが、今一番知るべき事をティルミオに問いかけたのだった。
「それで、ティオは一体どんな能力にゃんだ?」
そのミッケの質問を聞いたティルミオは、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせると、二人に胸を張って得意げに自分の能力について説明をした。
「そう、凄いんだよ!なんと……強く念じて視ると、物が光って見える様になったんだ!!」
しかし、ドヤ顔でそんなこと言われても、ティティルナにもミッケにも意味がわからなかった。ティルミオは言葉が足りないのだ。
「う……うん?そうなんだ。」
少し困った様に返事をする妹の反応を見て、ティルミオは自分が伝えたい事が全く伝わっていないと察すると、慌てて言葉を付け足した。
「だから、強く念じて見ると分かるんだ!草が!!」
「お兄ちゃんごめん……全く意味が分からないよ……」
「だーかーら、この草が欲しいって強く念じたらその草が光って見えてどこに生えてるから直ぐに分かったり、弱点はどこだって強く念じて視たら魔物の弱点が分かったりするんだよ!」
そこまで説明した事で、ミッケはやっとティルミオがどんな能力が使える様になったかを理解した。それと同時に、その稀有な能力の発言に大いに興奮したのだった。
「それは、鑑定眼にゃ!凄いにゃ!レアスキルにゃ!!」
「そうだろう!凄いだろう!!この力があれば、ギルドの採取クエストなんて簡単に終わるんだ!」
ティルミオは、自分の能力の凄さに気がついたミッケが感嘆の声を上げたことに気を良くし、鼻を高くして誇らしげに笑った。
しかし、彼が優越感に浸ったのはほんの束の間だった。
「流石我にゃ!!二人ともにレアスキルを渡すにゃんて!」
「本当!ミッケ、貴方ってすごい猫ね。」
尊敬の対象は、ティルミオでは無く、ミッケになってしまったのだ。
「えっ、コレ俺が褒められる流れじゃないの……?」
「何を言ってるにゃ?褒められるべきは我に決まってるにゃ!」
そう言って、フフンと鼻を鳴らして得意顔をするミッケに、ティティルナもうんうんと頷いて同意して見せた。
「そうだよ。だってミッケが居なかったら私たちこんな凄い能力貰えなかったんだよ?」
「それは、確かにそうだけど……」
「そうにゃ!もっと褒めるにゃ!!」
「ミッケは可愛いし凄い三毛猫よ!」
「えぇっ……」
そんな調子の二人から、思った様な反応を得られなかったティルミオは、妹と飼い猫の盛り上がる様子を、どこか釈然としない気分で見つめたのだった。
ジェラミーが帰って、ミッケをたっぷりと叱った後で、ティティルナは店の掃除をしながら、未だ具合の悪そうに椅子に座って居る兄に対して、物憂い顔でそう問いかけた。
帰宅してから暫く経つというのに、全然回復する気配を見せないティルミオの事をティティルナは本気で心配していて、これ以上兄に無理をして欲しくなかったのだ。
しかし、ティルミオの体調が悪い理由はそんな事では無いのだ。だから彼は、ティティルナを安心させる為に、何故自分が体調を崩したのか本当の事情を打ち明けたのだった。
「いや、違うんだ。実は俺、贈り物が分かったんだ!」
「本当に?!」「本当にゃ?!」
少し興奮気味に話すティルミオからの予想外な報告に、ティティルナとミッケは、大きな声を出して驚いてみせた。
するとティルミオは、そんな二人の驚く反応を満足そうに見つめながら大きく頷くと、少しきまりが悪そうに、それでいてどこか嬉しそうに続きを話した。
「あぁ。今日ギルドの仕事をしている時に気付いたんだ。で、この能力をちょっと使いすぎちゃって、……で、多分コレは魔力切れって奴だと思う……」
そう話すティルミオは、散々妹に無理をするなと言っていた手前、少し歯切れが悪かった。そして彼は案の定、ティティルナから昨日自分が妹にしたのと同じお説教を食らうのであった。
「もう、お兄ちゃん私には散々無理するなって言ってたのに!」
「いやぁ、自分じゃ分かんない物だな。コレからは気をつけるよ。」
「絶対にだよ?無理しちゃダメだよ!」
「あ、あぁ……分かったよ。」
今まで心配する立場だったのが逆転してしまい、ティルミオは妹からの戒めの言葉にタジタジであった。
そんな兄妹のやりとりを、ミッケは少し離れたカウンターの上で寝そべりながら聞いていたのだが、二人は中々肝心な事を話さないのだ。
だからミッケは、痺れを切らして自らが、今一番知るべき事をティルミオに問いかけたのだった。
「それで、ティオは一体どんな能力にゃんだ?」
そのミッケの質問を聞いたティルミオは、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせると、二人に胸を張って得意げに自分の能力について説明をした。
「そう、凄いんだよ!なんと……強く念じて視ると、物が光って見える様になったんだ!!」
しかし、ドヤ顔でそんなこと言われても、ティティルナにもミッケにも意味がわからなかった。ティルミオは言葉が足りないのだ。
「う……うん?そうなんだ。」
少し困った様に返事をする妹の反応を見て、ティルミオは自分が伝えたい事が全く伝わっていないと察すると、慌てて言葉を付け足した。
「だから、強く念じて見ると分かるんだ!草が!!」
「お兄ちゃんごめん……全く意味が分からないよ……」
「だーかーら、この草が欲しいって強く念じたらその草が光って見えてどこに生えてるから直ぐに分かったり、弱点はどこだって強く念じて視たら魔物の弱点が分かったりするんだよ!」
そこまで説明した事で、ミッケはやっとティルミオがどんな能力が使える様になったかを理解した。それと同時に、その稀有な能力の発言に大いに興奮したのだった。
「それは、鑑定眼にゃ!凄いにゃ!レアスキルにゃ!!」
「そうだろう!凄いだろう!!この力があれば、ギルドの採取クエストなんて簡単に終わるんだ!」
ティルミオは、自分の能力の凄さに気がついたミッケが感嘆の声を上げたことに気を良くし、鼻を高くして誇らしげに笑った。
しかし、彼が優越感に浸ったのはほんの束の間だった。
「流石我にゃ!!二人ともにレアスキルを渡すにゃんて!」
「本当!ミッケ、貴方ってすごい猫ね。」
尊敬の対象は、ティルミオでは無く、ミッケになってしまったのだ。
「えっ、コレ俺が褒められる流れじゃないの……?」
「何を言ってるにゃ?褒められるべきは我に決まってるにゃ!」
そう言って、フフンと鼻を鳴らして得意顔をするミッケに、ティティルナもうんうんと頷いて同意して見せた。
「そうだよ。だってミッケが居なかったら私たちこんな凄い能力貰えなかったんだよ?」
「それは、確かにそうだけど……」
「そうにゃ!もっと褒めるにゃ!!」
「ミッケは可愛いし凄い三毛猫よ!」
「えぇっ……」
そんな調子の二人から、思った様な反応を得られなかったティルミオは、妹と飼い猫の盛り上がる様子を、どこか釈然としない気分で見つめたのだった。
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