曖-昧-多-色

muscat my cut

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無いんテール -曖昧な言葉-

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「あはは。」

いやいや。笑えないよ、それ。
当人は極普通に笑っているもののそれを聞いている私の顔はおそらく引きつっていた。

…なんか、家族が居なくなっちゃったんだ。あはは。楽になったよ。
あそこは地獄だったからね。

と、むしろ気持ちが晴れたみたいな口調で九は言った。

「だ、大丈夫なの?」

ここでも私は当たり障りの無い曖昧な台詞を言ってしまうのだった。

「うーん。正直分からない。昨日は疲れててすぐ寝ちゃったからこの情報も確かでは無いのだけれど―。あ、それでね、通帳を見つけてさ、お金はまだ沢山入っててねー!」

その情報が確かじゃないのだとしても、目にはお金しか写っていないんじゃないかという錯覚をしてしまうくらいにウキウキな目だった事は確かだった。

「だから、とりあえず生活はしていけそう。」

「そっか。それは良かった。」

目が元に戻ったのも良かったかな。
大変喜ばしいよ。

「ちなみに今日の放課後は空いてる?」

「うん。もう、仕事は終わったからね。」

「じゃあ、探すの手伝ってくれる?」

「ん?何を?」

「だから―家族を、だよ。」

うん。当たり前といえば当たり前だけれど。なんというかあれだけ地獄とか言っていたが、やはり家族は家族なのだろう。
そういう事なのだろうと思わされた。

「うーん。家の周りは居ないみたいだねー。」

「だね。」

「後行きそうなところとかある?」

「どうだろう。あんまり外に出る人じゃないしな。あ、けど、強いて言うなら。小学校とか?」

「小学校…?」

「えー、そんな事も分からないのかー今日の優理は察しが悪い。まあ。いつもの事か。私には小学生の妹がいて、親はそっちを可愛がる傾向にあった。」

少しだけ、寂しそうに見えた。
逆にそう見えないと異常みたいな気がして思い込んだだけかもしれないけれど。(ちなみに私は今の九の言葉で相変わらず傷ついているが、その描写はそろそろ割愛しても良さそうな気がしてきた。というか今日は随分と冷静に酷い事言ってくる。冗談とか、面白さとか全然無く。)

…正直可愛がっているという情報だけだと言葉足らずなのは否めないのだが、そこは察しの悪さをあえて発揮しないでいこうと思った。

「…そっか。じゃあ、行く?」

「うん、だね。」

そこまで真面目な話の流れだったのだが、学校に到着するまでの会話は結構なもの(私の精神状態も結構なもの…)であった。が、それも割愛でお願いしたいところだった。
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