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第1章 転生

17話 特異個体

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 スキル【ナビゲーター】のレベルが上がり色々設定ができると知ったジンはさっそく設定の確認を始めた。

『それじゃあ、自分で意識しなくてもレイに条件を言えばアラートを出したりできるのかな』

『はい、音声及び複数の音によるアラートが設定できます』

『それは便利だな、じゃあ、こんな設定できるかな。
探しているものが見つかったらトースターのタイマーの『チン』っていう音。
害意を持ったものが近づいたら『キュイッキュイッ』っていうアラート音をだすっていう設定なんだけど』

『可能です。アラート音を二つ設定しました』

『ヤブヒゲとヘビランを捜索対象に設定』

『設定を完了しました』

よし、これでマップとにらめっこしなくても近づけばわかるようになった。
マップの空白を埋めるように歩きながら薬草の探索をしていると腹の虫が鳴き出したので森の入り口まで引き返して弁当を食べることにした。
森の入り口にある大きな石の上に座って弁当を食べていると、突然『キュイッキュイッ』というアラート音が聞こえてくる。

『何?』

『害意のある魔獣が感知範囲に入りました』

開いたままのマップを見るとすぐ後ろに赤い光点が1つ表示されていた。

『・・・って、おい!すぐそこじゃないか?!』

びっくりして、食べかけの弁当をひっくり返しながら立ち上がった。
日本での平和ボケが抜けていなかったのか、不用心にも森を背にして食事をしていたのだ。
後ろに振り返りマップを確認すると、光点の主は狼だった。
入り口近くの藪を注視すると身を伏せてこちらを狙っている狼と目が合う。
弁当の匂いに誘われて出てきたのだろう、俺が気づかなかったら背後から襲われていたに違いない。
美味しい弁当を食べかけでひっくり返した事に腹が立ってきた。

「このやろう弁当の恨みだ!」

腰の刀を抜き、じわりじわりと狼に近づいていく。
それを見たウルフは後ずさりながらも目を離す事は無い。ジンが森の中に踏み込むと下がるのを止め、刀を持っていない方向へ回り始めた。
刀を狼から見難い角度に構え、すり足でじりじりと間合いを詰めていきながら鑑定を使う。
というのも、感知能力が未熟なのでマップでは確認できなかったからだ。

「鑑定」

【種族】     ワーウルフ
【レベル】    17
【状態】     興奮

『レイ、こいつって平均的な狼なのか?』

『ワーウルフの平均的なレベルは4~6です。レベル17であるこの個体は特異個体ですね』

(なるほど、狼が単独で狩をするのに違和感を感じたが特異個体だったか)

 戦闘体勢だったから細かいところまで見られなかったが、鑑定にもワーウルフって表示していた気がした。
特異個体がどんなものか解く知らないので、できれば戦闘を避けたいのだがこの状態ではもう逃げることも叶わない。

(こうなったら、やるしかないか)

ジンが覚悟をきめたちょくご目の前のワーウルフが動きを止めた。牙を剥いて唸り声をあげ、飛びかかるために体勢を低くして力をためている。
ジリッと足を動かすと次の瞬間飛びついてきたので刀で斬りつけたが手応えはあまりなかった。
もう一太刀浴びせようと思い振り返ると、着地した狼が立木を利用して反転し噛み付こうと襲いかかってきた。
致命傷だけは避けようと首をガードした左腕に噛み付かれてしまったが、堪えることができず押し倒されてしまった。
肘に牙が思い切り食い込み、ゴリゴリ異音が聞こえてくる。
だが、なぜか思っているほどの痛みや恐怖はなかった。
右手の刀は倒された拍子に手から離してしまったので右手で鼻や目を殴りつけたが体勢が悪いので全くと言っていいほど効いていないようだ

「あ!」

少し冷静になれたのかアイテムボックスの事を思い出し、今の状態でも攻撃可能なダガーを取り出して狼を滅多刺しにした。

「この野郎、くたばれ!」

ギャンッ

首筋を集中的に刺していると、やっと左肘を口から抜く事ができたが変な具合に腕がぷらぷらしているので千切れかけているかもしれない。
離れ際にワーウルフの横っ腹にダガーを叩き込み、落とした刀を拾ってヨタヨタしている魔狼の首を三度斬りつけると、やっと切り落とす事ができた。

『レベルアップしました。スキル【気配感知】を取得しました』

レイのアナウンスが聞こえた。
ワーウルフを倒した事でレベルアップしたようだ。
左手の肘が思った以上にひどいようなのでステータスを見たいのを後回しにして腕の状態を確認する。
シャツが真っ赤になっている。めくって見るとひどい状態で、試しに動かそうとしたがピクリともしない。
このままの状態で何かに襲われたらひとたまりもない。
考える時間が勿体無いので身を守る方法が無いか聞いてみる。

『レイ、何か身を守る方法は無い?』

『アイテムボックスの中にある結界石を起動させれば身を守れます』

 こんなに良い物を持っていたのを忘れていた、アイテムボックスから結界石を取り出し右手に載せると木々を巻き込むようにして結界が広がっていった。
それを見てジンは足元に結界石を置くと急いで3級ポーションを取り出し、栓を口で開けると中身を一気に飲み干した。

「うげっ! まずい…」

味は最悪であったが効果は素晴らしく、骨が見えるほどの深い傷がみるみるうちに良くなっていく。

『もう1本ポーションを飲んだほうがいいかな?』

『ポーションは必要ありません。ジン様は自動回復のスキルがありますので非常時以外はポーションが無くても全てのダメージが自動回復します』

ジンはスキルの事をすっかり忘れていたが時間短縮ができた事で良しとした。
倒した狼からダガーを抜き、首の離れた狼をアイテムボックスに入れる。
刀はというと、最後に意地になって首を切り落としたのが悪かったのか大きな刃こぼれができていた。
仕方がないので町に帰ったら研ぎ直してくれるところを探して修理することにした。
気に入っていた武器が刃こぼれしてしまった事で少し落ち込み依頼を一つ残したままだが一度町に帰る事にした。

 帰りながらステータスの確認をする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】  ジン・オキタ
【年齢】  15
【種族】  ヒューマン
【称号】  旅人
【レベル】             5
【HP】      1896/1896
【MP】      6813/6813
【STR(力)         651
【AGI(敏捷性)】      532
【CON(体力)】       586
【INT(知能)】       499
【DEX(器用)】       513
【LUC(運)】         70
【状態】             正常
【魔法】(全属性適応)

【スキル】
  鑑定Lv5  状態異常耐性Lv5
  心身異常耐性Lv5 身体強化Lv3
  思考加速 Lv2 気配感知
  剣術(居合・二刀) 格闘術 投擲術    
【ユニークスキル】
  偽装LvMAX アイテムボックス∞
  自動回復Lv5 ナビゲーターLv2
  マップLv1 
【加護】創造神の加護 エンデ主神の加護
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レベルとステータスが上がっている、他の人と比較していないのでなんとも言えないが数日前に比べれば倍以上になっている。
レベルアップしたことによってますますこの数値がおかしな事になってきた気がした。

『レイ、俺のステータス値の増え方は他の人と比べるとどんな感じなんだ?』

『この世界の人に比べる増加した数値は多いです。レベル相応の数値に偽装しますか?』

『頼む。ついでに偽装したステータスも見せてくれ』

『偽装後のステータスです』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】ジン・オキタ
【年齢】15
【種族】ヒューマン
【称号】冒険者
【レベル】5
【HP】       90/90
【MP】       81/81
【STR】         65
【AGI】         53
【CON】         59
【INT】         50
【DEX】         51
【LUC】         70
【状態】          正常
【魔法】
【スキル】鑑定Lv1
【加護】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『そういえば、気配感知ってレベルはないのか?』

『気配感知にレベルはありません、INT値に比例して感度と範囲が増えていきます』

『マップに影響はある?』

『マップされていない部分も感知範囲内であれば光点が表示されます』

これで随分安全に探索ができるようになったはず。
でも一人だと限界がある、仲間を増やしたいけどどうしよう。

『レイ、仲間を増やしたいんだけどどうすればいい?』

『冒険者ギルドでパーティ募集をするしかありませんね』

『そうか・・・』

まだ友達さえいないジンにとってパーティーを組むのは難題である。

  (早く友達を作らないとな~)

ジンは物思いにふけりながら北門へと歩いていくのであった。
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