1 / 35
プロローグ
1)
しおりを挟む
「何であなたなのよ……」
目の前のソファに座る男を睨み付けて美園は低く吐き捨てた。
その唸るような呟きは、男には聞き取れなかったらしく、「美園さん?」と俯いていた顔を上げた。
二人の視線が絡んで、沈黙が落ちる。
美園は男の呼びかけに応えることなく、目の前の優し気な顔を無言で睨みつけた。
三八歳にしては童顔な男の顔には、困惑が浮かんでいた。つるっとしたゆでたまごみたいな綺麗な顔の輪郭に、丸っとした垂れ気味の瞳。なのに唇は薄く、公家顔とでもいえばいいのか、品があって、優しい顔立ちをした男は、心底困ったように美園を見つめてくる。
眉尻の下がった少し情けないその顔に、美園の怒りが余計に煽られた。
――なぜよりによってこの男が選ばれた? 何でこの異常な取引にこの男は頷いた?
美園の腹の奥で溶岩みたいな怒りがふつふつと湧き上ってくる。
――なぜ? どうして?
疑問ばかりが渦を巻くが、問うたところで意味はないのはわかっている。
だが、こんな異常な取引に、この男が頷いたことが信じられなかった。
――子どもに想われても迷惑だったんじゃないの? 兄さんの妹じゃなければ相手をするのも嫌なほど、鬱陶しかったんじゃないの?
過去に彼に言われた言葉を思い出せば、今の状況が本当に信じられない。
父が餌にした地位がそれほど魅力的だったのか。
――まあ、そうよね。兄さんが死んだ今、私を孕ませれば四宮グループの後継者の地位が転がり込んでくるんだもんね。
美園の実家は四宮グループという複合企業体だ。曽祖父の代に起こした紡績会社をもとに、戦後の動乱すらも利用してのし上がって来た家だった。
今では戦略的事業投資によって、様々な分野の企業を傘下に置き、幾度の不況の波もものともせずに業績を伸ばしている。
その総帥の地位をちらつかされれば、誰だって頷いてしまうだろう。
わかっていても、目の前の男が理解できなかった。
美園に跡取りを産ませるためだけに、精子提供者としてこの場所にこの男がいる意味が!
だが、父親に逆らえないのは美園も一緒だ。目の前の男だけを責められない。
それでもどうしようもない腹立ちが美園を襲う。俗物になり下がった初恋の男の姿に、苛立ちが増す。
――せめてこの男でなければ!
そう思うが、父親が選んだのは、よりにもよって目の前の男だったーーかつて美園の初恋を手ひどい言葉で拒んだ男。
しかも入籍も既に済んでいるとか、一体何の冗談だと思うが、これはまぎれもない現実だった。
その綺麗な顔から視線を外して、一つ息を吐く。
――上等じゃない。そっちがその気なら、こちらにも考えがある。
父と目の前の男に対する報復を決意して、美園は無言でソファから立ち上がった。
「美園さん?」
名前を呼ばれることすらも腹立たしくて、美園は顔を顰めた。男の目の前に立ち、ネクタイに手を伸ばす。綺麗に整えられたノット部分に無造作に指をかけた。
首が絞まったのか、男が顔を歪めたが、美園は構うことなくネクタイを解いた。
「何を?」
「黙って!」
男の問いを一言で切り捨てて、美園は男の目にネクタイを押しあてた。
「これはあなたに上げる唯一の優しさよ? 感謝して」
高飛車に告げて、ネクタイで男の目を覆って、後頭部で縛り付ける。
「私の姿が見えなきゃ、好きな女のことでも考えてられるでしょ?」
鼻で笑って、美園は甘やかな声で男に囁き落とす。
「どうせやることやらないと離婚も出来ない。だったら、嫌なことはさっさと済ませましょう?」
「美園さん。私は……!」
それまで大人しかった男が、反論と同時に立ち上がろうとした。美園は乱暴に男の肩を上から押してソファに押し付ける。片膝を上げて、男の股間に膝を押し付けた。
「動かないで。大人しくしてないと、潰すわよ? お父さんの命令を遂行できなきゃ、あなたも困るでしょ?」
膝に力を入れて、上から男の股間をぐりぐりと圧迫する。
「……っ!」
美園の容赦ない行動に男が痛みに息を呑む。
「あなたは大人しくしてればいいのよ」
美園は男のベルトに手をかけて、引き抜いた。
「手を出して」
「美園さん何を?」
「いいから手を出して!」
美園の剣幕に負けたように男は、大人しく両手を差し出してきた。美園は男のベルトを今度は差し出された手首に巻きつけて、両手を一つにくくってしまう。ベルトを何重に巻きつけて、簡単には解けないようにする。
「美園さん?!」
戸惑う男を見下ろして、美園は哀しく笑う。男の視界を塞いでいてよかったと思う。
今、自分がどんな顔をしているかはわからないが、きっと世にも情けない顔を晒してることだろう。
「あなたが私に触ることは許さない。ただの精子提供者は大人しく転がってなさいよ」
表情とは裏腹な気の強さを前面に押し出した発言で、美園は男の股間から膝を外した。そうして、ソファからも降りる。
男の前に膝まづき、足を大きく開かせ、その間に体を入れる。ズボンのファスナーを下して前立てをくつろげた。下着からまだ柔らかい陰茎を掴み出す。
優し気な風貌には似合わない立派なものが出てきて、美園は一瞬怯みそうになる。
「私に勝手に触ったら噛み切ってやる」
強気な発言で自分の怯えを振り払って、美園は手で支えた陰茎の先端部分を口に含んだ。
喉を鳴らしてしゃぶりつけば、くっと頭上で息を呑む音がした。口の中で、男のものが硬く大きくなる。男が感じていることに後押しされて、美園は男の陰茎に舌を纏いつかせた。
裏筋を舌全体でゆっくりとなぞって、顔を傾けて亀頭のくびれにぐるりと舌を巻きつける。
「……うっ」
小さく喘ぐ男の声に、口に男のものを咥えたまま美園は、視線を上に上げる。
ネクタイで目隠しされた男の頬は、興奮に赤く染まっていた。
自分が仕掛けたことではあるが、目隠しをされ両手を拘束された男が、美園の手によって快楽を与えられる姿に、美園は倒錯的な興奮を覚えた。
普段は温和で紳士的な男の乱れる姿は、壮絶な色気があった。
その色気に当てられたのか、美園の胎の奥がどろりと蕩けた。男のものを口で愛撫しているだけなのに、自分の秘所から蜜が溢れてくるのを感じた。
美園は片手と唇で男の陰茎への愛撫を続けながら、自分のスカートの中に手を入れる。下着の中に指を入れれば、その場所は熱く濡れていた。
叢をかき分け、一番気持ちいい場所に指を這わせた。
「んん……ぅ」
既に膨らんで大きなっていた花芽に触れた途端、背筋を快感が滑り落ちていった。
快楽に体が大きく震えて、全身に力が入った。唇をついた喘ぎが、意図せず口の中のものを締め付ける。口の中で男のものがさらに大きくなった。
美園は熱心に唇での愛撫を続けながら、同時に男を受け入れるために、自分の秘所を解し始める。
人差し指を差し入れたその場所は、熱く泥濘み戦慄いた。水音を立てる秘所をゆっくりとかき回し、指を深く沈めて、出し入れさせる。
指の動きは徐々に速くなり、そして深くなっていく。指の数を増やしたが、蜜襞はもっと太くて硬いものが欲しいと、収縮する。
「み……美園……さん」
自分の快楽を追うことに夢中になっていて、男への愛撫がおざなりになっていた。
中途半端に煽られた快楽に、男が苦し気な声を上げて、美園の名を呼んでいる。
それを熱に潤んだ瞳で見上げて、美園は自分の秘所から指を引き抜いた。もっと食むものが欲しいのだと、胎の奥が疼いた。
口の中から男のものを解放すれば、飲み込み切れなかった唾液が、唇の端から流れて落ちた。
それを手の甲でぐいっと拭うと、美園は立ち上がる。秘所から溢れた蜜が、美園の太ももに垂れ流れた。
「美園さん?」
美園は男の呼び声に答えることなく、濡れた下着を脱ぐ。無言のまま男の膝の上にまたがり膝立ちになる。タイトスカートのせいで、思うように足が開けない。スカートが破れないようにたくし上げる。ガーターベルトに彩られた白い太ももがあらわになった。
「美園さん」
「そんなに何度も呼ばなくても聞こえてるわよ」
ようやく答えた美園に、男がホッとしたのがわかる。
「せめて手だけでも、解放してもらえませんか?」
胸の前にベルトで拘束された手を、男が掲げて見せる。
「絶対にいや」
男の懇願を一言で切り捨てる。男の陰茎に手を添えて位置を固定すると、美園はゆっくりと腰を下ろす。
「んぅ……う」
自重で体を押し開かれる感覚に、背筋がのけぞった。待ち望んでいたものに、秘所が歓喜に蠢いて、男のものをしゃぶるような動きを見せた。それだけでひどく感じた。
「あ――、あん! ……ぅつ!」
快楽に膝から力が抜けて座り込んでしまう。自重で一気に奥深くまで、男のものを飲み込んだ。
がくりと首が折れて、無意識に腰が快楽に揺らめく。不安定に揺れる態勢が怖くて、縋りたくもないのに、目の前の男の首に腕を回してしがみ付いてしまう。
服越しであっても、快楽に男の肌の熱が上がっているのがわかる。
荒れる息を整えようと、肩で息をする。抱き着いていると胸の辺りにあたる男の拘束した腕が、邪魔に感じた。
「手……」
「え?」
「手を上げて」
男は息を荒げながら、美園の命令に大人しく従った。
「もっと」
美園の顔の前まで上げられた手をさらに上に上げさせて、美園はその腕の輪の中に頭を入れる。
邪魔なものがなくなって、抱き着きやすくなった。
男の首に腕を回して、動きやすいように態勢を安定させる。その時、首にかけられた男の手に力が入り、体が引き寄せられた。二人の密着度が増す。
見えない目で何かを探すように動いた男の鼻先が、美園の首筋に埋められ、男の柔らかな髪が美園の肌を擽った。
「……やっとあなたを取り戻せた……」
小さな呟きが美園の肌に埋められる。
「何?」
くぐもった小さな声は、美園には聞き取れなかった。
「何でもありません」
「あ、いやぁ!」
美園の問いには答えをくれず、男が不意に腰を突き上げてきた。それまで大人しく、美園にされるがままになっていた男の不意の反撃に、美園は甘い悲鳴を上げる。
「ちょっと……! だめ……止まって……!」
「聞けませんよ。ここまで来て、この状態は生殺しだ」
耳朶を柔らかく食まれて、落とされた囁きに、美園はぶるりと震えた。
下からの突き上げが激しくなり、それに合わせて美園の腰も淫らに揺れた。
最初は噛み合わなかった二人の動きも、徐々に同じリズムを刻み始める。
「あ……っ……いぃ……!」
一度、噛み合ってしまえば、あとは上り詰めるだけだった。二人、息を荒げながら、快楽を追う獣になる。
「はっ……あ、くそ……出……る!」
普段は穏やかな男の乱暴な口調に、美園の中の快楽が弾けた。
胎の奥がうねって、中の男を締め付ける。精を搾り取ろうとする動きに、男も堪えきれずに精を吐きだした。
体の中を濡らされる感覚は初めてで、体が震えて仕方なかった。美園はその体を押し付けるように男に抱き着いて、未知の感覚を味わう。
瞼を強く閉じて、男の肩に額を押し付ける。
――これは私の復讐だ。
どんなに抱き合って、肌を重ねたところで、美園は妊娠が難しい体だ。
男子の後継者が欲しくて美園の意思を無視した父も、四宮グループ総帥の地位に目が眩んで、美園との結婚を引き受けた男も、望むものは手に入れられない。
――ざまあみろ。
目の前のソファに座る男を睨み付けて美園は低く吐き捨てた。
その唸るような呟きは、男には聞き取れなかったらしく、「美園さん?」と俯いていた顔を上げた。
二人の視線が絡んで、沈黙が落ちる。
美園は男の呼びかけに応えることなく、目の前の優し気な顔を無言で睨みつけた。
三八歳にしては童顔な男の顔には、困惑が浮かんでいた。つるっとしたゆでたまごみたいな綺麗な顔の輪郭に、丸っとした垂れ気味の瞳。なのに唇は薄く、公家顔とでもいえばいいのか、品があって、優しい顔立ちをした男は、心底困ったように美園を見つめてくる。
眉尻の下がった少し情けないその顔に、美園の怒りが余計に煽られた。
――なぜよりによってこの男が選ばれた? 何でこの異常な取引にこの男は頷いた?
美園の腹の奥で溶岩みたいな怒りがふつふつと湧き上ってくる。
――なぜ? どうして?
疑問ばかりが渦を巻くが、問うたところで意味はないのはわかっている。
だが、こんな異常な取引に、この男が頷いたことが信じられなかった。
――子どもに想われても迷惑だったんじゃないの? 兄さんの妹じゃなければ相手をするのも嫌なほど、鬱陶しかったんじゃないの?
過去に彼に言われた言葉を思い出せば、今の状況が本当に信じられない。
父が餌にした地位がそれほど魅力的だったのか。
――まあ、そうよね。兄さんが死んだ今、私を孕ませれば四宮グループの後継者の地位が転がり込んでくるんだもんね。
美園の実家は四宮グループという複合企業体だ。曽祖父の代に起こした紡績会社をもとに、戦後の動乱すらも利用してのし上がって来た家だった。
今では戦略的事業投資によって、様々な分野の企業を傘下に置き、幾度の不況の波もものともせずに業績を伸ばしている。
その総帥の地位をちらつかされれば、誰だって頷いてしまうだろう。
わかっていても、目の前の男が理解できなかった。
美園に跡取りを産ませるためだけに、精子提供者としてこの場所にこの男がいる意味が!
だが、父親に逆らえないのは美園も一緒だ。目の前の男だけを責められない。
それでもどうしようもない腹立ちが美園を襲う。俗物になり下がった初恋の男の姿に、苛立ちが増す。
――せめてこの男でなければ!
そう思うが、父親が選んだのは、よりにもよって目の前の男だったーーかつて美園の初恋を手ひどい言葉で拒んだ男。
しかも入籍も既に済んでいるとか、一体何の冗談だと思うが、これはまぎれもない現実だった。
その綺麗な顔から視線を外して、一つ息を吐く。
――上等じゃない。そっちがその気なら、こちらにも考えがある。
父と目の前の男に対する報復を決意して、美園は無言でソファから立ち上がった。
「美園さん?」
名前を呼ばれることすらも腹立たしくて、美園は顔を顰めた。男の目の前に立ち、ネクタイに手を伸ばす。綺麗に整えられたノット部分に無造作に指をかけた。
首が絞まったのか、男が顔を歪めたが、美園は構うことなくネクタイを解いた。
「何を?」
「黙って!」
男の問いを一言で切り捨てて、美園は男の目にネクタイを押しあてた。
「これはあなたに上げる唯一の優しさよ? 感謝して」
高飛車に告げて、ネクタイで男の目を覆って、後頭部で縛り付ける。
「私の姿が見えなきゃ、好きな女のことでも考えてられるでしょ?」
鼻で笑って、美園は甘やかな声で男に囁き落とす。
「どうせやることやらないと離婚も出来ない。だったら、嫌なことはさっさと済ませましょう?」
「美園さん。私は……!」
それまで大人しかった男が、反論と同時に立ち上がろうとした。美園は乱暴に男の肩を上から押してソファに押し付ける。片膝を上げて、男の股間に膝を押し付けた。
「動かないで。大人しくしてないと、潰すわよ? お父さんの命令を遂行できなきゃ、あなたも困るでしょ?」
膝に力を入れて、上から男の股間をぐりぐりと圧迫する。
「……っ!」
美園の容赦ない行動に男が痛みに息を呑む。
「あなたは大人しくしてればいいのよ」
美園は男のベルトに手をかけて、引き抜いた。
「手を出して」
「美園さん何を?」
「いいから手を出して!」
美園の剣幕に負けたように男は、大人しく両手を差し出してきた。美園は男のベルトを今度は差し出された手首に巻きつけて、両手を一つにくくってしまう。ベルトを何重に巻きつけて、簡単には解けないようにする。
「美園さん?!」
戸惑う男を見下ろして、美園は哀しく笑う。男の視界を塞いでいてよかったと思う。
今、自分がどんな顔をしているかはわからないが、きっと世にも情けない顔を晒してることだろう。
「あなたが私に触ることは許さない。ただの精子提供者は大人しく転がってなさいよ」
表情とは裏腹な気の強さを前面に押し出した発言で、美園は男の股間から膝を外した。そうして、ソファからも降りる。
男の前に膝まづき、足を大きく開かせ、その間に体を入れる。ズボンのファスナーを下して前立てをくつろげた。下着からまだ柔らかい陰茎を掴み出す。
優し気な風貌には似合わない立派なものが出てきて、美園は一瞬怯みそうになる。
「私に勝手に触ったら噛み切ってやる」
強気な発言で自分の怯えを振り払って、美園は手で支えた陰茎の先端部分を口に含んだ。
喉を鳴らしてしゃぶりつけば、くっと頭上で息を呑む音がした。口の中で、男のものが硬く大きくなる。男が感じていることに後押しされて、美園は男の陰茎に舌を纏いつかせた。
裏筋を舌全体でゆっくりとなぞって、顔を傾けて亀頭のくびれにぐるりと舌を巻きつける。
「……うっ」
小さく喘ぐ男の声に、口に男のものを咥えたまま美園は、視線を上に上げる。
ネクタイで目隠しされた男の頬は、興奮に赤く染まっていた。
自分が仕掛けたことではあるが、目隠しをされ両手を拘束された男が、美園の手によって快楽を与えられる姿に、美園は倒錯的な興奮を覚えた。
普段は温和で紳士的な男の乱れる姿は、壮絶な色気があった。
その色気に当てられたのか、美園の胎の奥がどろりと蕩けた。男のものを口で愛撫しているだけなのに、自分の秘所から蜜が溢れてくるのを感じた。
美園は片手と唇で男の陰茎への愛撫を続けながら、自分のスカートの中に手を入れる。下着の中に指を入れれば、その場所は熱く濡れていた。
叢をかき分け、一番気持ちいい場所に指を這わせた。
「んん……ぅ」
既に膨らんで大きなっていた花芽に触れた途端、背筋を快感が滑り落ちていった。
快楽に体が大きく震えて、全身に力が入った。唇をついた喘ぎが、意図せず口の中のものを締め付ける。口の中で男のものがさらに大きくなった。
美園は熱心に唇での愛撫を続けながら、同時に男を受け入れるために、自分の秘所を解し始める。
人差し指を差し入れたその場所は、熱く泥濘み戦慄いた。水音を立てる秘所をゆっくりとかき回し、指を深く沈めて、出し入れさせる。
指の動きは徐々に速くなり、そして深くなっていく。指の数を増やしたが、蜜襞はもっと太くて硬いものが欲しいと、収縮する。
「み……美園……さん」
自分の快楽を追うことに夢中になっていて、男への愛撫がおざなりになっていた。
中途半端に煽られた快楽に、男が苦し気な声を上げて、美園の名を呼んでいる。
それを熱に潤んだ瞳で見上げて、美園は自分の秘所から指を引き抜いた。もっと食むものが欲しいのだと、胎の奥が疼いた。
口の中から男のものを解放すれば、飲み込み切れなかった唾液が、唇の端から流れて落ちた。
それを手の甲でぐいっと拭うと、美園は立ち上がる。秘所から溢れた蜜が、美園の太ももに垂れ流れた。
「美園さん?」
美園は男の呼び声に答えることなく、濡れた下着を脱ぐ。無言のまま男の膝の上にまたがり膝立ちになる。タイトスカートのせいで、思うように足が開けない。スカートが破れないようにたくし上げる。ガーターベルトに彩られた白い太ももがあらわになった。
「美園さん」
「そんなに何度も呼ばなくても聞こえてるわよ」
ようやく答えた美園に、男がホッとしたのがわかる。
「せめて手だけでも、解放してもらえませんか?」
胸の前にベルトで拘束された手を、男が掲げて見せる。
「絶対にいや」
男の懇願を一言で切り捨てる。男の陰茎に手を添えて位置を固定すると、美園はゆっくりと腰を下ろす。
「んぅ……う」
自重で体を押し開かれる感覚に、背筋がのけぞった。待ち望んでいたものに、秘所が歓喜に蠢いて、男のものをしゃぶるような動きを見せた。それだけでひどく感じた。
「あ――、あん! ……ぅつ!」
快楽に膝から力が抜けて座り込んでしまう。自重で一気に奥深くまで、男のものを飲み込んだ。
がくりと首が折れて、無意識に腰が快楽に揺らめく。不安定に揺れる態勢が怖くて、縋りたくもないのに、目の前の男の首に腕を回してしがみ付いてしまう。
服越しであっても、快楽に男の肌の熱が上がっているのがわかる。
荒れる息を整えようと、肩で息をする。抱き着いていると胸の辺りにあたる男の拘束した腕が、邪魔に感じた。
「手……」
「え?」
「手を上げて」
男は息を荒げながら、美園の命令に大人しく従った。
「もっと」
美園の顔の前まで上げられた手をさらに上に上げさせて、美園はその腕の輪の中に頭を入れる。
邪魔なものがなくなって、抱き着きやすくなった。
男の首に腕を回して、動きやすいように態勢を安定させる。その時、首にかけられた男の手に力が入り、体が引き寄せられた。二人の密着度が増す。
見えない目で何かを探すように動いた男の鼻先が、美園の首筋に埋められ、男の柔らかな髪が美園の肌を擽った。
「……やっとあなたを取り戻せた……」
小さな呟きが美園の肌に埋められる。
「何?」
くぐもった小さな声は、美園には聞き取れなかった。
「何でもありません」
「あ、いやぁ!」
美園の問いには答えをくれず、男が不意に腰を突き上げてきた。それまで大人しく、美園にされるがままになっていた男の不意の反撃に、美園は甘い悲鳴を上げる。
「ちょっと……! だめ……止まって……!」
「聞けませんよ。ここまで来て、この状態は生殺しだ」
耳朶を柔らかく食まれて、落とされた囁きに、美園はぶるりと震えた。
下からの突き上げが激しくなり、それに合わせて美園の腰も淫らに揺れた。
最初は噛み合わなかった二人の動きも、徐々に同じリズムを刻み始める。
「あ……っ……いぃ……!」
一度、噛み合ってしまえば、あとは上り詰めるだけだった。二人、息を荒げながら、快楽を追う獣になる。
「はっ……あ、くそ……出……る!」
普段は穏やかな男の乱暴な口調に、美園の中の快楽が弾けた。
胎の奥がうねって、中の男を締め付ける。精を搾り取ろうとする動きに、男も堪えきれずに精を吐きだした。
体の中を濡らされる感覚は初めてで、体が震えて仕方なかった。美園はその体を押し付けるように男に抱き着いて、未知の感覚を味わう。
瞼を強く閉じて、男の肩に額を押し付ける。
――これは私の復讐だ。
どんなに抱き合って、肌を重ねたところで、美園は妊娠が難しい体だ。
男子の後継者が欲しくて美園の意思を無視した父も、四宮グループ総帥の地位に目が眩んで、美園との結婚を引き受けた男も、望むものは手に入れられない。
――ざまあみろ。
10
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる