上 下
35 / 38
どちらか負けるまでソート師として永遠の勝負

魔女カーラとの戦い(ワイアット視点)

しおりを挟む
 テミーは、約束通り、私にライラインという新しい術を教えるようになった。
テミーは、ヘンスとの戦い以来、私に命令口調だ。
「ワイアット。空(くう)に向かって手を翳せ。もっと、精神を集中させろ!」
「うるさい! さっきから、やっているんだ! お前の声で、今、集中できなかったじゃないか!」
「なにを!! もう教えてやらんぞ!」
「わかったよ……。また、集中してみるさ」
私は、また精神を集中して、手を翳した。
しばらく経っても、光線は、少しも、出ることは、なかった。
テミーは、溜め息をついて言った。
「もうそろそろ、魔女を捕まえに行かないと……。行くぞ。ワイアット」

 私は、仕方なくテレポートサークルを作り、テミーと共にサークルの中に入った。

 すると、サークルの中に入った途端にバンドルが、私の首を掴んできた。
「何を……グッ……何をする」
私は、震え出した。
その様子を見ていたテミーが不思議そうな顔をして言った。
「ワイアット。震えてるぞ。どうした?」
「私は……私は……捕まって……絞首刑で死んだんだ」

 バンドルは、私のその言葉を聞いて、笑って言った。
「そうか。そうか。私は、運が良いようだ。お前に最高の苦しみを与えているのだな」
「グッ……お前は……魔女か……」
私がそう言っている間にも、徐々に、バンドルの私の首を絞める手の力は、強くなっていく。

 バンドルは、少しの間を置いて、私に言った。
「魔女……そうだ。私は、魔女の〈カーラ〉だ。お前は?」
「私は……グッ……お前みたいな……魔女を捕まえる……ソート師ワイアットだ……それより……この手を離せ……」
「嫌だね! ハッハッハ! お前の弱点を知ったんだ。この手を離してたまるものか」

 私は、この状況をなんとかできないかと思案して叫んだ。
「ライライン!!」
私は、精神を集中させ、魔女のカーラに手を翳した。
すると、細い光線だが、カーラの腕に当たり、カーラの光線が当たった部分が焦げ、朱い血が流れた。
カーラは、痛がり、呻き声を上げ、思わず私の首から手を離した。
「ウッ!!」

 私は、叫んだ。
「シャックル!!」
私は、空に八の字を描いた。
しかし、カーラの手と足は、拘束されなかった。

 テミーは、頷いて、私に言った。
「ワイアット。こいつは、まだ、痛みで動けない。今のうちに自分の手でこいつを捕まえて、テレポートサークルの中に連れていこう」
「でも……」
「いいから……」
私は、カーラの腕を掴むと、片方の手の指で、テレポートサークルを作り、カーラを持ち上げて、サークルの中に放り込んだ。
私とテミーもサークルの中に入った。

 私がサークルの中に入ると、マシューにいつもの笑顔は、なかった。
私に会うなり、マシューは、静かに言った。
「しくじったな。ワイアット」
「どういうことだ? それよりも、この魔女を……」
マシューは、呆れた様子だった。
「ワイアット。残念だが、こいつは、魔女では、ない、普通の魂だ。気づかなかったか? 魔女ならば、黒い血を流すはずなのに、こいつは、朱い血だ」
「えっ? なんだって? そんな……」
「まぁ、仕方あるまい。お前は、首が弱点らしいからな。動揺してルーペを覗く余裕がなかったのであろう」

 私は、慌てて、ルーペで覗くとカーラの周りには、黒い霧やモヤのようなものは、なかった。
「クソーッ!! 騙された!!」

 カーラが普通の魂だったことから、マシューは、ディヴァイド師として、生前の様子をカーラから聞き出し、ペンでメモを取り、私に告げた。
「ワイアット。こいつは、ヘブン行きだ」

 私は、驚いて、マシューに噛みついた。
「はっ? どういうことだ? こいつがヘブン行きだと? 私にこいつが何をしたのか知らないのか!」
「落ち着け。ワイアット。ヘル行きか、ヘブン行きかは、あくまでも、生前での行いだ。残念だが、こいつは、生前に罪を犯していない」

 カーラは、笑って私に言った。
「ハハッ! すまんな。お前を少しからかいたかっただけだ」
私は、悔しがった。
「クソーッ!! 私をあんな目に合わせておいて!!」

 マシューは、カーラに静かに言った。
「ヘブン行きの名簿にサインしろ」
カーラは、すぐに名簿にサインした。
〈カーラ〉
マシューがヘブン行きのテレポートサークルを作ると、カーラは、自分でサークルの中に飛び込んだ。
「楽しかったぞ。ワイアット。ワッハッハ!」
カーラは、ヘブンへ行った。

 カーラがヘブンに行くと、私は、悔しくて唇を噛み、ずっと、震えながら、呟いていた。
「クソーッ……クソーッ……クソーッ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

冥土の土産に一杯どうだい?

谷内 朋
キャラ文芸
舞台はこの世とあの世の境にある街【デスタウン】 様々な事情で肉体と魂が離れ、当てもなく彷徨い歩く者たちを温かく迎え入れるビアホールが存在する。その名もまんま【境界線】 ここでは行き先を決めていない魂たちが飲んで食ってくだ巻いて、身(?)も心もスッキリさせたところで新たな世界(若しくは元の世界)へと旅立って行く……ってだけのお話。 Copyright(C)2019-谷内朋

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

元妻は最強聖女 ~愛する夫に会いたい一心で生まれ変わったら、まさかの塩対応でした~

白乃いちじく
恋愛
 愛する夫との間に子供が出来た! そんな幸せの絶頂期に私は死んだ。あっけなく。 その私を哀れんで……いや、違う、よくも一人勝手に死にやがったなと、恨み骨髄の戦女神様の助けを借り、死ぬ思いで(死んでたけど)生まれ変わったのに、最愛の夫から、もう愛してないって言われてしまった。  必死こいて生まれ変わった私、馬鹿?  聖女候補なんかに選ばれて、いそいそと元夫がいる場所まで来たけれど、もういいや……。そう思ったけど、ここにいると、お腹いっぱいご飯が食べられるから、できるだけ長居しよう。そう思って居座っていたら、今度は救世主様に祭り上げられました。知らないよ、もう。 ***第14回恋愛小説大賞にエントリーしております。応援していただけると嬉しいです***

処理中です...