君と巡る運命の中で生きていく。

clavis

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2章 広がる世界

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 ノーマンを見送ってすぐにナオトもフェルマンについて部屋をでて長い廊下を歩く。
長い廊下をシックな紺色の絨毯がずっと続いていて、やがて廊下も終わりエントランスにつながる大きな階段にさしかかった。
「大きいし広いね。この建物。」
「あぁ、ナオトくんは見るのは初めてですよね。じゃあ軽く案内もしましょう。」
フェルマンはそう言ってエントランスホールの階段を降りると階下の廊下へと歩き出した。
「まぁ、と言っても他はこの宮殿で働く者や客間ばかりなんですがね。」
そんな話をしていると窓の外に中庭が広がる。
「お庭?」
「ええ、なにか気になるものでもありましたか?」
「綺麗だなぁって。うちの村じゃお庭ってこんな感じじゃないし。もっと狭いし、そもそもお庭がある家がそんなになかったけど。」
ナオトは緑の多いその庭を楽しそうに見ながらそう言う。
「そうでしたか。殿下もそうですがこの宮殿で働く者含めて皆あまり庭には出ないですからよかったらナオトくんが使ってあげてください。」
「えー!そうなんだ、もったいない。……でもおれなんかが庭で遊んでもいいの?」
フェルマンは肩口で振り返り歩きながら微笑む。
「もちろん、ただここにも一応庭師はいますから。後で少し話を通しておきますね。」
「フェルマンさん、ありがとう。」
ナオトが笑ってそういうとフェルマンもまた微笑んだ。
しばらくそうして宮殿の中を歩いていく。
とても大きくて高い天井には豪華なシャンデリアがあるダンスホールや招待客を接待するための大広間。
ほかにもビリヤードやその他ボードゲームなどが楽しめるゲームルーム。
軽食も出してくれるちょっとしたバーなども併設されていた。
そしてナオトを1番ひきつけたのは大衆浴所だった。
「すごーーーい!ひろい!!!」
今はまだ準備中で人もいないので少し中を見せてもらえば大きな湯船を中心にまわりにたくさんの湯船が並べられていた。
「すごい……」
「ナオトくんの反応は新鮮でいいですね。」
後ろで見守るフェルマンがにこにこしながらそのはしゃぐ様子をみていた。
「おれも使っていいの?」
ナオトの期待に満ちた瞳でそう聞かれフェルマンは微笑んだままつげる。
「そうですね、ここはたくさんの人が利用しますからもし使いたければまず殿下に許可をとりましょう。それにナオトくんはここまで来なくても殿下の部屋に備え付きのがありますからそちらを使用するほうがいいかもしれませんね。」
「うん、わかった。あとでノーマンに聞いて見るね。」
ナオトのその素直な返事にフェルマンはホッと胸を撫で下ろした。素直ないい子で本当によかった。……あとは任せました。殿下。
フェルマンは胸の内でそんなふうに思いながら次へと案内した。
今度は大きな食堂にやってきた。人の多さにナオトは隣でポカンと口をあけて呆気にとられている。
「今はお昼どきですから人が多いですね。ナオトくんお腹は減りましたか?」
「ううん、遅めの朝食だったからまだそんなに。」
「ではもう少ししてからまた来ましょうか。」
フェルマンがそういって食堂から離れようとしたとき、ちょうど何人かが食堂へと入ってこようとしていたところだった。
「あっれ?副長!こんなところにいたんすか?」
そう言って来たのは燃えるような真っ赤な髪に赤い瞳のフェルマンより背の高い男の人。
「副長ズルいですよ、鍛錬の途中で丸投げしていなくなるなんて!」
ブツくさと文句をたれて歩いてきたのはその隣をあるく黒髪に碧の目のたぶんノーマンと同じくらいの歳の男の人。
さらにその少し後ろにくすんだうす蒼い髪にトパーズ色の目の男の人となぜかこちらを睨んできたたぶんこの中では1番ナオトに歳の近いブラウンの髪を短く刈り上げたまだ幼さを残す青年がぞろぞろとやってきた。
「……うるさいのが来ましたね。」
フェルマンはあからさまにジト目で彼らを見やるとすぐに微笑んで彼らを無視してナオトに言う。
「ナオトくん、彼らはうちの隊員です。少々荒くれもいますが気のいいやつらなんで適当にあしらってくださいね。」
「え?え?……うん?」
ナオトはそう言われ首をかしげながらもうなずいた。
「ん?副長もしかしてその子……」
赤髪の人がそう聞くとフェルマンがいう。
「ええそうですよ。龍族のナオトくんです。今朝やっと部屋から出られるようになりましからこうして散歩がてら案内してるんです。」
「よ……よろしくお願いします。ナオトです。」
ナオトは少しドギマギしながらもぺこりと頭をさげた。
「おう!よろしくな!俺はアリオン・ジュナイパー。アリオンって呼んでくれな。それにしても元気になってよかったなぁ。」
うりうりとアリオンはナオトの頭をなでる。
「おい!アリオン、そんな乱暴にするな。病み上がりなんだから。」
そう言ってべしっとアリオンの手をはたき落としたのは先程の黒髪碧目の人。
「大丈夫か?こいついちいち力強いから、嫌なことははっきり嫌っていうんだぞ?」
「は……はい。」
ナオトはさらにドギマギしながらそう返事をするとその人は笑っていう。
「俺はクハナ・ノール。よろしくな。」
そう名乗って手を差し出されたのでナオトもその手を握り変えす。
「よろしくお願いします。」
それにナオトも笑ってこたえた。
「おい!ナイル!次お前!」
そう言って背中を叩かれて促されたのは少し後ろにいたトパーズ色の目の人。
その人はこめかみを抑えながらアリオンをものすごい剣幕でにらんだ。
「この状態なのは誰のせいだと思ってんだ?あぁ?」
地獄の底から響いてきそうな低い声だ。
それにびっくりしてナオトは少しフェルマンの背に隠れた。
「ちょっと、ナイル。ナオトくん怯えさせてどうするんです。」
フェルマンがため息まじりにそういうとナイルと呼ばれたその人はしまった!というようななんともわかりやすい表情でナオトをみた。
「悪い……おまえに怒ってるわけじゃないからな。すまない。」
さっきまでの剣幕はどこへやら、ナイルはわかりやすくシュンとしてそういった。
「俺はナイル・ラヤナ。よろしくな。」
鋭い目つきにさっきのような態度のせいで誤解されやすいようでナイルは自分の中の精一杯で微笑むとそういった。
「よろしく、お願いします。」
ナオトはまだちょっとビビりながらもそうつげた。
「あとはおまえだぞー、リュシュ。」
アリオンが後ろで不機嫌顔で立ち尽くすブラウンの髪の青年に言った。
「……リュシュ・マヤラカンです。」
リュシュは言葉少なにそう言うとさっさっと食堂に入ってしまった。
「なんだ?あいつ。感じ悪いな。」
クハナはその様子に少し気に入らなさそうにそういう。
「なんだぁ?あいつ。機嫌悪いのか?」
アリオンも不思議そうに先に入っていった、リュシュを眺めながらいった。
「どうしたんですかね、なんかありましたか?」 フェルマンも不思議そうに様子を伺う。
「おれ、なんかしたのかな……」
ナオトは大人数と触れ合うことがそもそも慣れなくてドギマギしていたのにさきほどのあれでさらに不安になってしまっていた。
「まぁ、大丈夫。気にしないでいいですよ。」
フェルマンはぽんぽんとナオトの肩を優しく叩いてそういった。
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