バウンダリ-ソート ―WITCH HUNT―

ナカムラ

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ソート師同士の勝負

魔女アリアとの戦い

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 コミーが私に言った。
「大変だぞ、ジェロ。サニーから聞いたんだが、ワイアットは、魔女が手のひらから放った大量の短剣を黒いマントを使わず、全て自分の身体能力で避けたらしい」
「そうか。余計な情報をありがとよ。でも、なんで、サニーは、そのことを知ってるんだ」
「ああ、サニーは、ワイアットの専属のディヴァイド師と知り合いだからな」

 私は、コミーの話を聞きながら、テレポートサークルを作った。
私とコミーは、サークルの中に入った。

 すると、木に寄りかかって立って、一点を見つめているバンドルがいた。
バンドルを見つめている先に、他のバンドルが、見つめているバンドルを背にして、歩いていた。
私は、すぐにルーペで覗いてみると、見つめているバンドルには、黒い霧やモヤのようなものがかかっていた。
見つめられていて歩いているバンドルには、何も見えなかった。

 私は、コミーに言った。
「コミー。あの木に寄りかかっているバンドルだけ魔女だ。とりあえず、魔女の方を捕まえよう」
「そうだな。行こう、ジェロ」

 私は、木に寄りかかっている魔女に近付いて、魔女に話しかけた。
「お前、魔女だな。あの魂に何をしようとしていた」
魔女は、薄ら笑いをして、とぼけた。
「さぁ、なんのことだか。それより、お前は、なんだ。私に何か用でもあるのか」
「私は、魔女を捕まえるソート師ジェロだ!! お前の……」

 私がそう言いかけた時、魔女は、手を握り、私に向けた。
私は、黒いマントで顔まで覆ったが、魔女の手から放たれた物が短剣だと知るや否やマントを外した。
 その時、魂は、騒ぎを見ていて、慌てて森の中に逃げた。

 コミーが叫んだ。
「何してるんだ、ジェロ!」
「ワイアットは、黒いマントを使わなかったんだろう。私も、それでは、使わない。ワイアットに負けてたまるか」
「ジェロ、止めるんだ!!」

 私は、ハラリハラリと魔女の短剣を避けた。
しかし、1本の短剣が当たり、脇腹が傷付いた。
「ウッ!」

 私が痛みから顔を歪めていると、コミーが巨大化して私の前に立ち、コミーは、私を庇った。
 すると、コミーの足に短剣が当たった。
コミーは、痛さのあまり、しゃがみ込んだ。

 魔女は、その様子を笑って見ていた。
私は、叫んだ。
「シャックル!!」
そう言いながら、空に八の字を描いた。
魔女の手と足が、拘束され倒れ込んだ。

 私は、コミーに心配して話しかけた。
「大丈夫か? コミー」
「全く、お前のせいで私は、酷い目に遭ってばかりだな」
コミーの傷は、みるみるうちに消えていった。

 私には、まだ傷口が残っていて、痛みを我慢しつつ、テレポートサークルを作り、サークルの中に魔女を放り込み、その後に、私とコミーも入った。

 目の前のディヴァイド師サニーは、冷静な表情をしていたが、静かに怒っているようだった。
「ジェロ、お前、また、やらかしたな。素直に黒いマントで覆っていれば、良かったものを。コミーに迷惑かけるな。それに、気にかけていないようだが、魂をお前逃したな。とにかく、ジェロ。お前の負けだな」

 私は、文句を言いかけたが言葉を飲み込んだ。
「サニー。そんな……まぁ、仕方ない。その通りだ」

 サニーは、私の話を呆れ返りながら聞いた後で、名簿とペンに手を翳した。
そして、魔女の手中に収めさせ、呪文を唱えた。
「ドラクイエ、ドラクイエ……」
すると、魔女の指は、勝手に動き、名簿にサインさせた。
〈アリア〉
「アリア。さぁ、ヘルへ行け!!」
そして、テレポートサークルを作り、アリアに手を翳し、浮かし、サークルの中へ放り込んだ。
「ウワー!! ヘルへ行きたくない!! クソーッ!!」
アリアは、ヘルへ堕ちた。

 アリアが、ヘルへ堕ちると、私は、すぐにコミーに謝った。
「すまない、コミー。また、迷惑をかけた」
「まぁ、仕方ないさ。ジェロ、お前もヘル行きか、消滅がかかっているから、焦っているんだろう? しかし、心配するな。ジェロ、また機会があるさ。でも、冷静にならないと勝てるものも、勝てないぞ」

 私は、無言で頷いた。


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