君と巡る運命の中で生きていく。

clavis

文字の大きさ
上 下
38 / 50
2章 広がる世界

35

しおりを挟む
 
 その後2人あてがわれた船室へ帰ってベットにいつものように二人でもぐりこんだ。
「どこから話したもんかな……」
まるで、寝物語を話すようにノーマンはナオトの身体を引き寄せて苦笑してそういう。
「どこからでも。」
ノーマンは少し苦笑してポツポツと話し始めた。
「まず、俺の家族の話をしようと思う。……実は俺と兄上は異母兄弟で、俺の本当の母上は俺が6つのときに亡くなった。」
ノーマンのお母さんは身体が弱くてけどとても勝ち気な人だったらしいとノーマンは語った。実際のところノーマンもあんまりよくは覚えてないそうで、周りがそういっていたのを聞いたらしい。
別に貴族の家柄だとかではなくて本当に普通の平民でノーマンのお父さんは心底お母さんを愛していた。けど、なかなか身籠れなくてそのうちお母さんも体調を崩してしまって、世継ぎは必要だから仕方なく貴族でしかも神聖国アモールメンダスの皇女である今の王妃様が輿入れすることになった。
だからノーマンのお母さんは側室という形で王宮には残ったけど周りの目は厳しくて平民の出であるノーマンのお母さんはいない者扱いをされていたんだって。
やがて現王妃に子供ができて王宮が賑わって、その3年後にやっとノーマンのお母さんはノーマンを身篭った。プレギエーラ国の陛下もそれはすごく喜んだけど現王妃にも子供ができていてしかも男だったから王位争いになることは避けられないことだったという。
そしてノーマンが6つのときにそれは起こった。
第1王子派閥の貴族が第2王子のノーマンを消そうと暗殺を企てたそうだ。
ノーマンはあまりそのときのことは覚えてないといった。話を聞くにお母さんはノーマンをかばって亡くなったらしい。ノーマンはその時のショックが大きすぎてその6歳までの記憶がものすごく曖昧になってしまった。
「その後、わかってきたのは母上の暗殺を企てたのは現王妃らしいということだ。けれどそれは噂に過ぎず、第1王子派の貴族が結局首謀者として罰せられ処刑された。……最初は俺も単なる根もはもない噂だとそう思っていた。母上を亡くした俺を現王妃は心底心配してくれていたから……」
現王妃は神聖国の皇女なだけあって信仰あつい優しい人柄なんだそう。でもノーマンはある日妙な違和感をおぼえる。
それはちょうどノーマンが村に来たあとから1年後のことだった。
プレギエーラ最南端の村に魔物がでて甚大な被害を被ったことがあったらしい。その頃のノーマンの直属部隊はまだ人も少なく、村について討伐にあたりはしたがどう考えても人を助けられるような状況ではなく、むしろ自分たちの命を守るのが精一杯な状況だった。
その後ルシアスの部隊も到着して近くの領主の私兵も着いたが手配した城からの増援が来なかった。
その時城にいなかったノーマンはあとでまた噂として聞いたのはその増援を打ち切ったのは現王妃なのではという噂。そこで少しノーマンは不思議に思う。誰よりも人の為を思っている現王妃がどうして増援を打ち切る手配をしたのか、また黒い王妃をよく思わない噂だろうと。そのときはまだ不思議に思う程度で。
でもさらに王妃に疑いを持ってしまうことが起こる。また国内で魔物被害がでて、さらにそこには疫病が蔓延っているという報せが城に入ってきた。
すぐに出ようとしたノーマンを王妃が止めた。
「私が手配した部隊に行かせます。あなたは前線にでてはなりません。」
王妃の命令ならノーマンは従うしかなかった。
けれどのちに上がってきた報告は村の壊滅と部隊の全滅の報せだった。
そこでもまた王妃の黒い噂をノーマンは聞く。
部隊は捨て駒の部隊でそもそもその部隊も村を壊滅させることが目的だったと。そしてそれを命令したのは現王妃なのだと。
「その頃からだったと思う。父上が体調不良を理由に国政に参加することがなくなった。実質その時の国政はほとんど王妃が行っていたと言っても過言じゃない。」
そして、決定的なものをノーマンは聞いてしまう。
「王妃の部屋へと足を運んでいるときだった。ちょうど空き部屋になっていた城の部屋から話し声が聞こえたんだ。男の声と聞き間違うこともない王妃の声だった。『あの村を切り捨てて正解だったでしょう?』と。……近くにいた男は笑っていた。『ちょうどよく面倒くさい反乱分子も処理できて一石二鳥だったな。』王妃の兄、ガルシア・ニューストンの声だった。」
ノーマンはすぐにその場を離れて確かめることにした。壊滅した村のこと、部隊のこと、生き残りがいると聞いたらまず行って話を聞いた。できるだけ王妃にはバレないように。あやしまれないように。
「わかったのは、俺が聞いた話が本当だということの裏付けだった。」 
村は魔物にも襲われたがその大多数は人間同士が殺し合っていたこと。遺体は魔物にやられたにしては妙に綺麗な切り傷の遺体があったこと。
なによりその部隊の生き残りがいたこと。
「その部隊は俺の実の母上を唯一慕ってくれていた騎士たちの集まりだった。母上亡き後も俺をなんとか守ろうとこの国を良くしようとしてくれていた部隊だった。」
でもその部隊のリーダー格である人物が投獄されてしまい、その騎士たちは村の壊滅に尽力するしかなかった。結局その騎士たちは村の疫病と魔物に襲われ、ノーマンが話を聞けたその一人も数日のうちに苦しんで息絶えた。
その騎士たちが助けようとしたそのリーダー格の人物は投獄なんかされておらず、捕まったその日に処刑されていた。それをすべて命じたのがあの王妃だということもそのときのノーマンは信じ難かった。
「あんなに優しい人がそんなことをするはずがないと。そう思いたくて、でも上がってくる証拠の数々は王妃の噂を裏付けるものでしかなくて……俺は兄上に直談判することにした。兄上が王妃派だろうとなかろうと……そこで殺されるようなことになろうとも俺には確かめる意外なかった。結局俺にはそのときなにも信じられなかったから……」
ノーマンの顔がくしゃりと歪む。
「俺の幸運は兄上が王妃派ではなかったことだ。その話をしたとき、兄上に叱り飛ばされた。『ろくに私のことを調べもせず激情のみでこの話を私にふるとは、おまえがそこまで馬鹿だとは思わなかった』と。あのにこやかな笑顔でな。」
ノーマンは苦笑してそのときを思い出したのかちょっとため息をついた。
「結局のところ兄上もわかっていた。わかっていて王妃の好きにさせていたんだ。そのときの俺は兄上を怒鳴りつけた。なぜだ!となぜわかっていながら止めなかったのか。」
ルシアス殿下はかなり前から王妃がおかしいことには気づいていた。プレギエーラ国の国庫が一部不正に神聖国にながれていたり、おかしな点は上げればキリがなかった。それほどの証拠を掴んでおきながらなぜルシアス殿下は何もしなかったのか。
そのときに見たルシアス殿下の哀愁に似たひどく寂しそうな苦しそうな笑顔をノーマンは忘れられないと言った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮
ファンタジー
 子爵家の長男であるレアンデル=アリウスは、剣は得意だが魔法が大の苦手。  生まれ持った火の紋章の加護により得意になるはずの火魔法も上手く使えない。  そのせいで通っている学園でも同級生にバカにされる日々を送っていた。  そんなある日、レアンデルは森の中で龍と出会う。  その龍はあらゆる知識を修め、龍の世界でも教鞭を執るほどの教え好き。  レアンデルの秘められた力に気付いた龍は自らの知識や経験を叩きこむ。  レアンデルの成長と出会いの物語。  紋章とは。龍とは。そして秘められた力とは――

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

転生当て馬召喚士が攻め度MAXの白銀騎士に抗えません

雪平@冷淡騎士2nd連載中
BL
不幸体質大学生の青年が転生したのは魔術師ファンタジーBLゲームの世界だった。 当て馬として生まれたからには攻略キャラの恋の後押しをする事にした。 しかし、この世界…何処か可笑しい。 受け主人公が攻めに、攻め攻略キャラが受けになっていた世界だった。 童顔だった主人公は立派な攻めに育っていた。 受け達に愛されている主人公は何故か当て馬に執着している。 傍観者で良かったのに、攻めポジも危ぶまれていく。 究極の鉄壁一途な白銀騎士×転生当て馬召喚士 ゲームを忠実にするためには、絶対に受けとしてときめいてはいけない。 「君といられるなら、俺は邪魔する奴を排除する」 「俺はただの当て馬でいい!」 ※脇CP、リバキャラはいません、メインCPのみです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

今度は殺されるわけにいきません

ナナメ
BL
国唯一にして最強の精霊師として皇太子の“婚約者”となったアレキサンドリート。幼い頃から想いを寄せていたテオドールに形だけでも添い遂げられると喜んでいたのも束の間、侯爵令嬢であるユヴェーレンに皇太子妃の座を奪われてしまう。それでも皇太子の側にいられるならと“側妃”としてユヴェーレンの仕事を肩代わりする日々。 過去「お前しかいらない」と情熱的に言った唇で口汚く罵られようと、尊厳を踏みにじられようと、ただ幼い頃見たテオドールの優しい笑顔を支えに耐えてきた。 しかしテオドールが皇帝になり前皇帝の死に乱れていた国が治まるや否や、やってもいない罪を告発され、周りの人々や家族にすら無罪を信じてもらえず傷付き無念なまま処刑されてしまう。 だが次目覚めるとそこは実家の自室でーー? 全てを捨て別人としてやり直す彼の元にやってきた未来を語るおかしな令嬢は言った。 「“世界の強制力”は必ず貴方を表舞台に引きずり出すわ」 世界の強制力とは一体何なのか。 ■■■ 女性キャラとの恋愛はありませんがメイン級に出張ります。 ムーンライトノベルズさんで同時進行中です。 表紙はAI作成です。

追放聖女の華麗なる転身(ショートから移動しました)

エウラ
BL
生まれ落ちてすぐに孤児院に捨てられたときには前世の記憶があったサエ。3歳で聖女だと分かり貴族に引き取られ、ここが生前の姉が遊んでいたとある乙女ゲームの異世界だと気付いた転生ヒロイン(♂)。そう、本来は女の子が主人公なのに何故か男の自分だったことに困惑しながら女として育てられ、第二王子の婚約者になっていた。しかし養父母がクズで実子の妹を王子妃にするべく冤罪でサエを国外追放。 しかしサエはラッキーとばかりに男に戻って隣国へ。そのあとを追う護衛騎士だったアルフォンスに捕まってあれよあれよといううちに…。 追放から始まる自由な暮らしを手に入れられるのか? 執着つよつよ元護衛騎士と押しに弱く流されやすい口の悪い元聖女(♂)の物語。 周りが勝手にざまぁしたり自滅したりするかも? *こちらはショート専用の枠から短編枠に移動しました。長くなったので。向こうの削除はしませんが、プロローグ以降の最初の方は向こうの投稿分をまるっと載せる予定なのでそちらと重複します。ご注意下さい。R18には*印付けますが忘れたらすみません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...