43 / 118
41. 凄いのは……
しおりを挟む
「で、お兄ちゃんは大丈夫なの?魔物の解体作業で動けなくなる程気分が悪くなるなんて、やっぱり冒険者向いてないんじゃない?」
ジェラミーが帰って、ミッケをたっぷりと叱った後で、ティティルナは店の掃除をしながら、未だ具合の悪そうに椅子に座って居る兄に対して、物憂い顔でそう問いかけた。
帰宅してから暫く経つというのに、全然回復する気配を見せないティルミオの事をティティルナは本気で心配していて、これ以上兄に無理をして欲しくなかったのだ。
しかし、ティルミオの体調が悪い理由はそんな事では無いのだ。だから彼は、ティティルナを安心させる為に、何故自分が体調を崩したのか本当の事情を打ち明けたのだった。
「いや、違うんだ。実は俺、贈り物が分かったんだ!」
「本当に?!」「本当にゃ?!」
少し興奮気味に話すティルミオからの予想外な報告に、ティティルナとミッケは、大きな声を出して驚いてみせた。
するとティルミオは、そんな二人の驚く反応を満足そうに見つめながら大きく頷くと、少しきまりが悪そうに、それでいてどこか嬉しそうに続きを話した。
「あぁ。今日ギルドの仕事をしている時に気付いたんだ。で、この能力をちょっと使いすぎちゃって、……で、多分コレは魔力切れって奴だと思う……」
そう話すティルミオは、散々妹に無理をするなと言っていた手前、少し歯切れが悪かった。そして彼は案の定、ティティルナから昨日自分が妹にしたのと同じお説教を食らうのであった。
「もう、お兄ちゃん私には散々無理するなって言ってたのに!」
「いやぁ、自分じゃ分かんない物だな。コレからは気をつけるよ。」
「絶対にだよ?無理しちゃダメだよ!」
「あ、あぁ……分かったよ。」
今まで心配する立場だったのが逆転してしまい、ティルミオは妹からの戒めの言葉にタジタジであった。
そんな兄妹のやりとりを、ミッケは少し離れたカウンターの上で寝そべりながら聞いていたのだが、二人は中々肝心な事を話さないのだ。
だからミッケは、痺れを切らして自らが、今一番知るべき事をティルミオに問いかけたのだった。
「それで、ティオは一体どんな能力にゃんだ?」
そのミッケの質問を聞いたティルミオは、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせると、二人に胸を張って得意げに自分の能力について説明をした。
「そう、凄いんだよ!なんと……強く念じて視ると、物が光って見える様になったんだ!!」
しかし、ドヤ顔でそんなこと言われても、ティティルナにもミッケにも意味がわからなかった。ティルミオは言葉が足りないのだ。
「う……うん?そうなんだ。」
少し困った様に返事をする妹の反応を見て、ティルミオは自分が伝えたい事が全く伝わっていないと察すると、慌てて言葉を付け足した。
「だから、強く念じて見ると分かるんだ!草が!!」
「お兄ちゃんごめん……全く意味が分からないよ……」
「だーかーら、この草が欲しいって強く念じたらその草が光って見えてどこに生えてるから直ぐに分かったり、弱点はどこだって強く念じて視たら魔物の弱点が分かったりするんだよ!」
そこまで説明した事で、ミッケはやっとティルミオがどんな能力が使える様になったかを理解した。それと同時に、その稀有な能力の発言に大いに興奮したのだった。
「それは、鑑定眼にゃ!凄いにゃ!レアスキルにゃ!!」
「そうだろう!凄いだろう!!この力があれば、ギルドの採取クエストなんて簡単に終わるんだ!」
ティルミオは、自分の能力の凄さに気がついたミッケが感嘆の声を上げたことに気を良くし、鼻を高くして誇らしげに笑った。
しかし、彼が優越感に浸ったのはほんの束の間だった。
「流石我にゃ!!二人ともにレアスキルを渡すにゃんて!」
「本当!ミッケ、貴方ってすごい猫ね。」
尊敬の対象は、ティルミオでは無く、ミッケになってしまったのだ。
「えっ、コレ俺が褒められる流れじゃないの……?」
「何を言ってるにゃ?褒められるべきは我に決まってるにゃ!」
そう言って、フフンと鼻を鳴らして得意顔をするミッケに、ティティルナもうんうんと頷いて同意して見せた。
「そうだよ。だってミッケが居なかったら私たちこんな凄い能力貰えなかったんだよ?」
「それは、確かにそうだけど……」
「そうにゃ!もっと褒めるにゃ!!」
「ミッケは可愛いし凄い三毛猫よ!」
「えぇっ……」
そんな調子の二人から、思った様な反応を得られなかったティルミオは、妹と飼い猫の盛り上がる様子を、どこか釈然としない気分で見つめたのだった。
ジェラミーが帰って、ミッケをたっぷりと叱った後で、ティティルナは店の掃除をしながら、未だ具合の悪そうに椅子に座って居る兄に対して、物憂い顔でそう問いかけた。
帰宅してから暫く経つというのに、全然回復する気配を見せないティルミオの事をティティルナは本気で心配していて、これ以上兄に無理をして欲しくなかったのだ。
しかし、ティルミオの体調が悪い理由はそんな事では無いのだ。だから彼は、ティティルナを安心させる為に、何故自分が体調を崩したのか本当の事情を打ち明けたのだった。
「いや、違うんだ。実は俺、贈り物が分かったんだ!」
「本当に?!」「本当にゃ?!」
少し興奮気味に話すティルミオからの予想外な報告に、ティティルナとミッケは、大きな声を出して驚いてみせた。
するとティルミオは、そんな二人の驚く反応を満足そうに見つめながら大きく頷くと、少しきまりが悪そうに、それでいてどこか嬉しそうに続きを話した。
「あぁ。今日ギルドの仕事をしている時に気付いたんだ。で、この能力をちょっと使いすぎちゃって、……で、多分コレは魔力切れって奴だと思う……」
そう話すティルミオは、散々妹に無理をするなと言っていた手前、少し歯切れが悪かった。そして彼は案の定、ティティルナから昨日自分が妹にしたのと同じお説教を食らうのであった。
「もう、お兄ちゃん私には散々無理するなって言ってたのに!」
「いやぁ、自分じゃ分かんない物だな。コレからは気をつけるよ。」
「絶対にだよ?無理しちゃダメだよ!」
「あ、あぁ……分かったよ。」
今まで心配する立場だったのが逆転してしまい、ティルミオは妹からの戒めの言葉にタジタジであった。
そんな兄妹のやりとりを、ミッケは少し離れたカウンターの上で寝そべりながら聞いていたのだが、二人は中々肝心な事を話さないのだ。
だからミッケは、痺れを切らして自らが、今一番知るべき事をティルミオに問いかけたのだった。
「それで、ティオは一体どんな能力にゃんだ?」
そのミッケの質問を聞いたティルミオは、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせると、二人に胸を張って得意げに自分の能力について説明をした。
「そう、凄いんだよ!なんと……強く念じて視ると、物が光って見える様になったんだ!!」
しかし、ドヤ顔でそんなこと言われても、ティティルナにもミッケにも意味がわからなかった。ティルミオは言葉が足りないのだ。
「う……うん?そうなんだ。」
少し困った様に返事をする妹の反応を見て、ティルミオは自分が伝えたい事が全く伝わっていないと察すると、慌てて言葉を付け足した。
「だから、強く念じて見ると分かるんだ!草が!!」
「お兄ちゃんごめん……全く意味が分からないよ……」
「だーかーら、この草が欲しいって強く念じたらその草が光って見えてどこに生えてるから直ぐに分かったり、弱点はどこだって強く念じて視たら魔物の弱点が分かったりするんだよ!」
そこまで説明した事で、ミッケはやっとティルミオがどんな能力が使える様になったかを理解した。それと同時に、その稀有な能力の発言に大いに興奮したのだった。
「それは、鑑定眼にゃ!凄いにゃ!レアスキルにゃ!!」
「そうだろう!凄いだろう!!この力があれば、ギルドの採取クエストなんて簡単に終わるんだ!」
ティルミオは、自分の能力の凄さに気がついたミッケが感嘆の声を上げたことに気を良くし、鼻を高くして誇らしげに笑った。
しかし、彼が優越感に浸ったのはほんの束の間だった。
「流石我にゃ!!二人ともにレアスキルを渡すにゃんて!」
「本当!ミッケ、貴方ってすごい猫ね。」
尊敬の対象は、ティルミオでは無く、ミッケになってしまったのだ。
「えっ、コレ俺が褒められる流れじゃないの……?」
「何を言ってるにゃ?褒められるべきは我に決まってるにゃ!」
そう言って、フフンと鼻を鳴らして得意顔をするミッケに、ティティルナもうんうんと頷いて同意して見せた。
「そうだよ。だってミッケが居なかったら私たちこんな凄い能力貰えなかったんだよ?」
「それは、確かにそうだけど……」
「そうにゃ!もっと褒めるにゃ!!」
「ミッケは可愛いし凄い三毛猫よ!」
「えぇっ……」
そんな調子の二人から、思った様な反応を得られなかったティルミオは、妹と飼い猫の盛り上がる様子を、どこか釈然としない気分で見つめたのだった。
10
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・
今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。
その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。
皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。
刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。
聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!
山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」
────何言ってんのコイツ?
あれ? 私に言ってるんじゃないの?
ていうか、ここはどこ?
ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ!
推しに会いに行かねばならんのだよ!!
転生したら、最推しキャラの弟に執着された件。 〜猫憑き!?氷の騎士が離してくれません〜
椎名さえら
恋愛
私はその日、途方に暮れていた。
なにしろ生家であるサットン侯爵家が没落し、
子供の頃からの婚約者に婚約破棄されたのだ。
だが同時に唐突に気づいた。
ここはかつて読んでいた某ライトノベルの世界だと!
しかもガスはあるし、水道も通ってるし、醤油が存在する
まさかのチートすぎる世界だった。
転生令嬢が、氷の騎士(最推しキャラの、弟!)と
呼ばれる男のリハビリを精一杯して
ヒロインのもとへ返してあげようとしたら、
ヒーローの秘密(キーは猫)を知った上、
気づいたら執着からの溺愛されて逃げられなくなる話。
※完結投稿です
※他サイトさんでも連載しています
※初日のみ頻回更新、のち朝6時&18時更新です
※6/25 「23 決戦は明後日」の内容が重複しておりましたので修正しました
すみません(/_;)

(短編)いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる