バウンダリ-ソート ―WITCH HUNT―

ナカムラ

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ソート師同士の勝負

ライバル現る

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 私が心配していると、コミーの傷は、徐々に治っていき、意識を取り戻した。
私は、安心してコミーに話しかけた。
「良かった。心配したよ。コミー。本当に済まなかった」
私は、深々と頭を下げた。

 コミーは、呆れた表情をした。
「ジェロ。我が王ハデスから赦しを得ることができたが、1つ罰を与えられた」
「何だ。嫌だな。酷い罰か?」
「お前にとっては、一番辛いことかもな。ソート師の使命をしばらくするなという事だ」
「ああ、良かった。もっと、恐ろしい罰かと思った」
「確かに恐ろしくは、ないな」

 それから、長い歳月が流れた。
この世界ルイヴァスでは、時間の感覚がない。
 私は、ずっと、何もしないで時がただ過ぎていった。
私は、小枝で、土をいじくっていた。
「つまらんな。コミー」
「さすがにつまらんな。ジェロ」
「お、珍しく私がつまらんということを否定しないな」
「そうだな……つまらんのは、確かだからな。長過ぎて、お前との話も尽きたからな……」

 その時だった。
ゆっくりとテレポートサークルが開き、何か声が聞こえた。
「……これで、いいのか。テミー」

 そう言うと、円の中から、男が何かに押されて出てきた。
何か筋肉隆々として、がっしりした体型の男が、毛が白くて、眼の赤いネズミを引き連れていた。

 私は、その男達に訊いた。
「お前とそのネズミは、何者か?」
すると、そのネズミが喋った。
「私は、ネズミでは、ないテミーだ。魔獣で我が王……」
「ああ、コミーの仲間か。知ってるか、テミーのこと、コミー?」
「私と同じ仲間で、やはり、この男を支えるために、一緒にいるのだろう。でも、知り合いでは、ないな」
「おい、私の話を遮るな……」

 私は、男に訊いた。
「お前は?」
「私の名前は、ワイアット・ガルシア。なんかソート師というやつらしい。今さっきヘル行きから逃れられて、身体能力を認められて、使命を与えられた」
「私は、ソート師ジェロ・ウォードだ。お前も、なんか悪事を生前に働いたのか? 私は、泥棒を生業にしていた。鉢合わせした人間を殺したりもしていた」
「私は、生前、殺人を繰り返していた。バッサ、バッサと人を斬っていたさ」
コミーが、ツっこんだ。
「おいおい、お前ら、生前の悪事を自慢し合うな。全く」

 すると、テミーは、神妙な顔をした。
「私は、我が王ハデスから、命を仰せつかっている。ソート師ジェロ・ウオード、ソート師ワイアット・ガルシア、お前らは、それぞれ、これからソート師としての使命を果たして、魔女を捕まえて争ってもらう。そこから、判断して負けた方がヘルへ行くか、消滅させられ、勝った方がそのまま、ソート師としての使命を果たしてもらう。お前ら、わかったか?」

 ジェロとワイアットは、ひざまずいて、声を合わせた。
「しかと、承りました!」
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