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2章 広がる世界
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しおりを挟むその後、飛行艇の高度も落ち着きゆっくりと航行をはじめてしばらくして少しあたりが騒がしくなった。ノーマンはあてがわれた船室からでて外を確認する。
「うぎゃあああああああああ!!!!」
なんとも言えない叫びをあげているのはナオトの乗るアヴィオンに出来心で乗せてくれと言ったアリオンだった。
2人の乗るアヴィオンが船の行く先できれいに一回転していく。そのたびにアリオンの悲鳴が遠くで聞こえた。
「なにをやってるんだ、あいつは……」
ノーマンもその騒ぎに気づいてやってくる。
周りではそんなアリオンに兵員がヤジを飛ばしたりナオトのアヴィオンに歓声をあげたりとかなり賑やかだ。
「一応遠征なんですけどね。……盛り上がってますねー」
そんなノーマンをみつけてフェルマンがやってくる。
「なんでこんなことになってるんだ?」
すると近くにいたクハナが応えた。
「船員の方が、ナオトにちょっと偵察してきてほしいと言われたみたいで、それに便乗させてくれってアリオンが言い出したらこうなりました。」
「あいつが絡むとこうなんで緊張感がなくなるんだ……」
ノーマンはそれを聞いて額をおさえてため息をついた。
「まぁまぁ、殿下。ナオトくんも楽しそうですし。」
フェルマンがそう言って見る先にはアリオンの悲鳴にまじってナオトの笑い声も聞こえる。
「……まぁ、いいか。」
「殿下、ナオトに関することはなんかすっごい緩くなりますね。」
それを聞いていたクハナがぼそりという。
「それが?」
ノーマンはにこりと笑いながらクハナを見るとクハナはびしっと敬礼して「なんでもありませんっ!」
と言って騒ぎに混じっていった。
すると偵察を終えて帰ってきた二人がほぼスピードを緩めることなく船に突っ込んでくる。
アリオンもどうやらそれに気づいたみたいでだんだん悲鳴が近づき、船上では騒いでいた全員も青い顔をしはじめる。
ノーマンとしてはナオトの飛行の腕を知ってるのでそれを見たところでなんとも思わないが。
そのままナオトはアヴィオンのスピードを緩めることなく突っ込んできてぶつかる手前でアヴィオンを消して飛び降りた。アリオンにとっては突然のフリーフォールである。
ナオトはアリオンの両脇を抱えてノーマンの少し前にアリオンを落として、自分はふわりとノーマンの腕に飛び込んだ。
ノーマンも難なくナオトを受け止める。
「楽しかったか?」
「うん!」
ノーマンがそう聞くと満面の笑みでナオトがうなずいた。
和やかな2人の手前では絶叫していたために着地できなかったアリオンが顔面から倒れ込んでいた。
「大丈夫かー?アリオン。」
クハナが近くによってきてしゃがむとアリオンをつついた。
「調子にのってスリル満点で頼むとか要望するからだ。」
さらにクハナの後ろではアリオンのその体たらくにため息をつきながらナイルが呆れていた。
「これで懲りましたか?アリオン。」
その様子を見守っていたフェルマンが呆れつつもアリオンに水を差し出す。
「……はい、空の上……なめちゃいかん……」
アリオンはやっと起き上がるとフェルマンから受け取った水を飲み干してそういった。
「身を持って体感するっていう君の意気込みはかいますけどね。」
フェルマンはにこやかに笑って立ち上がると手を叩いて注目を集めた。
「はいはい!遊びはここまでですよ!!とりあえず夕食の準備に全員かかりなさい。船員の方の指示にしたがって困らせることのないように!!」
フェルマンがそういうと全員が返事をしてワラワラと船上から散り始めた。
「これじゃあ、遠足だな。」
ノーマンは呆れながらそういうとかわいた笑いを浮かべた。
飛行艇はもう随分と高いところを飛んでおり、青と白のコントラストが美しい景色を飛んでいた。
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