バウンダリ-ソート ―WITCH HUNT―

ナカムラ

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あるソート師の誕生

魔女アメリアとの戦い

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 私は、テレポートサークルを作り、コミーと中に入ると、バンドルが森に向かって、手を翳していた。
私は、バンドルが手を翳している方向を見た。

 森の中の木々が、竜巻でなぎ倒されていた。
コミーが叫んだ。
「この竜巻は、魔女が魔術で操っているんだ。ジェロ、あのバンドルは、魔女だ。早く行って魔女を止めなければ……」
私は、溜め息をついた。
ーまた、魔女が森を壊しているのかー

 私は、念のため、ルーペでバンドルを覗いた。
やはり、バンドルの周りには、黒い霧やモヤのようなものがかかっていた。
私は、言った。
「コミー。魔女のところへ行こう!」
私は、魔女に近付いていき、話しかけた。
「おい、お前! 何で森の中に竜巻を起こしている?」
「私は、『お前』という名前では、ない。魔女の〈アメリア〉だ。何で起こしているかって? それは、私のことを馬鹿呼ばわりしたヤツが森の中に隠れたから、吹き飛ばすためだ」
「それだけのためか。そのバンドルのためだけに、森の木々をなぎ倒しているのか?」
「そうだ。悪いか。許せぬ!!」

 そう言いながらも、アメリアは、森に手を翳すことを止めなかった。
コミーが、言った。
「この魔女を止めても無駄だ、ジェロ。アメリアが手を翳すことを止めても、しばらくは、竜巻が木々をなぎ倒し続け、そのバンドルも吹き飛ばされてしまう。先に、バンドルを救出しよう」
「わかったよ、コミー。待ってろよ! アメリア!!」
「ハッハッハ!! 私は、竜巻を起こし続けるまでだ」

 私達は、森の中に入った。
私は、何回かテレポートサークルを作り、中を覗き込んでは、バンドルに訊いた。
「お前は、魔女に馬鹿呼ばわりしたバンドルか?」
「いいえ、それより、竜巻が恐ろしくて、お助けを……」
皆、救済を求めてきたために、ルーペで覗き込み、黒い霧やモヤのようなものがかかっていなかったため、テレポートサークルを作り、魂をディヴァイド師サニーの元へ、放り込んでいった。

 5、6回繰り返した時、サークルの中を覗き込むと10歳位の少女のバンドルが木に寄りかかり座り込んで泣いていた。

 私とコミーは、急いでサークルの中へ入った。
「どうした。お嬢ちゃん?」
「ママとはぐれちゃったの。ママのこと、お姉ちゃんがいじめるから、グレタ、お姉ちゃんにバーカ、って言っちゃったの。そしたら、ママのこと、なんか手を向けて、吹き飛ばしちゃって、そしたら、グレタのことも追いかけるから、森の中に逃げちゃったの。お兄ちゃん、ママのこと、助けてあげて!」
ーこの子がアメリアを馬鹿呼ばわりしたバンドルかー

 私は、念のため、そのバンドルをルーペで覗いてみたら、やはり、黒い霧やモヤのようなものは、なかった。

 私は、コミーに訊いた。
「コミー。このバン……グレタをどうする?」
コミーも困った様子で小さな声で言った。
「グレタのことは、ディヴァイド師サニーに預けよう。この子は、きっと、母親が一緒では、ないと駄目だ。魔女を倒し、母親を見つけてから、一緒に、おそらく、ヘブンだろうが、行かせよう」
「わかったよ。コミー」

 その時、グレタが話しかけてきた。
「お兄ちゃん、このネズミ、お兄ちゃんが飼ってるの? 可愛いね」
私は、コミーにこっそり言った。
「どうする? グレタにお前のこと、魔獣であることとか言うか?」
コミーは、更に小さな声で言った。
「すまん、ジェロ。私は、子の相手は、苦手だ」
私も小さな声で言った。
「わかったよ。ジェロ」

 私は、グレタに言った。
「グレタ。コイツは、砂ネズミって言うんだよ。コミー、っていう名前だ。よろしくな」
グレタは、嬉しそうに、コミーを撫でた。
「コミーよろしくね」
「チュー! チュー!」
コミーが、砂ネズミのフリをしているから、内心、私は、大笑いした。

 その時だった。竜巻が私達のところへ向かってきた。
 私は、空に魔剣で四角を描き、エヴァケーションで作った空間の中に慌てて、グレタとコミーを入れて、私も入り、竜巻から逃れることができた。

 コミーは、こっそり私に言った。
「さぁ、サニーのところへグレタを連れて行こう」
私は、テレポートサークルを作り、優しくグレタをサークルの中に置いた。

 ディヴァイド師サニーは、相変わらず冷静な表情だった。
私は、サニーに頼み込んだ。
「サニー、頼む。この子をヘルかヘブンへ行かせるのを、少し待ってくれ。この子は、母親と一緒では、ないと駄目なんだ」
「駄目だ。すぐにヘルかヘブンへ行ってもらう」
「そんなこと言わずに頼むよ。サニー」

 その時、グレタが大泣きした。
「エーン!! エーン!!」
サニーは、観念したように言った。
「仕方あるまい。この砂時計の砂が全て落ちるまでは、待つぞ」
そう言うと、砂時計をひっくり返した。
私は、言った。
「じゃあな、グレタ!! ママのこと、必ず連れてくるから、ここで待っててな!」
すると、またグレタが大泣きした。
「エーン!! エーン!!」

 私は、困って咄嗟に言った。
「では、コミーと一緒に居てくれるのは、いいかい?」
グレタは、泣き止んで喜んだ。
「うん。コミーと待ってる! ママのこと、助けてね」
「チュー! チュー!」
私は、コミーの砂ネズミのフリをしていることに、内心、大笑いしてしまった。

 私は、急いでテレポートサークルを作り、すぐに先程の魔女アメリアの目の前に来た。

 そして、アメリアに言った。
「残念だったな、アメリア。お前が探していたバンドルは、安全な所に送った」
「クソッ!! 邪魔しおって!!」

 そう言うと、アメリアは、私の方に手を握り向けてきたので、黒いマントを顔まで覆った。
すると、大量の枯れ葉がこちらに向かってきた。
「逃げる気だな!! シャックルだ!!」
私は、そう言うと、八の字を空に描き、アメリアの手と足が、拘束され、倒れ込んだ。

 私は、アメリアを置いたまま、グレタの母親を探した。
森の中を少し、歩いた所で、意識を失っている女性のバンドルに出会った。
ルーペを覗いてみたが、黒い霧やモヤのようなものもなかった。

「お前は?」
「グレタは? グレタは、どこ……」
消え入りそうな声で意識が戻った女性の魂が言った。
「あなたは、グレタの母親か?」
「そうです。私は、グレタの母ジュリアです。早くグレタの元へ!」
「わかった。今、連れて行く」
私は、急いでテレポートサークルを作り、ジュリアを抱き上げて、中へ放り込んだ。

 それから、またテレポートサークルを作り、アメリアの目の前に現れた。
新たなテレポートサークルを作り、サークルの中へアメリアを放り込んだ。

 私も中に入ると、サニーの意外な姿を見た。
笑顔でグレタに接していた。
 ーあんなに優しく笑うサニーは、見たことない。ー
コミーは、相変わらず、砂ネズミのフリをしている。
「チュー! チュー!」

 アメリアは、拘束されながらグレタを睨み付けた。
「お前ここにいたのか!!」
アメリアを見ると、グレタは、謝った。
「お姉ちゃん。バカ、って言ってごめんなさい。ママに言われたの。バカ、って言っては、駄目だって」
ジュリアも謝った。
「すみません。この子には、言い聞かせましたので」

 私は、その様子を見て思った。
 ー随分、この親子、人が……あ、魂がいいな。あんなことをされた相手に謝るとはー
 
 アメリアは、そっぽを向いた。
「フンッ!!」

 ディヴァイド師サニーは、私に言った。
「ジェロ。グレタとジュリアの人生を聞き取ったよ。もちろん、ヘブン行きだ」

 コミーが、私にこっそり言った。
「サニーのやつ、何回も砂時計をひっくり返してたぞ」

 ディヴァイド師サニーは、グレタとジュリアに言った。
「ヘブン行きの名簿にサインしてくれるか」
ジュリアは、言った。
「では、グレタの分は、私の代筆でよろしいですか」
「えっ? ママ、私、書けるよ!」
〈グレタ〉
少し、下手な字だが、書けた。
その後、母親のジュリアが書いた。
〈ジュリア〉

 サニーは、テレポートサークルを作ると、サニーが慌てて止めたが、グレタが、ヘブン行きのサークルの中に飛び込んだ。
「お兄ちゃん達、コミー。バイバイ! 楽しかった」
ジュリアも、その後を追って、ヘブン行きのサークルに飛び込んだ。
「お世話になりました」

 サニーは、一瞬、困った表情をしたが、すぐに、いつもの冷静な表情に戻った。
 そして、アメリアの方を向いた。
サニーは、名簿とペンに手を翳した。
そして、アメリアの手中に収めさせ、呪文を唱えた。
「ドラクイエ、ドラクイエ……」
すると、アメリアの指は、勝手に動き、名簿にサインさせた。
〈アメリア〉
「アメリア。さぁ、ヘルへ行け!!」
そして、テレポートサークルを作り、アメリアに手を翳し、浮かし、サークルの中へ放り込んだ。
「フンッ!! グレタを許したわけでは、ないぞ!!」
アメリアは、ヘルへ堕ちた。

 私は、コミーに言った。
「コミー。砂ネズミのフリ上手かったぞ。チュー! チュー!」
「うるさい!!」
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