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40. 反省会
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アンナが家に帰ると、そこにはニヤニヤしたエミリアの視線と、冷ややかなエヴァンの視線が待ち構えていた。
「なるほど。彼、顔が良いわね!!」
帰ってきたアンナを見るや否や、開口一番にエミリアがそう言ったのだ。
あまりにも突然な事に、アンナが面食らって反応出来ないでいると、物凄くキラキラした笑顔のエミリアは一人で勝手に何かを納得していた。
「腹の内が見えなくて、中々食えなさそうな人ではあるけども、アンナの事庇ってくれたし、大事にしてくれそうね。うん、私は応援するわ!!」
一人盛り上がってるエミリアについていけず、アンナはしどろもどろになりながら答えた。
「えっと……、有難う……?」
果たしてそれが正しい受け答えだったのかは怪しいが、エミリアに圧倒されてアンナは咄嗟にそれしか言葉が出なかったのだ。
そんなエミリアとは対照的に、エヴァンはずっと難しい顔でこの二人のやりとりを黙って見ていた。
姉の恋愛話など気恥ずかしくて聞いてられないのが本心だが、思うところがあってエヴァンはため息を吐くと二人の会話に割って入ったのだった。
「……姉さんがあの人の事を好きでも、俺はやっぱり、手放しで応援してあげられないや……」
ボソリと呟いた弟の言葉に驚いてアンナは彼の方を見た。弟の口からそのような言葉が出るとは思っても見なかったからだ。それでも、エヴァンは俯きながら言い難そうに言葉を続ける。
「なんて言うか……絶対に拗れると思う……。ほらっ、だってあと二週間も無いんだよ?姉さんの誕生日まで。男爵位を引き継いだらいったいどうするのさ。」
「それは……分かってる……わよ……。」
エヴァンが口にした直ぐに直面するであろう問題に、さっきまでの盛り上がりは一瞬で鳴りをひそめ、全員が黙ってしまった。
重苦しい空気が流れる中、アンナは意を決して口を開いたのだった。
「……その時が来たらちゃんと話をして、今まで有難うって言って、きっとそれでお終いよ。」
もの悲しげに笑って、アンナまるでは自分に言い聞かせるかの様に話した。
そんな姉の哀しげな表情を見て、エヴァンも思い詰めた様子で口を開く。
「……もし、俺が姉さんの足枷になってしまっているのなら……」
けれども、そこまで言って彼は言葉を止めた。
「ううん。なんでもない。」
男爵位に縛られる事が無かったら、姉は一体どう言う未来を望んだのだろうか。エヴァンは人知れずずっと憂いていたが、それを今言ってしまうと、アンナのこの五年間を否定してしまうのではないかと思ったからだ。
「それからさ、ついでにもう一つ言わせてもらうと、俺は姉さんが危険な目に遭うのは嫌なんだ。あの人のあの怪我、一歩間違ったら姉さんが負っていたかもしれないじゃないか。そんな危険な仕事、もうやって欲しくないんだ……」
俯いたままで、エヴァンは続ける。前々からずっと思っていたのだが、今回、ルーフェスの酷い傷跡を目の当たりにした事で、今まで押し込めていた不安が溢れ出てしまったのだ。
「ごめんね、不安にさせちゃったね……」
アンナは弟の頭をそっと撫でると、申し訳なさそうに謝った。
「……大丈夫よ。今回はちょっと身の丈に合ってない依頼を受けちゃっただけで、もう危険な依頼は受けないわ。それに、私が男爵位を取り戻したらもう冒険者の仕事もする事も無いだろうしね。」
「……うん。」
アンナが弟を安心させようと、優しく微笑んで見せると、エヴァンはまだ少し何か言いたげではあったが、それ以上何も言わずに引き下がった。
「ほらっ!そんなしんみりしないのっ!二人とも笑って!」
重苦しい空気が流れかけた中、場違いな程明るい声を出して、エミリアが向かい合う二人の背中をポンポンと叩いて元気付けると、自身も満面の笑顔みせたのだった。
「「エミリア……」」
姉弟が同時に彼女の名前を呼ぶと、エミリアは愛おしそうに二人を眺めて、二人を同時に抱きしめたのだった。
「大丈夫よエヴァン。貴方の心配は私もとても分かるけど、でも、アンナが冒険者の仕事をするのは後少しの間だからね。もうこんな危険な事はしない筈よ。アンナも、約束してよね?後少しだけどもうこんな危険な仕事をしないって。」
「うん……。約束するわ。後少しの間だけだけども、それでも、二人が心配する様な危険な仕事はもうしないわ。」
エミリアの言葉を素直に受け入れると、アンナはエミリアに抱きしめられたまま、自分も目の前の弟をギュッと抱きしめた。
「後少しなのは、分かってるんだけど……」
アンナの腕の中で、エヴァンはポツリと言った。彼の心中は、とても複雑だった。
アンナが十八歳になったら、事態が大きく動く。
アンナ達姉弟を殺そうとまでした叔父が相手なので、上手く爵位を取り戻せるか確証は無いが、それでも、アンナが身分と権利を公に主張したら、この暮らしが大きく変わることは明白だった。
上手く爵位を引き継げたのなら、姉は危険な冒険者の仕事をしないで済み、それはエヴァンの望む所だった。しかし同時に、そうなると、彼らはこの王都の暮らしを終わらせて、領地へ帰る事になるのだ。
「……そうなったら、エミリアともこんな風に気軽に会えなくなるよね……」
二人の腕の中で、泣きそうになりながら、エヴァンは呟いた。
前々からわかっていた事だったが、あえて三人はその事には触れてこなかった。だけれども今回の件をきっかけに、今まで内に溜めて蓋をしていたわだかまりが、堰を切ったように溢れ出て、抑えきれなくなったのだ。
「……そうね。貴方たち姉弟がラディウス領へ帰ってしまったら、物理的にもそう簡単に会えなくなるわね。」
エミリアは、アンナとエヴァンを抱きしめる手に力を込めると、諭す様に優しい声で語りかけた。
「エミリアは、寂しく無いの……?」
「寂しくないと言ったら嘘になるけども、私は貴方たち姉弟の幸せを願ってるのよ。それにね、永遠の別れって訳じゃないでしょう、距離も身分も離れたとしても、私たちはお互いが望めば、会う事が出来るし手紙だってあるわ。だからほら、笑って?」
エミリアはそう言うと、エヴァンの顔を覗き込み、彼の頬に両手を添えると口角を引っ張り上げたのだった。
「ちょっとっ!!無理矢理過ぎない?!」
エヴァンはエミリアの手を慌てて振り払って抗議するも、エミリアはクスクスと笑いながら、さらにエヴァンの顔を引っ張ろうとしている。
エミリアが揶揄い、エヴァンがムキになって拗ねる。そんないつも通りのやりとりを、アンナは笑っている様な悲しんでいるような、複雑な表情で見守っていた。
十八歳の誕生日まであと少し。
とても待ち望んでいた日であるはずなのに、今はその日が近づく度に、胸がざわざわして落ちつかない。
十八歳になったら、裁判所に申し立てをして、叔父から正式にラディウス男爵位を取り返す。
それが、この五年間ずっと抱いていた悲願だった筈なのに、ルーフェスやエミリアと別れたくないという思いが日に日に強くなっているのだ。
もし、このままこの暮らしを続けたら……。そんな考えが頭を過ぎるたびに、アンナは必死に打ち消していた。
「なるほど。彼、顔が良いわね!!」
帰ってきたアンナを見るや否や、開口一番にエミリアがそう言ったのだ。
あまりにも突然な事に、アンナが面食らって反応出来ないでいると、物凄くキラキラした笑顔のエミリアは一人で勝手に何かを納得していた。
「腹の内が見えなくて、中々食えなさそうな人ではあるけども、アンナの事庇ってくれたし、大事にしてくれそうね。うん、私は応援するわ!!」
一人盛り上がってるエミリアについていけず、アンナはしどろもどろになりながら答えた。
「えっと……、有難う……?」
果たしてそれが正しい受け答えだったのかは怪しいが、エミリアに圧倒されてアンナは咄嗟にそれしか言葉が出なかったのだ。
そんなエミリアとは対照的に、エヴァンはずっと難しい顔でこの二人のやりとりを黙って見ていた。
姉の恋愛話など気恥ずかしくて聞いてられないのが本心だが、思うところがあってエヴァンはため息を吐くと二人の会話に割って入ったのだった。
「……姉さんがあの人の事を好きでも、俺はやっぱり、手放しで応援してあげられないや……」
ボソリと呟いた弟の言葉に驚いてアンナは彼の方を見た。弟の口からそのような言葉が出るとは思っても見なかったからだ。それでも、エヴァンは俯きながら言い難そうに言葉を続ける。
「なんて言うか……絶対に拗れると思う……。ほらっ、だってあと二週間も無いんだよ?姉さんの誕生日まで。男爵位を引き継いだらいったいどうするのさ。」
「それは……分かってる……わよ……。」
エヴァンが口にした直ぐに直面するであろう問題に、さっきまでの盛り上がりは一瞬で鳴りをひそめ、全員が黙ってしまった。
重苦しい空気が流れる中、アンナは意を決して口を開いたのだった。
「……その時が来たらちゃんと話をして、今まで有難うって言って、きっとそれでお終いよ。」
もの悲しげに笑って、アンナまるでは自分に言い聞かせるかの様に話した。
そんな姉の哀しげな表情を見て、エヴァンも思い詰めた様子で口を開く。
「……もし、俺が姉さんの足枷になってしまっているのなら……」
けれども、そこまで言って彼は言葉を止めた。
「ううん。なんでもない。」
男爵位に縛られる事が無かったら、姉は一体どう言う未来を望んだのだろうか。エヴァンは人知れずずっと憂いていたが、それを今言ってしまうと、アンナのこの五年間を否定してしまうのではないかと思ったからだ。
「それからさ、ついでにもう一つ言わせてもらうと、俺は姉さんが危険な目に遭うのは嫌なんだ。あの人のあの怪我、一歩間違ったら姉さんが負っていたかもしれないじゃないか。そんな危険な仕事、もうやって欲しくないんだ……」
俯いたままで、エヴァンは続ける。前々からずっと思っていたのだが、今回、ルーフェスの酷い傷跡を目の当たりにした事で、今まで押し込めていた不安が溢れ出てしまったのだ。
「ごめんね、不安にさせちゃったね……」
アンナは弟の頭をそっと撫でると、申し訳なさそうに謝った。
「……大丈夫よ。今回はちょっと身の丈に合ってない依頼を受けちゃっただけで、もう危険な依頼は受けないわ。それに、私が男爵位を取り戻したらもう冒険者の仕事もする事も無いだろうしね。」
「……うん。」
アンナが弟を安心させようと、優しく微笑んで見せると、エヴァンはまだ少し何か言いたげではあったが、それ以上何も言わずに引き下がった。
「ほらっ!そんなしんみりしないのっ!二人とも笑って!」
重苦しい空気が流れかけた中、場違いな程明るい声を出して、エミリアが向かい合う二人の背中をポンポンと叩いて元気付けると、自身も満面の笑顔みせたのだった。
「「エミリア……」」
姉弟が同時に彼女の名前を呼ぶと、エミリアは愛おしそうに二人を眺めて、二人を同時に抱きしめたのだった。
「大丈夫よエヴァン。貴方の心配は私もとても分かるけど、でも、アンナが冒険者の仕事をするのは後少しの間だからね。もうこんな危険な事はしない筈よ。アンナも、約束してよね?後少しだけどもうこんな危険な仕事をしないって。」
「うん……。約束するわ。後少しの間だけだけども、それでも、二人が心配する様な危険な仕事はもうしないわ。」
エミリアの言葉を素直に受け入れると、アンナはエミリアに抱きしめられたまま、自分も目の前の弟をギュッと抱きしめた。
「後少しなのは、分かってるんだけど……」
アンナの腕の中で、エヴァンはポツリと言った。彼の心中は、とても複雑だった。
アンナが十八歳になったら、事態が大きく動く。
アンナ達姉弟を殺そうとまでした叔父が相手なので、上手く爵位を取り戻せるか確証は無いが、それでも、アンナが身分と権利を公に主張したら、この暮らしが大きく変わることは明白だった。
上手く爵位を引き継げたのなら、姉は危険な冒険者の仕事をしないで済み、それはエヴァンの望む所だった。しかし同時に、そうなると、彼らはこの王都の暮らしを終わらせて、領地へ帰る事になるのだ。
「……そうなったら、エミリアともこんな風に気軽に会えなくなるよね……」
二人の腕の中で、泣きそうになりながら、エヴァンは呟いた。
前々からわかっていた事だったが、あえて三人はその事には触れてこなかった。だけれども今回の件をきっかけに、今まで内に溜めて蓋をしていたわだかまりが、堰を切ったように溢れ出て、抑えきれなくなったのだ。
「……そうね。貴方たち姉弟がラディウス領へ帰ってしまったら、物理的にもそう簡単に会えなくなるわね。」
エミリアは、アンナとエヴァンを抱きしめる手に力を込めると、諭す様に優しい声で語りかけた。
「エミリアは、寂しく無いの……?」
「寂しくないと言ったら嘘になるけども、私は貴方たち姉弟の幸せを願ってるのよ。それにね、永遠の別れって訳じゃないでしょう、距離も身分も離れたとしても、私たちはお互いが望めば、会う事が出来るし手紙だってあるわ。だからほら、笑って?」
エミリアはそう言うと、エヴァンの顔を覗き込み、彼の頬に両手を添えると口角を引っ張り上げたのだった。
「ちょっとっ!!無理矢理過ぎない?!」
エヴァンはエミリアの手を慌てて振り払って抗議するも、エミリアはクスクスと笑いながら、さらにエヴァンの顔を引っ張ろうとしている。
エミリアが揶揄い、エヴァンがムキになって拗ねる。そんないつも通りのやりとりを、アンナは笑っている様な悲しんでいるような、複雑な表情で見守っていた。
十八歳の誕生日まであと少し。
とても待ち望んでいた日であるはずなのに、今はその日が近づく度に、胸がざわざわして落ちつかない。
十八歳になったら、裁判所に申し立てをして、叔父から正式にラディウス男爵位を取り返す。
それが、この五年間ずっと抱いていた悲願だった筈なのに、ルーフェスやエミリアと別れたくないという思いが日に日に強くなっているのだ。
もし、このままこの暮らしを続けたら……。そんな考えが頭を過ぎるたびに、アンナは必死に打ち消していた。
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