27 / 115
25. アカデミー辞めます!
しおりを挟む
「それで、一体いつになったら貴女はアカデミーに戻ってくるのかしら?」
兄たちがお金の話をしているその横で、フィオネはチラチラとティティルナを横目で見ながらそんな事を尋ねていた。
ティティルナは、両親が亡くなってから今日までの間、一週間アカデミーを休んでいたのだ。
だからフィオネは、早くティティルナにアカデミーに戻ってきて欲しかったのだが、しかし、ティティルナの口からはフィオネが聞きたかった言葉とは全く正反対の答えが返ってきたのだった。
「戻らないわ。私、アカデミー辞めようと思うの。だからフィオネ、みんなにもよろしく言っておいてね。」
「何ですって?!」
「なんだって?!」
さらっと言ったティティルナの発言に、フィオネはだけでなくティルミオも大きな声を出して反応した。そして声こそ出していなかったが、フィオンもその表情から驚いている事が窺えた。
アカデミーとは、この国の十歳~十五歳の子供が通う教育機関で、そこで子供たちは読み書き計算や、裁縫や料理、それに簡単な木工や金工など、生活に必要な知識や技術を身に付けるのだ。
そんな大切な学びの機会を、ティティルナは自分から手放そうとしているのだ。兄としてティルミオは当然承諾出来なかった。
「アカデミーを辞めるだなんて、そんなの俺は承諾出来ないよ!」
「でも、私がアカデミーに通ってたらお店を開けられないじゃない。」
「店番なら俺がするから!お前はアカデミーに通えって!」
「お兄ちゃんはダメよ。折角冒険者になったんでしょう?危険な事はして欲しくないけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんの仕事をしなきゃ。二人で稼がないと税金も払えないし借金も返せないでしょう?!」
先程兄たちの会話から、借金の総額がかなりの額であると察してしまった事もあって、自分も働いて少しでもお金を稼ぐんだというティティルナの意思は固かった。
「じゃあミッ……」
姿を見せないでミッケに声だけで店番をやらせたら良いだろう。
そう言いかけてティルミオは直前で言葉を止めた。
この場にはフィオンとフィオネが居るのだ。猫に店番をやらせるなどと言ったら、頭がおかしくなったと思われてしまうのは明らかだった。
「と、とにかくアカデミーを辞めるなんて絶対にダメだ。ティナにとって良くない。」
ティルミオは有効な代替案を示せぬまま、とにかく妹に考えを変えるように言い続けたが。そんな事ではティティルナの考えは変わらなかった。
ティルミオもティティルナも、お互いに譲らずに話し合いは平行線で、着地点が全く見えずに膠着状態が続くと思われた。
すると、そんな二人のやり取りを柔かにフィオンが遮ったのだった。
「ちょっと待って。一旦話を止めようか。初めて聞く話が多過ぎるんだけど……?」
彼は柔かに笑みを浮かべてはいたが、その目は全く笑っていなかった。明らかに怒っていた。
ティルミオもティティルナも、付き合いが長いから知っていた。こういう時のフィオンには逆らわない方が良いのだ。
だから二人は話をピタリと止めると、恐る恐るフィオンの方を向いて大人しく彼の話を聞く体制を取ったのだった。
兄たちがお金の話をしているその横で、フィオネはチラチラとティティルナを横目で見ながらそんな事を尋ねていた。
ティティルナは、両親が亡くなってから今日までの間、一週間アカデミーを休んでいたのだ。
だからフィオネは、早くティティルナにアカデミーに戻ってきて欲しかったのだが、しかし、ティティルナの口からはフィオネが聞きたかった言葉とは全く正反対の答えが返ってきたのだった。
「戻らないわ。私、アカデミー辞めようと思うの。だからフィオネ、みんなにもよろしく言っておいてね。」
「何ですって?!」
「なんだって?!」
さらっと言ったティティルナの発言に、フィオネはだけでなくティルミオも大きな声を出して反応した。そして声こそ出していなかったが、フィオンもその表情から驚いている事が窺えた。
アカデミーとは、この国の十歳~十五歳の子供が通う教育機関で、そこで子供たちは読み書き計算や、裁縫や料理、それに簡単な木工や金工など、生活に必要な知識や技術を身に付けるのだ。
そんな大切な学びの機会を、ティティルナは自分から手放そうとしているのだ。兄としてティルミオは当然承諾出来なかった。
「アカデミーを辞めるだなんて、そんなの俺は承諾出来ないよ!」
「でも、私がアカデミーに通ってたらお店を開けられないじゃない。」
「店番なら俺がするから!お前はアカデミーに通えって!」
「お兄ちゃんはダメよ。折角冒険者になったんでしょう?危険な事はして欲しくないけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんの仕事をしなきゃ。二人で稼がないと税金も払えないし借金も返せないでしょう?!」
先程兄たちの会話から、借金の総額がかなりの額であると察してしまった事もあって、自分も働いて少しでもお金を稼ぐんだというティティルナの意思は固かった。
「じゃあミッ……」
姿を見せないでミッケに声だけで店番をやらせたら良いだろう。
そう言いかけてティルミオは直前で言葉を止めた。
この場にはフィオンとフィオネが居るのだ。猫に店番をやらせるなどと言ったら、頭がおかしくなったと思われてしまうのは明らかだった。
「と、とにかくアカデミーを辞めるなんて絶対にダメだ。ティナにとって良くない。」
ティルミオは有効な代替案を示せぬまま、とにかく妹に考えを変えるように言い続けたが。そんな事ではティティルナの考えは変わらなかった。
ティルミオもティティルナも、お互いに譲らずに話し合いは平行線で、着地点が全く見えずに膠着状態が続くと思われた。
すると、そんな二人のやり取りを柔かにフィオンが遮ったのだった。
「ちょっと待って。一旦話を止めようか。初めて聞く話が多過ぎるんだけど……?」
彼は柔かに笑みを浮かべてはいたが、その目は全く笑っていなかった。明らかに怒っていた。
ティルミオもティティルナも、付き合いが長いから知っていた。こういう時のフィオンには逆らわない方が良いのだ。
だから二人は話をピタリと止めると、恐る恐るフィオンの方を向いて大人しく彼の話を聞く体制を取ったのだった。
10
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
さようなら、元旦那様。早く家から出ていってくださいな?
水垣するめ
恋愛
ある日、突然夫のカイル・グラントが離婚状を叩きつけてきた。
理由は「君への愛が尽きたから」だそうだ。
しかし、私は知っていた。
カイルが離婚する本当の理由は、「夫婦の財産は全て共有」という法を悪用して、私のモーガン家のお金を使い尽くしたので、逃げようとしているためだ。
当然逃がすつもりもない。
なので私はカイルの弱点を掴むことにして……。
大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
【完結】シナリオに沿ってやり返そうと思います。
as
ファンタジー
乙女ゲームの強制力により婚約破棄を言い渡され、ヒロインが別の攻略対象者を選んだせいで元婚約者と結婚させられたイリーニア。強制力があるなら、シナリオに沿ってやり返してやる!
少女は自重を知らない~私、普通ですよね?
チャチャ
ファンタジー
山部 美里 40歳 独身。
趣味は、料理、洗濯、食べ歩き、ラノベを読む事。
ある日、仕事帰りにコンビニ強盗と鉢合わせになり、強盗犯に殺されてしまう。
気づいたら異世界に転生してました!
ラノベ好きな美里は、異世界に来たことを喜び、そして自重を知らない美里はいろいろな人を巻き込みながら楽しく過ごす!
自重知らずの彼女はどこへ行く?
男爵令嬢のまったり節約ごはん
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
旧題:【美味しい】男爵令嬢のまったり節約ごはん! 〜婚約破棄したのに戻ってこいなんて、お断りです。貴族の地位?いらないのでお野菜くださいな?
書籍化決定! レジーナ文庫さんより12月下旬発売予定です。
男爵令嬢のアメリア・ローズベリーは、長年の婚約者であった伯爵令息のスペンス・グレイに突然の婚約破棄を突きつけられた。
さんざん待たされた上の婚約破棄だった。
どうやらスペンスは、数年前からメイドとできていたらしい。
結婚適齢期をとうに過ぎていたアメリア。もう貰い手もない。
あまりお金のない弱小貴族である実家・ローズベリー家のためもあり、形式上の婚約に、これまでは耐えてきたが…………。
もう我慢の限界だった。
好きなことをして生きようと決めた彼女は、結婚を諦め、夢だった料理屋をオープンする。
彼女には特殊な精霊獣を召喚する力があり、
その精霊獣は【調味料生成】という特殊魔法を使うことができたのだ!
その精霊は異世界にも精通しており、アメリアは現代日本の料理まで作ることができた(唐揚げ美味しい)。
そんな彼女がオープンした店のコンセプトは、風変わりではあるが『節約』!
アメリアは貧乏な実家で培ってきた節約術で、さまざまな人の舌と心を虜にしていく。
庶民として、貴族であったことは隠して穏やかに暮らしたいアメリア。
しかし彼女のそんな思いとは裏腹に、店の前で倒れていたところを助けた相手は辺境伯様で……。
見目麗しい彼は、アメリアを溺愛しはじめる。
そんな彼を中心に、時に愉快なお客様たちを巻き込みながら、アメリアは料理道に邁進するのだった(唐揚げ美味しい)
※ スペンスsideのお話も、間隔は空きますが続きます。引き続きブクマしていただければ嬉しいです。
♢♢♢
2021/8/4〜8/7 HOTランキング1位!
2021/8/4〜8/9 ファンタジーランキング1位!
ありがとうございます!
同じ名前のヒーローとヒロインで書いてる人がいるようですが、特に関係はありませんのでよろしくお願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる