日雇い派遣の勇者は毎日異世界へ転生します

ナカムラ

文字の大きさ
1 / 1

1日目

しおりを挟む
 今日も、この物語の主人公の岡田直人は、日雇いの派遣で、働いていた。
仕事を終わらせると、地元の駅に着き、ため息をついた。
「今日の現場も、梱包が続いて疲れたな。」
彼は、そう呟きながら、ボーッと歩いていた。
道の端を歩いていた時、何者かに背中を押された。
彼は、道路を走っている車に、はね飛ばされた。
しばらくすると、彼は、息絶えた。
うっすら、目を開けると、目の前がぼんやりと、見えた。
目の前には、黒ずくめのスーツの男が、ビシッと、立っていた。彼のことをやおら、手を伸ばして立ち上がらせると、やっと、しっかりした意識に、戻った。彼の前で、今度は、名刺を渡しながら、彼に向かい、話し始めた。
「私は、天から派遣された派遣会社の者です。あなたは、これから、1ヶ月勇者として、働いてもらいます。最近は、勇者も人手不足でして…。」
彼は、話を遮った。
「待て。待て。どういうことだ。私は今、どうなっているんだ。君は、誰だ。なんの事を言っているんだ。」
黒ずくめのスーツの男は、不気味な笑みを浮かべて、続けて言った。
「ですから、私は、天から来た派遣会社の営業マンです。あなたは、もう、亡くなられています。
これから、天国か地獄に行くか。それとも、生きつづけられるか、勇者としての行いによって、決めさせて頂きます。
期間は1ヶ月の契約となります。よろしくお願いいたします。
早速、現場へ行って頂きます。今日は、竜の
駆除をお願いします。細かいことは、あなたのスマホのメールに送らせて頂きます。今日は、現場に、あなたの先輩のリーダーがいますので、その人に従って下さい。では、私は、これで失礼致します。」
そういうと、黒ずくめのスーツの男は、姿を消した。
彼は、慌てて、言った。「まっ、待って!!」
彼は、自分のスマホのメールをとりあえず見た。
日付の下に「今日の仕事の内容は、竜の駆除となります。主な持ち物は、剣と盾となります。リーダーが持っておりますので、その他、指示などリーダーに全て聞いて下さい。では、よろしくお願いいたします。」と、書かれていた。
すると、さっきのように、誰かに、背中を押され、車にはね飛ばされそうになったところで、異世界に転生した。
私は、いつの間にか鎧を着けていた。
すると、同じ鎧を着けたリーダーらしき男が、スマホを見ながら、点呼をとっていた。
「えーと、前田さん、花岡さん、元木さん…。あれ、まだ、岡田さんが来てないな。派遣先に、連絡しないと…。」
彼は、リーダーらしき男に慌てて、話しかけた。
「はい、私、岡田です。遅くなってすみません。」
リーダーらしき男は、恐縮したように、
「いえいえ、はじめてですよね。私は須田と、申します。」
そういうと、白い紙袋の中から、剣と収納された盾が出た。
「剣はベルトの間に入れて、盾は、裏のボタンを押すと、広がりますので、今、作動するかどうかやってみて下さい。」
彼は、リーダーの言うとおり、盾の裏にあるボタンを押してみた。
すると、収納されていた盾が普通の大きさに広がった。
「便利でしょう。ふた山越えた所に竜がいるので、楽ですよ。」
彼は、驚いて「えっ、ふた山…。」と、言った。
リーダーは言った。「すみません。現場が遠くて…。」
彼は、内心思った。「今日は、ただでさえ、梱包の仕事で、へとへとなのに、これから、ふた山…。」
彼は、リーダーに、笑顔で言った。
「いいえ、大丈夫です。よろしくお願いします。」
リーダーは、言った。「今日中に、竜を倒して帰らなくては、いけないので急ぎましょう。」
彼は、状況を把握することなく、後ろから、ついていった。
道すがら、彼らは、話をして、盛り上がっていた。
彼は、言った。「私は、岡田です。車に、轢かれたんですよ。」
そういうと、相手は、「私は、前田です。私は、お恥ずかしいことに、妻に、刺されまして…。」
最初は、話が、盛り上がっていたものの、だんだん
皆疲れて無言になっていった。
ふた山越えると、やっと、村らしきところに着いた。
リーダーは、そこの村長に挨拶をした。「今日は、よろしくお願いいたします。」
村長は、言った。「では、手っ取り早く竜を駆除してくれ。」
彼は、思った。「本当に派遣のようだな…。」
彼らは、竜のいる場所に着くと、竜は、羽を広げ、彼らを威嚇した。火まで吹き、周りは、熱風に包まれた。
彼らは、慣れたように竜に、登り、剣を突き立てた。皆は、ブンブンと振る竜にしがみつき、竜に剣を突き立てた。
なかなか、彼が竜に立ち向かわないことに、業を煮やした村長は、彼に言った。「さぁ、早くお前も行け。早く倒さないと、駄目だろう。」
彼は、その言葉を聞いて、普段の自分を思い出した。「そういえば、あの事故に遭う前から、私は、怒られてばかりだったな、ここでも、怒られるのか。」
彼は、竜に、見よう見まねで、剣を刺した。
しばらくすると、竜は、息絶えた。
彼らは、一斉に派遣先に、終了メールを送った。
すると、また、駅の前の道に戻った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

【短編】追放した仲間が行方不明!?

mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。 ※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。

悲恋小説のヒロインに転生した。やってらんない!

よもぎ
ファンタジー
悲恋ものネット小説のヒロインに転生したフランシーヌはやってらんねー!と原作を破壊することにした。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

処理中です...