君と巡る運命の中で生きていく。

2章 広がる世界

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「俺はその答えに驚いた。あの兄上がにこやかに笑いながら冷徹な判断をするあの兄が言ったんだ。『おまえと父上のためだ』と。」

ルシアス殿下は一人で戦っていた。実の母親のその隠れた悪からそれには向き合おうともしない陛下とまだなにも知らないことを許されたノーマンをずっと陰ながら守っていたのはルシアス殿下だった。
「そう思うと俺とナオトは似ているな。知らない間に実はたくさんの人間に守られていた。そうとは知らずに１人戦っていた気分になっていた俺は傍から見ればとても愚かだ。……周りはこんなにも自分のことを考えてくれていたのに。」
その日から疎遠だったルシアス殿下とはたびたび話をするようになったそうだ。一人だと思っていたあの頃とは少し違う頼もしい兄のおかげで少し心が軽くなった。
それからはルシアス殿下となにかと協力することが増えて、直属部隊の人も増え、そこにレインとのやりとりがあったりなどしてある程度はいい方に向かっていたんだそう。
でも今回のこれももしかすると裏で手を引いていたのはその王妃、ひいては神聖国かもしれない事実にノーマンはひどく恐れていた。
「……もしかしたらナオトがプレギエーラにいるほうが危険にさらされるのかもしれない。」
ノーマンがそう言ってナオトを抱きしめる。
少し震えるその腕をナオトはそっと撫でた。
「おれ、どこにも行きたくない。」
傲慢かもしれない。けれどそれがナオトの本心だった。
「……おれの安全のためだけにノーマンから離れるのは嫌だ。」
　その言葉にノーマンは何も言わず、ただナオトの頭をなでた。
「ノーマンがどんなに言ってもどこかに行ってやる気なんかないからね。」
　真剣にノーマンにそう言えばノーマンはナオトの額にキスを落とした。
「……あぁ。……そろそろ寝ようか。」
　ノーマンはそういってナオトに布団を掛け直す。
「おやすみ、ナオト。」
「……うん、おやすみ。」
　なにも言ってくれないノーマンにナオトもただそうやって当たり障りのない返事をすることしかできなかった。