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26. フィオンのお説教1
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顔は笑っているけど目は全く笑っていないフィオンは、お説教モードでカーステン兄妹の前に立ちはだかっていた。
「えっと、そうだね。どっちから話そうかな?」
そう言ってフィオンはティルミオとティティルナを見比べると、ティティルナの方を向いて彼女に声をかけた。
「じゃあ先ずはティナから。アカデミーを辞めるのは僕も反対だ。君の為にならないよ。」
フィオンはなるだけ優しい声で、ティルミオと同じようにティティルナにアカデミーを辞めないようにと苦言を呈した。
しかし、フィオンに諭されても、それ位ではティティルナの意見は変わらなかった。
「でもフィオンさん、昼間はお店を開けないといけないの。私も働かないと税金も納められないわ。」
彼女の中では自分が学ぶ事よりお店を開けてお金を稼ぐ事の方が絶対なのだ。
けれどもフィオンは、これ位ではティティルナの態度が変わらない事は予測済みで、気にせずに話を続けた。
「……お金の稼ぎ方については、ティオにも言いたい事があるけど、それはまぁ後にするとして、どうしてもティナが昼間に店番をしないといけないとしても、だからと言ってアカデミーを辞めるのは良く無いよ。」
「でもっ……」
途中で口を挟もうとするティティルナを手で制しながら、フィオンは言葉を続けた。
「ティナ、話は最後まで聞きなさい。アカデミー辞めるんじゃなくて、休学でどうだろうか?だって後半年も通えば卒業だろう?辞めてしまうのは勿体無いよ。」
「休学……?」
「うん。休学。それか夜間クラスっていうのもあるんだよ。ティナみたいに様々な事情があって昼間アカデミーに通えなかった人が学ぶ場所があるんだ。まぁ夜間クラスは通常より授業時間が短いから、その分卒業までに長くかかってしまうけど。」
アカデミーを辞めるしか選択肢がないと思い込んでいたティティルナにとって、このフィオンの提案は、全くもって思ってもみない事だった。いや、そもそもそういった制度がある事さえ知らなかったのだ。
「そ……そうなんだ。……出来るんだ。そういうことも。」
「そう、出来るんだよ、そういう事も。」
フィオンはニッコリと笑って、意思が揺らいだティティルナに対して畳み掛けた。
「ね?ティナが昼間お店を開けて働いたとしても、アカデミーを辞めないで良い方法があるんだよ。だからアカデミーを辞めるだなんて言わないでさ、他の方法を検討しようよ。」
「そうだよティナ、フィオンの言う通りだよ。アカデミーは辞めるんじゃないよ!」
妹には何としてもアカデミーを卒業して貰いたいティルミオも力強くフィオンの提案を後押しした事もあって、ティティルナは遂に二人の説得の前に折れたのだった。
「うん、分かったよ。休学か、夜間クラスか、どういう形にしろアカデミーは辞めないで頑張るよ。」
考えを変えたティティルナのこの宣言に、ティルミオもフィオンも安堵していた。
アカデミーの卒業資格があると無いとでは、就ける職業に制限があるのだ。
この先、ティティルナがカーステン商店以外の仕事をしたくなるかは分からないが、もしそうなった時に彼女が選択に困らないようにと二人の兄たちはティティルナの未来を案じていたので、彼女のこの決断にホッと胸を撫で下ろしたのだった。
しかし、このティティルナの決断を歓迎しない者がこの場に一人だけ居たのだ。
「私は認めないわ!休学だの、夜間クラスだの、そんなの逃げだわ!!」
今まで黙って話を聞いていたフィオナが、泣きそうな顔でそう叫んだのだ。
突然の事に、ティルミオもティティルナも呆気に取られて言葉なくフィオネの方を見つめて戸惑ってしまった。
フィオネにそんな事を何故言われなくてはいけないのかが分からないのだ。
しかし、流石は実の兄である。フィオンには妹の思っている事が直ぐに分かったので、彼はフィオネの頭をポンポンと叩くと彼女の気持ちを代弁して宥めたのだった。
「うーん、フィオネ。ティナと一緒に学ぶ事が出来なくなるのが残念なのは分かるけど、でも話がややこしくなるから今はちょっと黙ってようか。」
そうなのだ。フィオネはティティルナと一緒に卒業が出来ないのが嫌だったのだが、それを素直に口にする事が出来ずに、あんな捻くれた感じの駄々をこねたのだ。
フィオンは妹のことが可愛いので、フィオネの気持ちは大切にしてやりたかったのだが、でも今は黙っていて貰う事にした。そうしないと話が一向にまとまらず先に進まないから。
だからフィオンは妹を言い含めて黙らせると、ティティルナとの話題はこれで終わりにして、今度はティルミオの方に向き合ったのだった。
「で、次はティオなんだけど……覚悟はいいかな?」
そう言ってフィオンは笑ってない目でニッコリと笑った。
今迄は前哨戦に過ぎなくて、ここからがお説教の本番なのであった。
「えっと、そうだね。どっちから話そうかな?」
そう言ってフィオンはティルミオとティティルナを見比べると、ティティルナの方を向いて彼女に声をかけた。
「じゃあ先ずはティナから。アカデミーを辞めるのは僕も反対だ。君の為にならないよ。」
フィオンはなるだけ優しい声で、ティルミオと同じようにティティルナにアカデミーを辞めないようにと苦言を呈した。
しかし、フィオンに諭されても、それ位ではティティルナの意見は変わらなかった。
「でもフィオンさん、昼間はお店を開けないといけないの。私も働かないと税金も納められないわ。」
彼女の中では自分が学ぶ事よりお店を開けてお金を稼ぐ事の方が絶対なのだ。
けれどもフィオンは、これ位ではティティルナの態度が変わらない事は予測済みで、気にせずに話を続けた。
「……お金の稼ぎ方については、ティオにも言いたい事があるけど、それはまぁ後にするとして、どうしてもティナが昼間に店番をしないといけないとしても、だからと言ってアカデミーを辞めるのは良く無いよ。」
「でもっ……」
途中で口を挟もうとするティティルナを手で制しながら、フィオンは言葉を続けた。
「ティナ、話は最後まで聞きなさい。アカデミー辞めるんじゃなくて、休学でどうだろうか?だって後半年も通えば卒業だろう?辞めてしまうのは勿体無いよ。」
「休学……?」
「うん。休学。それか夜間クラスっていうのもあるんだよ。ティナみたいに様々な事情があって昼間アカデミーに通えなかった人が学ぶ場所があるんだ。まぁ夜間クラスは通常より授業時間が短いから、その分卒業までに長くかかってしまうけど。」
アカデミーを辞めるしか選択肢がないと思い込んでいたティティルナにとって、このフィオンの提案は、全くもって思ってもみない事だった。いや、そもそもそういった制度がある事さえ知らなかったのだ。
「そ……そうなんだ。……出来るんだ。そういうことも。」
「そう、出来るんだよ、そういう事も。」
フィオンはニッコリと笑って、意思が揺らいだティティルナに対して畳み掛けた。
「ね?ティナが昼間お店を開けて働いたとしても、アカデミーを辞めないで良い方法があるんだよ。だからアカデミーを辞めるだなんて言わないでさ、他の方法を検討しようよ。」
「そうだよティナ、フィオンの言う通りだよ。アカデミーは辞めるんじゃないよ!」
妹には何としてもアカデミーを卒業して貰いたいティルミオも力強くフィオンの提案を後押しした事もあって、ティティルナは遂に二人の説得の前に折れたのだった。
「うん、分かったよ。休学か、夜間クラスか、どういう形にしろアカデミーは辞めないで頑張るよ。」
考えを変えたティティルナのこの宣言に、ティルミオもフィオンも安堵していた。
アカデミーの卒業資格があると無いとでは、就ける職業に制限があるのだ。
この先、ティティルナがカーステン商店以外の仕事をしたくなるかは分からないが、もしそうなった時に彼女が選択に困らないようにと二人の兄たちはティティルナの未来を案じていたので、彼女のこの決断にホッと胸を撫で下ろしたのだった。
しかし、このティティルナの決断を歓迎しない者がこの場に一人だけ居たのだ。
「私は認めないわ!休学だの、夜間クラスだの、そんなの逃げだわ!!」
今まで黙って話を聞いていたフィオナが、泣きそうな顔でそう叫んだのだ。
突然の事に、ティルミオもティティルナも呆気に取られて言葉なくフィオネの方を見つめて戸惑ってしまった。
フィオネにそんな事を何故言われなくてはいけないのかが分からないのだ。
しかし、流石は実の兄である。フィオンには妹の思っている事が直ぐに分かったので、彼はフィオネの頭をポンポンと叩くと彼女の気持ちを代弁して宥めたのだった。
「うーん、フィオネ。ティナと一緒に学ぶ事が出来なくなるのが残念なのは分かるけど、でも話がややこしくなるから今はちょっと黙ってようか。」
そうなのだ。フィオネはティティルナと一緒に卒業が出来ないのが嫌だったのだが、それを素直に口にする事が出来ずに、あんな捻くれた感じの駄々をこねたのだ。
フィオンは妹のことが可愛いので、フィオネの気持ちは大切にしてやりたかったのだが、でも今は黙っていて貰う事にした。そうしないと話が一向にまとまらず先に進まないから。
だからフィオンは妹を言い含めて黙らせると、ティティルナとの話題はこれで終わりにして、今度はティルミオの方に向き合ったのだった。
「で、次はティオなんだけど……覚悟はいいかな?」
そう言ってフィオンは笑ってない目でニッコリと笑った。
今迄は前哨戦に過ぎなくて、ここからがお説教の本番なのであった。
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